#55 肩甲骨はがしが体幹を強くする理由

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以前に、このようなツイートをしました。

このように肩甲骨を自由に動かし、操作できることは体幹を強くし、パフォーマンスを上げてくれます。

本記事では、このようなことを少し詳しく解説していきます。

目次

  1. 肩甲骨はがしが体幹を強くする理由
    ・肩甲骨が重心移動をコントロールする
    ・腕の力を体幹に伝える役割
    ・肩甲骨の柔軟性が呼吸や腹圧にも影響する
  2. 肩の細分化
    ・肩の骨格構造
    ・肩甲骨が腕の動きを作る
    ・肘の意識を高めると肩甲骨が動く

1肩甲骨はがしが体幹を強くする理由

体幹を効果的に使えるようになるには肩甲骨が自由に動けることと関係してきます。そのため逆に言えば肩甲骨はがしなどで肩甲骨の可動域を上げることで体幹が強くなっていくことにもつながります。
まずはこのことについて詳しく説明していきます。

肩甲骨が重心移動をコントロールする

肩甲骨が重心移動をコントロールすると聞いても、”重心移動は足で地面を蹴ってするのではないの?”と思うかもしれません。重心移動をする最後の動作として、足で地面を蹴るのでこのことは間違いではないのですが、それだけでは効率よく重心移動をすることができません。効率よく重心移動をするためには、足で地面を蹴るときに蹴り足の方の股関節にしっかりと上半身が乗っていることがとても大事になります。これは”股関節の捉えができている”というように言い換えることができます。このことにより上半身の重みがしっかりと地面まで伝わり、効率よく地面を蹴ることができるようになります。

そして、この股関節の捉えを作るためには肩甲骨の柔軟性がとても重要になります。肩甲骨の柔軟性は胸郭の柔軟性とも密接に関係していて、この二つの部位が硬く柔軟性がないと胸椎が動かずに腰椎を軸として上半身を動かすことになります。そのことで重心移動は腰椎を中心に行うことになり、上半身の重みが股関節にしっかりと乗らなくなってしまいます。逆に肩甲骨が自由に動くことで胸を中心に動かすことができるようになるため、頭の天辺から骨盤までしっかりと軸ができるようになり、股関節の捉えが強くなります。

股関節の捉えと胸を中心に動かすことについて詳しく知りたい人はこちらをご覧ください↓

腕の力を体幹に伝える役割

他にも肩甲骨には体幹から生まれた力を腕に伝える役割があります。そして肩甲骨を自由に動かせることで体幹の大きな力をロスなく腕に伝えることができます。また、反対に腕を制限なく動かせることは、腕から発生した力の反発をくらうことなく体幹そして脚へと伝えられます。これらは、肩甲骨が自由に動けることで、力を伝えるための最善のポジションに肩甲骨の位置を移動させることができるからです。

具体的な話でいくと、ボールを投げる動作を想像してみてください。投球動作で体幹がいくら強い力を生み出したとしても肩甲骨に柔軟性がなく、うまく使えないと腕まで力が伝わりません。その結果、キレのないスピードの遅いボールを投げたり、体幹と腕が分離した腕の力だけで投げる投げ方になってしまいます。また、怪我のリスクも上げてしまいます。

肩甲骨の柔軟性が呼吸や腹圧にも影響する

肩甲骨の動きが制限されていることは、先ほど話したように投球動作のパフォーマンス低下や肩の怪我のリスクを高めます。さらに、この肩甲骨の制限は体幹にも悪い影響を与えます。

腕から肋骨部や腰までついている筋肉はいくつかあります。これらの筋肉が原因により肩甲骨の動きの制限が起きている場合は、肋骨部や腰の筋緊張が増加して呼吸機能の低下腹圧の低下などにもつながる恐れがあります。

これらは体幹部のアウター筋でガッツリと固めてしまい、深部のインナー筋で体を動かせなくなることにもつながります。そのため肩の制限がなく自由に動かせることは、体幹が持っている元々の機能を最大限に引き出すためにとても大切になります。

2 肩の細分化

ここからは今までお話ししたことをさらに細かくみていきたいと思います。

肩の骨格構造

肩の骨格構造
肩の骨格構造は上の図を見てもらえればわかる通り、上腕骨が鎖骨と肩甲骨につながり、鎖骨と肩甲骨が体幹につながっています。そして肩甲骨は肋骨に浮いているだけなので、動きの自由度が高いことがわかります。

そのため、肩の可動域の制限が起きるということは、本来あるはずではないのです。実際の動きでも腕を下ろした状態から180°上まで腕を動かすことができます。

肩甲骨が腕の動きを作る

先ほどお話しした通り、肩甲骨は肋骨の上に浮いている状態で筋肉によって支えられています。また、腕を動かすときには肩の角度によって上腕骨に対して肩甲骨が最適なポジションを取るために動きます。

そのため肩甲骨が肋骨と分離して自由に動けることは腕を自由自在に動かせることにもつながります。逆に言えば肩甲骨を支える筋肉によって肩甲骨の動きが制限された場合は、肩をあげる動作の制限を作ってしまうのです。

肩関節脱臼や肩を痛めることについてもこのことが非常に大事で、肩甲骨の動きが制限されていると肩を中心に動かす癖があるため、肩に直接負担がかかってしまいます。

肘の意識を高めると肩甲骨が動く

肩甲骨の動きをよくするために簡単なことは、肩甲骨のラインに沿って誰かに指を入れてもらい腕を動かすことです。このことにより肩甲骨周りの筋肉が緩んでくれます。

また、腕を動かすときに肘を意識すると肩の力が抜けて肩甲骨も動きやすくなります。

実際に、手を軽くグーにして手に意識を向けて腕をあげるのと、肘に意識を向けるのでは腕の上がりやすさが違うことがわかると思います。

野球のピッチングやテニスのサーブ動作でもそうですが、肘で標的を捉えていると思った方向にいく確率が上がりますが、肘がブレているとなかなか思ったところにはボールはいきません。

武道でも肘を体の中心線に持っていくようにすると自然と肩が下がり体幹と肩をつなげることができますが、肘を上げてしまうと肩が上がり体幹と肩が分離した動きをしてしまいます。

このようにスポーツや武道でも肘の意識というのは非常に大事であることがわかります。また肘の意識で肩甲骨の動きがよくなれば、腕のリーチも長くなり優位に体を動かせるようになります。

まとめ

  • 肩の動きに自由度があれば、体幹の生み出した力をロスさせることなく伝えることができます。
  • 肩の制限があると、肋骨の可動域の低下、呼吸の低下、腹圧の低下にもつながる恐れがあります。
  • 肩は骨構造から本来とても自由度が高い関節であることがわかります。
  • 肩を自由に動かせるようになるには、肩甲骨と肋骨とを分離して動かせる能力が必要になります。
  • 肩甲骨の動きをよくするためには、肩甲骨を剥がすように動かすことや肘を意識した動きの習得が大切です。

このように肩の状態によっては体幹の機能を低下させる可能性もあるし、最大限に引き出せる可能性もあります。

そのためサッカーのような足を使う競技であってもこの肩や腕を自由に使えることが非常に大切になってきます。

この記事を読んで肩甲骨、肩、肘の重要性がわかってくれたら嬉しいです。