#86 全身バイブレーショントレーニング(WBV)の短期的・即時効果に着目した論文レビュー

ALL EVIDENCE BASE TRAINING

本記事では、前回の”全身バイブレーショントレーニング(WBV)と怪我の予防に関する論文レビュー”で明らかになったWBVトレーニング(全身振動トレーニング)効果を理解した上で、さらにこのトレーニングの短期的・即時効果に着目した研究をみていきます。

前回の”全身バイブレーショントレーニング(WBV)と怪我の予防に関する論文レビュー”↓↓↓
 

 

目次

  • 体幹トレーニングに対するWBVトレーニングの即時効果の研究
  • エリート新体操選手のバランス、柔軟性、下肢爆発力に対するWBVトレーニングの短期的な影響の研究
  • 体操選手の柔軟性と爆発力に対するWBVトレーニングの即時効果の研究
  • バイブレーションでのウォームアップが足の速さに及ぼす即時効果の研究
  • まとめ

体幹トレーニングに対するWBVトレーニングの即時効果の研究

即時効果の研究では、Wirth、Zurfluh and Muller(2011)らは体幹エクササイズに焦点を当てた8つの異なるエクササイズでバイブレーションプラットフォームを使用したグループと使用していないグループで比較しました。そして、バイブレーションプラットフォームを使用したグループで筋電図活動の低から中程度の増加を記録しました。

この効果は、脊柱起立筋群に比べて腹筋群でより大きくなりました。これは、さまざまな筋とバイブレーションの起点との間の距離、つまり各エクササイズのポジショニングが振動刺激を筋に対してどのように引き起こすかによって影響が違ってくる可能性があります。著者はまた、バイブレーションプラットフォームが不安定な表面として機能する可能性があることを指摘していますが、経験上として、トレーニングを受けていない個人でのみにみられることであって、短い期間の慣れの後、想定される不安定である表面の影響は大幅に減少する可能性があると考えています。

エリート新体操選手のバランス、柔軟性、下肢爆発力に対するWBVトレーニングの短期的な影響の研究

【目的】
WBVトレーニングが振動なしで実行される同じプログラムと比較して、柔軟性、筋力、バランスのテストで短期的なパフォーマンスの改善をもたらすかを調査する。
【方法】
WBVトレーニングを伴う介入グループと対照グループに分けられ、後者は振動なしでエクササイズを行った。全ての柔軟性、筋力、バランスの測定は、トレーニング前と直後、そして15分後で行われた。
【結果】
WBVトレーニングで訓練したグループで有意に効果が高くなった。

これらの結果から、柔軟性、筋力、バランスにおいてWBVトレーニングの即時効果があることの可能性が考えられます。

体操選手の柔軟性と爆発力に対するWBVトレーニングの即時効果の研究

【目的】
体操選手の柔軟性と爆発力に対するWBVトレーニングの即時効果を調査する。
【方法】
32名の若い体操選手が参加し、自重トレーニンググループと振動トレーニングを追加したグループに振り分けられた。柔軟性と爆発力のテストは、介入前と直後、そして15分後に測定された。
【結果】
WBVトレーニンググループで柔軟性と爆発性の大幅な増加を記録した。これは、介入後15分のテストで確認された。
【結論】
WBVトレーニングは若い体操選手の下肢の柔軟性と爆発力を改善し、WBV介入プログラム後少なくとも15分間はパフォーマンスのレベルを維持すると結論付けた。

これらの調査結果にもかかわらず、この著者らは評価された体操選手の年齢は9〜12歳であったことを踏まえ、この研究に特定の制限があったことを提示しています。

これらの研究は、採用された方法論のさまざまな側面に関する解釈に慎重でありますが、一方ではバイブレーションプラットフォームのトレーニングが短期間にもたらすポジティブな効果の可能性があることを知らせています。そしてWBVトレーニングによるモーターユニットの増強効果が期待でき、競技前に使用できるかもしれません。

バイブレーションでのウォームアップが足の速さに及ぼす即時効果の研究

競技前に使用できるかどうかを調べる目的で、Donahue et al.(2016)らは、身体的健康な被験者の足の反応速度に対するバイブレーションプラットフォームトレーニングの効果を観察するために、4つの異なる条件を定めました。

1)ウォームアップなし
2)従来のウォームアップ
3)バブレーションでのウォームアップ
4)従来ウォームアップとバイブレーションでのウォームアップ

バイブレーションのみのウォームアップで、足の反応速度が4%向上しましたが、従来のウォームアップを組み合わせることで、最良の結果が得られました。これは足が地面に触れた回数で測定されました。この研究ではトレーニングや試合の前のウォームアップにWBVウォームアップの有効性を示唆しています。

WBVセラピーがパフォーマンス回復に及ぼす影響の研究

一方、Manimmanakorn、Ross、Manimmanakorn、Lucas and Hamlin(2015)らはWBVセラピーと従来のアクティブリカバリー(サイクリングとストレッチ10分)で、高強度トレーニング後の疲労の程度の比較をする目的で研究をしました。全ての測定(血中乳酸素濃度、垂直跳び、大腿四頭筋の筋力、柔軟性、自覚疲労評価、筋肉痛)は、高強度トレーニングを行なった後の30分後と60分後で行われました。この研究で観察されたように、高強度トレーニングセッション後のバイブレーションプラットフォームを使用して回復を促進しても、回復中の筋肉の酸素化の増加が確認されましたが、従来のクーリングダウンと比較して、その後のパフォーマンスを改善する明確な影響はありませんでした。

まとめ

バイブレーショントレーニングの短期的な効果のまとめ
  • 体幹トレーニングに対する WBVの使用は脊柱起立筋群に比べて腹筋群でより大きい筋活動を引き起こすことが確認されています。
  • 柔軟性、筋力、バランスにおいて、WBVトレーニングによる即時効果がある可能性があります。
  • WBVトレーニングは若い体操選手の下肢の柔軟性と爆発力を改善し、少なくとも15分のパフォーマンス改善の維持ができます。
  • トレーニングや試合の前のウォームアップにWBVウォームアップの有効性を示唆することができます。
  • WBVセラピーはアクティブリカバリーと比較して、回復時の酸素レベルでのより大きな改善の可能性は考えられますが、運動後30分と60分後のパフォーマンスには違いはありません。

以上のことから、WBVはトレーニングや試合前に使用することでパフォーマンス向上の効果があることを期待できます。しかし、バーブレーションの影響とと回復に関してこれら研究からは効果がないことが考えられます。

引用文献

1)Wirth, B., Zurfluh, S. and Miiller, R. (2011). Acute effects of whole-body vibration on trunk muscles in young healthy adults. J Electromyogr Kinesiol. 2J(5), 450-457.

2)Despina, T., George, D., George, T., Sotiris, P., Alessandra, D.C., George, K., Maria, R. and Stavros, K. (2014). Short-term effect of whole-body vibration training on balance, flexibility and lower limb explosive strength in elite rhythmic gymnasts. Hum Mon Sci. 53 149-58.

3)Dallas, G., Kirialanis, P. and Mellos, V. (2014). The acute effect of whole-body vibration training on flexibility and explosive strength of young gymnasts. Biol Sport. 51(S), 233-257.

4)Donahue, R.B., Vingren, 3.L., Duplanty, A.A., Levitt, D.E., Luk, H.Y. and Kraemer, W.3. (2016). Acute Effect of Whole-Body Vibration Warm-up on Footspeed guickness. J Strength Cond Res. S0(8), 2286-2291.

5)Manimmanakorn, N., Ross, 3.3., Manimmanakorn, A., Lucas, S.3. and Hamlin, M.3. (2015). Effect of whole-body vibration therapy on performance recovery. Int J Sports Physiol Perform. 10(5), 388-595.