#136 アスリートでもヨガを取り入れている理由
最近では、ヨガを取り入れているアスリートを見かけることもよく見られるようになってきました。サッカーのプロチームでもコンディショニングのためにヨガのコーチを雇っているところもあります。
ヨガは精神的、そして身体的にも多くのメリットをもたらすことが期待されています。
本記事では、いくつかの研究をもとにアスリートにとってヨガがいい理由を紹介していきたいと思います。
目次
- アスリートでもヨガを取り入れている理由
- 柔軟性を上げるメリット
- オススメのヨガポーズ
- まとめ
アスリートでもヨガを取り入れている理由
ヨガには、アスリートのパフォーマンスを向上させることができる可能性のある精神的なメリットや肉体的なメリットがあります。また、ストレスを和らげ、リラクゼーションを促し、睡眠の質の向上にも役立ちます。この精神的な部分に対してのメリットは、特に過度の運動をしがちなアスリートに役立ちます。さらに身体的な部分では、柔軟性の向上やバランス、そして体の内観の能力なども補うことができ、ヨガはアスリートに多くのメリットをもたらすことができます。
いくつかの研究がアスリートにとってのヨガのメリットを裏付けています。
2016年の調査では、26人の男子大学生アスリートのパフォーマンスに対するヨガの影響を調べました。週に2回ヨガをした14人のアスリートは、ヨガをしなかった12人と比較して、バランスと柔軟性に大きな改善が見られました。これは、ヨガがバランスと柔軟性を必要とするスポーツでのパフォーマンスを向上させることができることを示唆しています。
ヨガを行うことで、体を内観し、筋肉や呼吸、意識に目を向けるようになり、マインドフルネスとしての効果を期待できます。そして、その結果、スポーツ競技中の集中力を高めることができると期待できます。
自分の体に目を向け、現状を認識させる作業をするマインドフルネスに関する研究レビューでは、マインドフルネスを実践することでマインドフルネススコアが一貫して向上することがわかりました。これらの研究の対象となったアスリートは、陸上競技、サイクリング、ダーツ投げ、ハンマー投げ、ホッケー、柔道、ラグビー、中距離ランナー、長距離ランナー、スプリンター、バレーボールなどが含まれていました。このマインドフルネススコアの向上は、射撃やダーツ投げなどの集中力を要する場面において、プラスの効果をもたらし、このようなスポーツのスキル向上に役立つことを示唆しています。
ヨガもこのマインドフルネスの要素を含んでおり、上記の効果を期待できると考えられます。また、ヨガ自体には、怪我やオーバーロードのリスクがあるアスリートに多くのメリットを与える可能性があると言われています。
31人の男性サッカー選手を対象にした2020年の研究調査では、10週間のヨガプログラム実際し、怪我のリスクの一つである倦怠感や筋肉痛に対して良い結果をもたらしたことを報告しています。
10人の女性フィールドホッケー選手を対象にした研究調査では、ホットヨガの効果を調べました。その結果、ホットヨガが心臓血管のパフォーマンスと血漿体積分率を高めることができることを発見しました。このことは運動中の体温調節にプラスの効果をもたらすことができるとされています。
» 参考:関節の可動域エクササイズの目的とパフォーマンスの関係性
柔軟性を上げるメリット
柔軟性を高めることは、多くの点でメリットがあります。
そのメリットは以下の通りです。
筋肉の過緊張の減少:関節に対して正しくストレッチをすることで、緊張をほぐれ、動きやすくなります。
より良い姿勢の獲得:関節が正しく自由に動かないと、筋肉の緊張を引き起こし、不良姿勢につながる可能性があります。
痛みの減少:柔軟性が上がり筋肉が緊張していないと、体の特定の部分へのストレスや圧力が少なくなり、背中、首、肩などの痛みがなくなります。
怪我のリスクの低下:筋肉や関節の強度と柔軟性が高いと、怪我をしにくくなる可能性があります。
ストレスの低下:柔軟性が上がり筋肉の緊張がほぐれると、精神的にリラックスした気分になります。これにより、精神的なストレス耐久性の向上にもつながります。
血液循環の改善:柔軟性が増加し筋の過緊張が低下することで、より血液の循環をよくして、トレーニング後の筋肉の回復を早めたり、筋肉のこわばりを防ぐのに役立ちます。
以上のように柔軟性を向上させることで、さまざまなメリットが生じます。
オススメのヨガポーズ
アスリートにオススメのヨガのポーズを紹介していきます。実際にスポーツ現場でも取り入れられているヨガのポーズでもあります。
1)ダウンワードフェイシングドック
このポーズは、全身を満遍なく使い体のバランスを整えるのに役立ちます。痛みやこわばりを和らげ、臀筋、膝裏、ふくらはぎをストレッチします。また、肩や背中の緊張を軽減させられます。
やり方
この姿勢を1分ほどキープします。そして、これを1〜3回繰り返します。
2)コブラのポーズ
このポーズは、上半身の反りの可動域を改善し、背骨に対しての負担を減らす働きがあります。また、循環を促進し、自律神経の調節にも役立ちます。肩や首の緊張を改善したい場合は、首の前面を伸ばしながら上を向いていきます。
やり方
このダウンワードフェイシングドックとコブラのポーズをセットに行うこともでき、スポーツ現場でのウォーミングアップなどで、使われることもあります。セットで行うことのメリットとして、体の前面と後面の筋肉に対して全体的に刺激を入れることができ、運動前の可動域改善に改善することができます。
このようなヨガのエクササイズは、週に1.2回やるよりも毎日少ない時間でもいいので行う方が効果的です。
他にもヨガには、たくさんの種類のポーズがあったり、ゆっくりストレッチをしながら筋肉を伸ばす陰ヨガや柔軟性とスタビリティーの両方を同時に鍛えることができるハタヨガなどの種類のヨガもあります。
まとめ
ヨガはアスリートにとってさまざまなメリットがあり、怪我の予防や柔軟性の向上、姿勢の改善などを獲得したい場合は、試す価値があります。 そして、このヨガによって、スポーツパフォーマンスの向上にもつながるとも言われているため、競技力向上の一つの手段としても取り入れてもいいかもしれません。
最近では、ヨガの動画などをYouTubeで見ることも可能ですが、より深くヨガを学んだり、しっかりと成果を出したい人は、ヨガの先生から直接指導を受けることをお勧めします。ヨガの先生であれば、どのようなポーズがあなたの目的にあったポーズなのかを的確に選択することができ、正しいフォームやテクニックも同時に教えてくれます。ひとりで行うとどうしても我流になったり、気づかない修正点なども出てくるので、ヨガにチャレンジしたい人は、是非ヨガの先生から指導を受けてみてください。
参考文献
1)Polsgrove MJ, Eggleston BM, Lockyer RJ. Impact of 10-weeks of yoga practice on flexibility and balance of college athletes. Int J Yoga. 2016;9(1):27-34. doi:10.4103/0973-6131.171710 2)Bühlmayer L, Birrer D, Röthlin P, Faude O, Donath L. Effects of Mindfulness Practice on Performance-Relevant Parameters and Performance Outcomes in Sports: A Meta-Analytical Review. Sports Med. 2017 Nov;47(11):2309-2321. doi: 10.1007/s40279-017-0752-9. PMID: 28664327. 3)Arbo GD, Brems C, Tasker TE. Mitigating the Antecedents of Sports-related Injury through Yoga. Int J Yoga. 2020;13(2):120-129. doi:10.4103/ijoy.IJOY_93_19