#154 ウエイトトレーニングでのセット間のベストな休憩時間について

ALL PRACTICAL TRAINING

ウエイトトレーニングはさまざまな目的で行われますが、主な理由は、筋力アップや筋肥大のためです。しかし、特定の人は、筋持久力、減量、またはファンクショナルトレーニングのために行うこともあります。

以上のような目的を達成するには、それぞれウエイトトレーニングのやり方を変えていかなければなりません。そのやり方とは、各セットの回数や負荷量、そしてセット間の休憩時間などの要素があります。

本記事では、目的にあったウエイトトレーニングでのセット間のベストな休憩時間について書いていきます。

目次

  1. 筋肉を動かすためのエネルギー供給の仕組み
  2. セット間の適切な休憩時間
    ・筋肉量の増加
    ・筋力・筋パワーの向上
    ・持久力の向上
    ・減量
    ・フィットネス初心者
    ・ファンクショナルトレーニング
  3. まとめ

1.筋肉を動かすためのエネルギー供給の仕組み

筋肉は、 ATP-CP系、解糖系(乳酸系)、そして、有酸素系の3つのエネルギーシステムによってエネルギーを供給されます。

筋肉が機能すると、これらのシステムが交代でアデノシン三リン酸(ATP)を合成し、筋細胞にエネルギーを供給します。

最初の2つのシステムであるATP-CP系と解糖系は、より短い時間のエネルギー供給に対応するシステムです。つまり、短時間で強力な生産性のあるシステムとなります。

ATP-CP系は、最大30秒間の筋肉の働きにエネルギーを供給します。その後、解糖系は30秒から3分の筋肉の働きにエネルギーを供給します。このATP-CP系と解糖系の2つのシステムは、筋力と筋肥大に焦点を当てた筋力トレーニングに関係しています。

運動時間が3分を超えると、有酸素系のシステムが働き始め、より低い力のエネルギー生産に変わります。

この3つのエネルギーシステムは、あらゆる種類の筋活動に対応できるようにするために必要なエネルギーを体に供給するよう常に機能しています。

例えば、重いウェイトを持ち上げている場合、体は短時間でより大きな力が発生するようにATP-CP系システムが働きますが、その分、再び同じ力で同じ筋活動を繰り返すためには、多くの回復が必要になります。反対に軽い重量を持ち上げる場合、体は短時間で大きな力を必要としないため、有酸素系のシステムが働き、より短い時間の休憩で同じ動作を繰り返すことができます。

トレーニングの目標が筋肉量の増加や持久力の向上であれば、その目的によってセット間の休息時間を調整することができます。

2.セット間の適切な休憩時間

セット間の適切な休憩時間

筋肉量の増加

筋肉の量を増加させるためには、筋線維のサイズ大きくするための刺激が必要になります。

筋肉の増加に特化した競技種目としてボディービルダーがあります。ボディービルダーにとって筋力、持久力、脂肪の減少と比較して、筋肉のサイズの増加が最も重要な要素です。もし、健康のために体を鍛えたいという人や体の見た目をよくしたいという人にとっても、筋肉量の増加に特化したトレーニングというのはとても有効的になります。

このタイプのトレーニングは、通常、追い込めば追い込むほど、乳酸と血中乳酸のレベルを高めます。

筋肉量の増加のための筋肥大トレーニングの目的は、筋肉に過負荷をかけ、筋線維に一時的な外傷を引き起こし、回復することにより筋の断面積が増加するように刺激することです。

一般的には、筋肥大を目的とする場合と筋力アップを目的とする場合では、ウエイトの負荷量にはそこまで違いはありません。これらの目的の通常の負荷量は、1RMの50%〜90%の範囲とされています。しかし、筋肥大と筋力アップのトレーニングの最大の違いは、セット間の休息にあります。ある研究によると、筋肥大を誘発するための最適な休息セット間隔は30〜90秒です。

筋力・筋パワーの向上

筋力とは、物体に力を加えた時にその物体を動かす力の能力のことを言います。

通常であれば、筋力は1レップをマックスで行える負荷量によってテストされることがよくあります。これは、可動域全体で最大量の負荷を正常に動かすことが必要です。

パワーリフティングの競技では、ビックスリーと言われる3つのエクササイズであるベンチプレス、スクワット、そしてデッドリフトを使用して人類最強の力持ちを決定します。

筋力を高めるときは、筋肉量の増加も大事ではありますが、最大の力を出せることを重視します。セット間の適切な休息は、次のセットのために高レベルの筋の出力を維持するのに役立ちます。

そのため、筋力を高めるための一般的な休息時間は筋肥大のトレーニングよりも長めの2〜5分であり、これは筋力の発達に最適であることが研究によって示されています。しかし、これは年齢、繊維の種類、および遺伝学によって異なる可能性があることも示唆しています。

持久力の向上

筋持久力とは、通常の負荷量として1RMの40%〜60%の範囲で行われ、一定の時間にわたって運動を繰り返す能力です。

ある研究によると、筋肉の持久力を高めるための最適な休息時間は2分未満とされています。ただし、持久力が目標である場合、休憩間隔は20秒と短くても、メリットがあるされています。

アメリカのストレングスアンドコンディショニング協会は、筋肉の持久力を向上させるために、セット間の30秒の休憩間隔を推奨しています。

筋持久力プログラムは通常、同じエクササイズのセット間またはサーキットトレーニングプログラムを介して短い休憩間隔で行われます。筋肉の持久力を鍛えるために有効な高強度インターバルトレーニング(HIIT)などのプログラムもあります。

減量

ウエイトトレーニングは脂肪を減らすためにプラスの影響を与えます。しかし、減量には栄養価の高い食事とウエイトトレーニングを組み合わせることが最も重要であることを覚えておくことが重要です。この2つのアプローチにより摂取カロリーが消費カロリーよりも少なくなります。

筋力トレーニングと筋肥大トレーニングの両方が総カロリー消費量を増やしますが、休憩時間の違いはそれほど大きな要因ではありません。

HIITトレーニングは、ランニングのような中程度の強度のトレーニングと比較した場合、減量によりプラスの影響を与えることも示されています。筋力トレーニングと筋肥大トレーニングは、全身の脂肪の減少に効果的でありますが、HIITトレーニングの方が40%短い時間で同じ効果を出すとされています。

レジスタンストレーニングとHIITトレーニング、そして有酸素トレーニングは、食事療法と組み合わせた場合、減量とってプラスの効果を示しますが、セット間の休憩の時間に関しては影響がないとされています。

フィットネス初心者

フィットネス初心者の方は、最初の数か月間、筋力トレーニングを行うことに慣れ、安全に実行するためのフォームを習得します。

ある研究によると、フィットネス初心者の方にとっての最大のトレーニング効果が出るのは、セット間の60〜120秒の休憩間隔であると報告しています。初心者の人にとって大切なことは、次のセットを行うまでに十分に回復できてることです。

トレーニングの経験を積むにつれて、重量と休憩の間隔を調整して、より具体的なトレーニング目標に焦点を合わせることができますが、トレーニング初期は基礎的なトレーニングプログラムは組むことが最適です。

ファンクショナルトレーニング

適切な体の使い方を習得することは、運動効率を高め、怪我のリスクを減らします。トレーニングのフォームは、エクササイズの種類によって難易度が異なります。

例えば、オリンピックの重量挙げ競技は、スピードの速い熟練した動きに焦点を当てています。逆に、ベンチプレスのエクササイズでは複雑な動きは少なく、体の使い方としては難易度が低くなります。

エクササイズの難易度にかかわらず、初めはフォームを正しく行うために、トレーニングの負荷を軽くすることが大切です。フォームが崩れないように、回復を十分な行うことも重要です。

通常であれば、1〜2分の休憩間隔で十分な回復が可能です。

まとめ

  • 筋肉には3つのエネルギーシステムがあり、運動強度によって適切なシステムを使用します。
  • ウエイトトレーニングのセット間の休憩時間は、筋力や減量などの特定の目標によって変わります。
  • 筋肥大を目的としたトレーニングは、30〜90秒のセット間の休憩が最適です。
  • 筋力アップのためのトレーニングは、2〜5分の休憩が最適です。この休憩時間により、筋肉は十分に回復し、次のセットに力を十分に出すことができます。
  • 筋持久力トレーニングには、通常、20〜60秒の短い休憩時間が必要です。このタイプのトレーニングでは、より少ない負荷量で行われます。
  • 筋力トレーニングは、食事療法と組み合わせることでより減量に効果的になります。
  • フィットネス初心者は、セット間で60〜120秒の休憩をとることが推奨されます。トレーニングの経験を積むにつれて、目標に応じた休憩時間を適応していきます。
  • ファンクショナルなパラケレーニングの場合は、セットの間に1〜2分の休憩をとることで、フォームを崩さずに行いやすくなります。

ウエイトトレーニングを行う時に様々な目標に向かって取り組まれます。トレーニングにはボリュームと負荷量がとても重要ですが、セット間の休憩時間もとても重要です。

セット間の休憩時間は、目標に応じて、休憩間隔を短くしたり長くしたりして、トレーニング効果を高めていくことが大切です。

参考文献

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