#66 ウエイトトレーニングの賛否

ALL PRACTICAL TRAINING

スポーツ選手の間でウェイトトレーニングをやると筋力はつくけど体が重くなってパフォーマンスが下がるとよく耳にすることがあります。

有名な選手でいうと大リーグでいくつもの新記録を打ち出したイチロー選手。ウエイトトレーニングの賛否について話している以下で紹介するインタビュー映像は見たことがある人が多いとは思います。

以下、イチローのインタビュー映像 (6分51秒〜)
https://www.youtube.com/watch?v=L26TI6sk4rc

この映像では、インタビュアーの稲葉さんが

『今トレーニングで、体を大きくしてそれを生かすのが流行っている』という投げかけに対して、イチローさんは『全然だめでしょ、そんなの。自分の持って生まれたバランスが、絶対ありますからそれを崩しちゃダメですよ。だってトラとはライオンとかウエイトしないですからね。筋肉が大きくなっても、それ関節や腱は鍛えられない。だから壊れてしまうんです、重さに耐えられないから。』

と返答しています。イチローさんの経験上から得たものであって、これは間違いないことだと思います。

このことを踏まえた上で、ウェイトトレーニングの賛否について、さらに踏み込んだ私の個人的な見解を書いていきたいと思います。

目次

  • ウェイトトレーニングは決して悪者ではない
  • なぜウェイトトレーニングによってパフォーマンスが下がるのか
  • ウェイトトレーニングを取り入れる前に必要なトレーニング
  • まとめ

ウェイトトレーニングは決して悪者ではない

結論から言うと、“ウェイトトレーニングは決して悪者ではない” ということです。
このことを説明するためにまずは、『体力』と一般的に言われているこの言葉を分解していくとわかりやすくなります。

ここでは体力についてわかりやすく解説しているブログを引用させていただきます。オランダで理学療法士の学校に通っていてサッカーチームのトレーナーとしても活躍されている中田樹さんのブログです。
»中田樹さんのブログ

このブログで書かれている通り、体力はまず身体的要素と精神的要素に分類されます。さらに身体的要素は運動能力に関わる行動体力と免疫機能に関わる防衛体力に分かれています。そして、さらに行動体力を分解すると、構造(体格、姿勢)と機能(筋力、敏捷性、スピード、平衡性・協応性、持久性、柔軟性)という要素に分かれます。

この行動体力に含まれる要素は相互作用する関係性にあると考えています。

一般的なウェイトトレーニングでは、これらの要素の中で主に筋力にフォーカスされることが多いですが、やり方によっては全ての要素の向上にもつながります。

つまり、この ”やり方”というのがウェイトトレーニングを悪にするのか正義にするのかを分けてくるということになります。

イチローさんは特にこの筋力以外の要素を人並み以上にトレーニングしてパフォーマンスを上げていった一人と考えてもいいのかと思います。また、野球は対人スポーツではないので、筋力の要素はあまり必要ないとも考えられます。

そして、これはイチローさんが仰っている通り、人にはその人にあったバランスがあるということですので、骨格が大きい人はその分筋肉も多くついていた方がバランスが取れていることになります。つまり、自分に合った筋肉量というのを見極めていくことも必要なことになります。

なぜウェイトトレーニングによってパフォーマンスが下がる人がいるのか

これはあくまで個人的な見解ですが、上記で述べた行動体力の機能の要素のうちの平衡性・協応性を無視してウェイトトレーニングをしている場合に起こると考えています。平衡性・協応性はスポーツの場面ではよく”コーディネーション”という言葉で使われることが多いです。因みにコーディネーションは7つの要素によって構成されています。

コーディネーションの7つの要素

リズム
バランス
変換
反応
連結
定位
識別

ここでは一つ一つの要素の説明は省きます。知りたい方がいればコーディネーションについて詳しく書いているブログを見つけたので、こちらにURLを載せさせていただきます。
» 参考:コーディネーションについて

再度、述べますがこのコーディネーションを無視した状態でウェイトトレーニングをすることで、よく言われる”スポーツパフォーマンスにとって無駄な筋肉”がつきやすくなります。

このコーディネーションの要素を含めたトレーニングをファンクショナルトレーニングと言われることもあります。極論を言えば、スポーツパフォーマンスを上げるためのウェイトトレーニングは常にファンクショナルトレーニングであるべきだということです。

ウェイトトレーニングを取り入れる前に必要なトレーニング

ウェイトトレーニングは言葉通り、重りを使ったトレーニングですが、重りを持つ前にまずやらなければならないトレーニンングがあります。今まで読んでもらっていればわかると思いますが、そのトレーニングとはコーディネーション能力を高めるためのトレーニングです。

以下に筋力とコーディネーションの関係図を表してみました。一番下のベースとなるのが、コーディネーション能力でその上にあるのが筋力です。
コーディネーション
仮に、コーディネーションを無視して筋力だけをトレーニングした場合には、このような図になります。
筋力
つまり、何が言いたいかというとコーディネーション能力以上に筋力があると、その筋力を使いこなせず、怪我のリスクやスポーツパフォーマンスが低下につながるということです。

逆に言えば、怪我のリスクの低下やスポーツパフォーマンス向上のためには以下の図のようにコーディネーションをまず向上させることで、土台をしっかりとさせることが鍵になります。
パフォーマンス向上

まとめ

ウエイトトレーニングの賛否
最近では、コロナ期間中に一流の選手のウェイトトレーニング動画など見ることが可能でした。一流の選手は必ずといっていいほど、無駄のない綺麗なフォームでウェイトトレーニングを行なっていることが見れます。このことを考えると、高いレベルでプレーするためにはファンクショナルなトレーニングでのウェイトトレーニングは必要であるということです。

イチローさんのような試合中にコンタクトのないスポーツ(野球)であれば、コーディネーション能力や人間本来の体の使い方を極めることで、長く太い野球人生を送ることが可能だと思います。これができるのもある意味、才能がないとできないことでもあると私は考えています。そのためイチローさんが言っているように自分の体にあったバランスを見つけていくこともとても重要になっていきます。