#160 胸郭と骨盤を分離するとはどういうことか
胸郭と骨盤を分離すると聞いてもよくわからない人が多いのではないでしょうか。これは元々僕自身も胴体力で有名な伊藤昇先生の書籍を読んで初めて聞いた言葉であり、重心力の向原先生からトレーニング指導を受けて理解を深めていったことでもあります。
本記事では、この胸郭と骨盤を分離するということについて個人的な考えとして書かせていただきます。
あくまで個人的な考えなので、本質をつけているかどうかはわかりませんので、参考程度までによろしくお願いします。
目次
- 胸郭と骨盤を分離するとは
- 胸郭と骨盤を分離するために必要なこと
•骨盤を安定させる
•胸郭の柔軟性も上げる - 分離が進むことにより腸腰筋が活性化する
- まとめ
1.胸郭と骨盤を分離するとは
胸郭と骨盤を分離するということを理解するためには、まず胸郭の動きと骨盤の動きを理解する必要があります。
胸郭とは、12個の胸椎、12対の肋骨、胸骨で構成されています。胸郭の中には肺や心臓などの大事な臓器も含まれています。胸郭の動きは主に胸椎を中心に動き、構造的な理由から鎖骨や肩甲骨の動きの影響も受けます。
胸椎の動きは、屈曲・伸展、側屈、回旋の3方向で、可動域は、屈曲40度、伸展25度、側屈30度、回旋30〜35度です。
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骨盤とは、左右の腸骨と仙骨から構成されています。骨盤の中には直腸や膀胱、子宮、前立腺などが位置しています。腸骨と仙骨の間では、強靭な靭帯があるため、動きがないという説や逆に動きが少しあるという説もあります。
骨盤の動きは、前傾・後傾、挙上・下制、回旋の3方向です。
以上のように。胸椎と骨盤はそれぞれの動きをします。
骨盤が動く時には、骨盤の上、胸椎の下に位置する腰椎が一緒に動くという腰椎骨盤リズムというものがあります。つまり、骨盤が前傾すれば腰椎が伸展し、後傾すれば屈曲、挙上・下制すれば側屈、回旋すれば回旋と動きとして連動します。
胸郭と骨盤を分離することについて考えた場合、分離ができている場合は、腰椎骨盤リズムで起こる動きが胸郭に影響を与えないことを言います。つまり、胸郭と骨盤の分離というのは、骨盤が前傾し、腰椎が伸展しても、胸郭はつられて伸展せずに屈曲や側屈、回旋といった他の方向に自由に動かすことができるということです。しかし、反対に胸郭と骨盤の分離ができていないということは、腰椎骨盤リズムの動きと同様に胸郭も同時に動いてしまうことを言います。
この胸郭と骨盤を分離できるようにするために必要なことについて、次に説明していきたいと思います。
胸郭と骨盤を分離できるために必要なこと
胸郭と骨盤の分離を促すためには、この二つを分離するための新しい神経回路を作る必要があります。この新しい神経回路とは、ある筋肉に神経のシグナルがしっかりと通ることで生まれるものなのですが、このある筋肉を活性化させるためにはまず2つの要素がとても重要になってきます。
•骨盤を安定させる
骨盤を安定させることは、胸郭と骨盤を分離させるために一番大切なことであります。骨盤を安定させるとは骨盤の周りにある筋肉である、内転筋筋群、臀筋群、外旋筋群、多裂筋がしっかりと働ける状態を作れることが大切になります。これらの筋肉がしっかりと働くことで、骨盤全体が安定し、胸郭が動く時にもその動きにつられずに骨盤の位置を保つことができるようになります。
骨盤の安定化については、股関節の捉えとも密接に関係するので以前書いたこちらの記事も載せておきます。
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•胸郭の柔軟性も上げる
胸郭と骨盤の分離を促すために必要なこととして、骨盤が安定する事ともう一つ大切なことは、胸郭の柔軟性を上げることです。もし胸郭の柔軟性が不十分であれば、本来動ける範囲の可動域に制限がかかり、その代償として腰椎の動きにつながってしまいます。そうすることで先ほど述べた腰椎骨盤リズムが働き、胸郭が動くと骨盤もつられて動くことになってしまいます。そのため、胸郭の柔軟性を確保することで、骨盤との分離を促しやすくなります。
以上の二つの要素がしっかりと改善していくと、ある筋肉が促通され、新しい神経回路がうまれ、胸郭と骨盤を別々に動かすことができるようになります。
ある筋肉とはなんなのか気になると思いますので、次にそのある筋肉について話していきます。
分離が進むことにより腸腰筋が活性化する
ある筋肉とは腹部の深部にある腸腰筋という筋肉です。この腸腰筋とは、小•大腰筋、腸骨筋の3つの筋肉からなり、12番目の胸椎と1〜5番目の腰椎、腸骨の内側から小転子に付着しています。また筋膜の連結として、横隔膜の方まで繋がっています。
この腸腰筋の起始停止を考えた場合、通常の働きであれば、体幹部が安定した状態で足を動かすことで、股関節屈曲の動きをします。この働きは一般的に知られている腸腰筋の働きですが、実はもう一つ大切な働きが腸腰筋にはあります。先に伝えますが、この働きというのが、胸郭と骨盤を分離するための重要な働きになるのです。
通常の腸腰筋の働きは股関節の屈曲ですが、これは、体幹部が固定点となった状態でのことです。では逆に付着部である小転子が固定点となった場合(骨盤が安定した場合)に、どのように腸腰筋が働くのでしょうか。
腸腰筋は前面から見た場合、ハの字に12番目の胸椎と1〜5番目の腰椎から小転子についているため胸郭が小転子の方に引っ張られます。ということは、実は腸腰筋のもう一つの働きとして胸郭の位置を移動させるという働きがあるのです。つまり、これは何を意味するかというと、胸郭と骨盤の分離ができていることを意味します。
そのため、胸郭と骨盤の分離を促すためには、この腸腰筋がしっかりと機能していることが大切であり、この新しい神経回路を獲得する必要があるということです。
まとめ
本記事では、胸郭と骨盤の分離について詳しく説明をさせていただきました。
ここの記事では触れてはいませんが、胸郭と骨盤の分離ができるようになると、腸腰筋だけでなく他のより深部に近い筋肉が同時に活性化していき、体の連動を作りやすくなっていきます。
つまり、スポーツパフォーマンスの向上や怪我のリスクの低下につながるような体の使い方をできるようになるということになります。
胸郭と骨盤の分離を促すためには、骨盤の安定化と胸郭の柔軟性がまず大切になってくるので、ぜひトレーニングをして深部の筋肉を使えるように取り組んでみてください。
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