#52 フリーウエイトと比較したウエイトマシンのメリット・デメリット

ALL EVIDENCE BASE TRAINING

本記事では、基本を見つめ直す意味でもウエイトマシンとフリーウェイトでのトレーニング効果の違いについて論文を用いて、書いていきます。

以前、筋収縮のトレーニング効果も違いについての記事も書いたのでよかったら合わせて読んでみてください。

目次

  • ウエイトマシンのメリット・デメリット
  • 研究者によるウエイトマシン考え
  • ウエイトマシンの使用とフリーウェイトの2つの比較研究
  • まとめ

ウエイトマシンのメリット・デメリット

ウエイトマシンのメリット・デメリット
ウエイトマシンは、健康を改善するためのフィットネスやスポーツ現場で広く使用されています。ウエイトマシンの主な特徴は、初心者の方でも簡単に重量を自由に調整でき、安全に筋力トレーニングを可能にすることです。

一方、欠点として、筋力トレーニングによるコーディネーションの向上ができないことです。さらに、スポーツの動作に特化したスキルの向上には向いていないとも言われています。マシンを使用したレジスタンストレーニングに関して、Gideon Ariel(1984)は、『さまざまなフィットネス器具の会社が等尺性および等速性のエクササイズ機器を大量に生産していたが、これらのタイプの機器はスポーツアクションに必須な加速と減速の自然なパターンを尊重しなかった。』と述べています。スポーツ動作は非常に複雑な筋の連続した動きを通じて行われます。しかし、一般のフィットネスマシンは基本的に一方向の関節運動しか行うことができません。

この観点から、スポーツ動作の大部分は爆発的な動きであり、それらのモーターコントロールが遅い動きとは異なるという事実に加えて、爆発的な動きを通して力を構築する必要があると言われています。ウエイトマシンは、運動経験のない方からボディービルダーのような筋肉の発達がある方のために抵抗の強度の設定が容易に出来るように作られています。しかし、上記で述べたようにスポーツ動作とはかけ離れているため、スポーツパフォーマンスのためのトレーニング効果として結びつけることは容易ではないことを心に留めておくべきだと思います。

研究者によるウエイトマシン考え

McBride(2019)は、筋力トレーニングでウエイトマシンとフリーウェイトのどちらを使用するのが良いかについて疑問を投げかけています。この著者はこれらの2つのトレーニング法の違いとして、フリーウェイトの方が機能的に優れていることを主張しています。また、エクササイズの設計方法に応じて、実際の動きにより近くトレーニングできることも述べています。ウエイトマシンでは動作が制限されるため、アスリートは最小限のコーディネーションで実行できます。

肯定的に考えると、ウエイトマシンは使いやすく、サポートが少なく快適に行えます。さらにこの著者によれば、筋力トレーニングの目的が単に筋の発達である場合、ウェイトマシンもしくはフリーウェイトであっても関係なく、この目的を達成できる可能性があると主張しています。ただし、フリーウェイトはファンクショナルな動きができるのに加え、動作中バランスをとる必要があるため、単一な動きであっても筋活動はより大きくなります。もし、ファンクショナルなスポーツ動作の改善の目的の場合、フリーウェイトを使用して神経系により大きな刺激を与えられることで、より効果的にトレーニングすることができるとされています。

スミスマシンの使用とフリーウェイトの2つの比較研究

スミスマシンとフリーウェイトの比較研究1

【目的】
スクワットとベンチプレスのエクササイズの1RMを使用して、スミスマシンとフリーウェイト間での最大筋力の値の違いを調査する。
【方法】
研究は32人の被験者(16名の男性と16名の女性)で行われ、スミスマシン(ガイド付きバーベル)とフリーウェイトでのスクワットとベンチプレスの1RMの測定をした。
【結果】
女性の場合、フリーウェイトを使用した時よりもスミスマシンの方がスクワットでの最大筋力が多いと記録した。同時に、両性別でベンチプレスでは最大値がフリーウェイトでより大きいことも示した。
【結論】
性別やマシンの摩擦などの側面を考慮した上でも、スクワットとベンチプレスでは異なる結果をもたらす。

以上の研究結果から、最大筋力の発揮の向上だけを考えた場合はスクワットはスミスマシンで、ベンチプレスはフリーウェイトで行うことがいいと考えられます。しかし、スクワットの場合は女性のみがフリーウエイトで最大筋力の発揮が低いことが見られたため、このことは考慮する必要があります。

その理由として、女性の方が安定性が低かったと予想し、スミスマシンではより安定的に運動を行うことで大きな力を発揮することができたと考えられます。

スクワットはバーベルを持ち上げる時の重心の位置やバーベルの軌道をコントロールする技術など様々なトレーニングとしてのメリットがあると個人的には思うので、フリーウェイトで行うことを勧めたいです。

 

スミスマシンとフリーウェイトの比較研究2

【目的】
70%と90%RMでスミスマシンとフリーウェイトで行ったベンチプレスで、三角筋前部および中部と大胸筋の筋活動を比較する。
【方法】
26人の男性のサンプルは、訓練を受けた14人と訓練を受けていない12人の被験者で構成された。各参加者の1RMが確立された後、1RMの70%で2回繰り返し、1RMの90%で2回繰り返した。
【結果】
フリーウェイトでのベンチプレスの方が三角筋中部の筋活動が高かったと記録した。一方で、三角筋前部と大胸筋の筋活動の違いはなかった。
【結論】
フリーウェイトでは、バーベルのリフト時の筋力の増加を助けるだけでなく、関節を安定させるために、三角筋中部の筋活動がより必要であった。ベンチプレスのトレーニングでは、スミスマシンではなくフリーウェイトでトレーニングする選択を検討する必要があることを示唆する。

スミスマシンとフリーウェイト間での筋活動の違いは見られず、この理由としてバーベルリフト時の自然な軌道を描けず、筋力発揮に必要な最適ポジションを妨げる可能性があると考えられます。

前回の研究結果から合わせて考えてもベンチプレスのエクササイズではスミスマシンよりもフリーウェイトで行うことをお勧めできます。

 

スミスマシンとフリーウェイトの比較研究3

【目的】
スミスマシンとフリーウェイトを使用して、膝と体幹の動作時と固定時に一番初めに反応する筋の初期の活動を比較する。
【方法】
6名の被験者(男性3人と女性3人)で、フリーウェイトとマシンの両方で筋力トレーニングの経験があり、尚且つバスケットボール、陸上競技、スカッシュなどのスポーツの経験のあるものを採用した。両トレーニング共に8回(8RM)1セットを2セッション(3日間の休み)実行した。そして、前脛骨筋、外側腓腹筋、内側広筋、外側広筋、大腿二頭筋、脊柱起立筋および腹直筋の筋電図活動を記録した。
【結果】
腓腹筋、大腿二頭筋、そして内側広筋の筋活動は、フリーウェイトでより高かったが、残りの筋で両タイプのトレーニングの明らかな違いはなかった。
【結論】
足底屈筋と膝関節屈筋と伸筋でより大きな筋力の発達の目的で、フリーウェイトがより優れていることを明らかにした。

以上から、腓腹筋、大腿二頭筋、内側広筋をより鍛える目的でスクワットをする場合は、フリーウェイトで行うほうが良さそうであると考えます。

これらの筋肉はスポーツ動作や怪我の予防にも優位に働くことが大切である筋肉はであるため、このような観点からもフリーウエイトの方がスミスマシンよりも良い効果が引き出せると予想できます。

一番最初に紹介した研究結果と少し違う結果であることは考慮する必要はあります。

まとめ

  • ウエイトマシンのメリットは簡単に重量を自由に調整でき、安全に筋力トレーニングを可能にすることです。
  • ウエイトマシンのデメリットは筋力トレーニングによるコーディネーションの向上ができないことです。
  • 理論上、フリーウェイトはファンクショナルな動きができるのに加え、動作中バランスをとる必要があるため、単一な動きであっても筋活動がウエイトマシンよりもより大きくなります。
  • スミスマシンとフリーウェイトでは違ったトレーニング効果があることが考えられます。
  • ベンチプレスのエクササイズではスミスマシンよりもフリーウェイトで行うことをお勧めできます。
  • パフォーマンスや怪我の予防の観点からスミスマシンよりもフリーウェイトの方が優れた結果を得られることが考えられます。

以上のことから、理論上、そして研究結果からもスミスマシンよりもフリーウェイトの方がスポーツに近い動作もでき、筋力アップ的にも優れていることが明らかにされています。スミスマシンの使うメリットとして、フリーウェイトでは実行がなかなか難しい方や補助をしてくれる人がいないときなどに安全、そして便利で使いやすいことが考えられます。

 

引用文献

McBride, 3. M. (2019). Machine Versus Free Weights – Elite Strength a Conditioning. Retrieved from:
http://eIitesc.co.uk/files/machine versus free weights.pdf.

Cotterman, M.L., Darby, L.A. and Skelly, W.A. (2005). Comparison of muscle force production using the Smith machine and free weights for bench press and squat exercises. J Strength Cond Res. 19(1),169-176.

Schick, E.E., Coburn, 3.W., Brown, L.E., 3udelson, D.A., Khamoui, A.V., Tran, T.T. and Uribe, B.P. (2010). A comparison of muscle activation between a Smith machine and tree weight bench press. J Strength Cond Res. 24(S), 779-784.

Schwanbeck, S., Chilibeck, P.D. and Binsted, G. (2009). A comparison of free weight squat to Smith machine squat using electromyography. JStrength Cond Res. 25(9), 2588-2591.