#98 スポーツにおける腱損傷のリスクファクター

ALL REHABILITATION THERAPIST

スポーツ選手の中で筋や腱損傷によって痛みを伴いながら練習に参加したり、長期的に練習や試合から離脱しなければならなかった経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。

今回は、腱損傷になるうるリスクファクターを紹介していきます。

目次

  1. スポーツにおける腱損傷のリスクファクター
    ・腱損傷の発症率
    ・腱損傷の内的・外的因子
  2. まとめ

1.スポーツにおける腱損傷のリスクファクター

スポーツにおける腱損傷のリスクファクター
腱損傷のリスクファクターはさまざまな研究で調べられてきました。主に数日からそれ以上で良くなる腱損傷や部分断裂を伴う男性アスリートを被験者とした腱損傷のリスクファクターの研究が多くされてきました。

腱損傷の発症率

サッカーにおいて、腱損傷の部位として発症率はフィールドプレーヤーとゴールキーパーでは以下のような違いがあります。(UEFA Elite Club Injury Study)

フィールドプレーヤー

肩 0.4%
肘 0.1%
手 0.2%
股関節・鼠蹊部 20%
大腿部 8%
膝 27%
下腿・アキレス 31%
足首/足 11%

ゴールキーパー

肩 21%
肘 13%
手 3%
股関節・鼠蹊部 12%
大腿部 4%
膝 22%
下腿・アキレス 16%
足首/足 3%

フィールドプレーヤーでは、股関節・鼠蹊部、膝、下腿・アキレスの部位に腱損傷を伴うことが多く、ゴールキーパーではプラスして肩、肘の部位の腱損傷が発生することが多いことがわかっています。ゴールキーパーは腕も使うので当然と言えば当然の結果であることは分かると思います。

腱損傷の内的・外的因子

腱損傷の内的・外的因子
これらの腱損傷がどのような要因で起きてくるのかをアキレス腱損傷と膝の膝蓋腱損傷の研究を元に内的・外的に分けてみていきます。

内因因子

アキレス腱と膝蓋腱の損傷の内的因子として

腱損傷の既往歴
筋力/ バイオメカニクス
性別
遺伝
腱異常
年齢(アキレス腱のみ)

が関係していると言われています。1)2)

腱損傷の既往歴

腱損傷から復帰してからの再発率は

アキレス腱で27%
膝蓋腱損傷で20%
そして
10日以内に復帰にした場合には31%
10日以上かけて復帰した場合には13%

の再発率が研究結果として報告されています。3)4)

筋力/ バイオメカニクス

内的因子の一つとして筋力低下が関係している可能性があるとされています。5)6)
しかしこれに関して、アキレス腱の怪我した側と健側を比較した研究では、最大筋力、反応時間、爆発的な力に違いがあったことから、痛みが負荷を減らしその結果として、筋力低下が起きている可能性もあることも示唆してます。7)
バイオメカニクスにおいては、足首背屈可動域の減少、大腿後部と大腿四頭筋の柔軟性の減少、ジャンプトレーニングの量の増加、1週間に行われるバレーボールの練習頻度の増加、反動ジャンプ(CMJ)の高さの増加などが関係しているかもしれないとされていますが、科学的根拠には乏しく今後のさらなる研究が必要とされています。8)

性別と年齢(アキレス腱のみ)

性別に関して、男性は女性と比べて発生率が高いことが報告されています。9)
また、年齢が高ければ高いほどアキレス腱の損傷発生率が高く、膝蓋腱に関しては年齢は関係ないことが示されています。4)9)

生物学的因子・遺伝

生物学的因子としてオーバーウェイト、BMIの増加、そしてリウマチの症状として挙げられます。10)11) また、遺伝子による腱損傷の予測も可能性があることも考えられます。12)

腱の変異

プレシーズン中にウルトラサウンドで腱の変異を確認したところ、変異がある選手ではアキレス腱では17%、膝蓋腱では45%の腱損傷のリスクがあり、変異がない選手ではたったの3%の腱損傷のリスクしかなかったことが研究で報告されています。13)
また、病的変異がある場合は高確率で腱断裂が起こることも別の研究で報告されています。14)15)

外的因子

アキレス腱と膝蓋腱の損傷の外的因子として

気候・地面のコンディション
シーズンの時期

腱への負荷量

があります。

気候・地面のコンディション

気候に関して、北と南ヨーロッパを比較した際に気候がグラウンドの硬さに影響し北ヨーロッパの方が78%のアキレス腱の損傷リスクがあることがわかりました。16) もちろん、北と南ヨーロッパではトレーニング方法も違うため、一概には言えませんが、面白い研究結果です。
また、天然芝と人工芝との比較では膝蓋腱とアキレス腱の損傷時に復帰への回復期間には差がありませんでした。3)17)

シーズンの時期

プレシーズンとシーズン中のアキレス腱の怪我の比較をした研究では、プレーシーズンの方が怪我の受傷リスクが高いことが報告されています。4)
また、膝蓋腱の怪我に関しては、シーズンでの受傷率の違いがあまりみられませんでした。3)

感染症を予防するフッ素が加工された抗菌剤であるフルオロキノロン抗生物質の投与では、アキレス腱断裂で2.5倍、アキレス腱鞘炎で4倍、2倍の他の部位の腱障害のリスクがあることが言われています。また、フルオロキノロン抗生物質と抗炎症作用のあるコルチコステロイドの複合投与では5倍のアキレス腱断裂のリスク、15倍の他の腱の障害のリスクがあることが報告されています。18)

腱への負荷量

トレーニングやプレー中などで腱への負荷量が増加すると必然的に怪我のリスクが高まることがわかります。負荷量に関しての研究はありますが、どのくらいの負荷で怪我を受傷するのかなどのデータを研究された研究があまりないため、今後の研究で解明されることが必要です。

2.まとめ

アキレス腱・膝蓋腱の内的因子は

腱損傷の既往歴
筋力/ バイオメカニクス
性別
遺伝
腱異常
年齢(アキレス腱のみ)

外的因子は

気候・地面のコンディション
シーズンの時期

腱への負荷量

です。

以上のことから、アキレス腱と膝蓋腱の損傷のリスクファクターに関して紹介してきました。さまざま因子があるため、この怪我の予防を100%可能にすることは難しいと考えられますが、少しは参考になるかと思います。

腱損傷の再発率も高いため、今までの研究結果からはできるだけ長くリハビリ期間を設けることやトレーニング時に過負荷にならないための調整、腱の変異があるかどうか、あった場合にはより注意をすること、炎症の状態はどうかなどしっかり把握した上で、復帰に向けてトレーニングをしていくことが大事だと思います。

また、フルオロキノロン抗生物質とコルチコステロイドの複合投与は今の研究では、再発率を上げてしまうよくない選択肢と言われているためこれはなるべく避けるべきだということもわかります。

筋バランスの崩れが怪我につながる理由について書いた記事↓↓↓

参考文献

1)van der Vlist AC, Breda SJ, Oei EHG, Verhaar JAN, de Vos RJ. Clinical risk factors for Achilles tendinopathy: a systematic review. Br J Sports Med. 2019 Nov;53(21):1352-1361. doi: 10.1136/bjsports-2018-099991. Epub 2019 Feb 4. PMID: 30718234; PMCID: PMC6837257.

2)Sprague AL, Smith AH, Knox P, Pohlig RT, Grävare Silbernagel K. Modifiable risk factors for patellar tendinopathy in athletes: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2018 Dec;52(24):1575-1585. doi: 10.1136/bjsports-2017-099000. Epub 2018 Jul 27. PMID: 30054341; PMCID: PMC6269217.

3)Hägglund M, Zwerver J, Ekstrand J. Epidemiology of patellar tendinopathy in elite male soccer players. Am J Sports Med. 2011 Sep;39(9):1906-11. doi: 10.1177/0363546511408877. Epub 2011 Jun 3. PMID: 21642599.

4)Gajhede-Knudsen M, Ekstrand J, Magnusson H, Maffulli N. Recurrence of Achilles tendon injuries in elite male football players is more common after early return to play: an 11-year follow-up of the UEFA Champions League injury study. Br J Sports Med. 2013 Aug;47(12):763-8. doi: 10.1136/bjsports-2013-092271. Epub 2013 Jun 14. Erratum in: Br J Sports Med. 2013 Sep;47(13):856. PMID: 23770660.

5)O’Neill S, Barry S, Watson P. Plantarflexor strength and endurance deficits associated with mid-portion Achilles tendinopathy: The role of soleus. Phys Ther Sport. 2019 May;37:69-76. doi: 10.1016/j.ptsp.2019.03.002. Epub 2019 Mar 9. PMID: 30884279.

6)van der Vlist AC, Breda SJ, Oei EHG, Verhaar JAN, de Vos RJ. Clinical risk factors for Achilles tendinopathy: a systematic review. Br J Sports Med. 2019 Nov;53(21):1352-1361. doi: 10.1136/bjsports-2018-099991. Epub 2019 Feb 4. PMID: 30718234; PMCID: PMC6837257.

7)McAuliffe S, Tabuena A, McCreesh K, O'Keeffe M, Hurley J, Comyns T, Purtill H, O'Neill S, O'Sullivan K. Altered Strength Profile in Achilles Tendinopathy: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Athl Train. 2019 Aug;54(8):889-900. doi: 10.4085/1062-6050-43-18. Epub 2019 Aug 6. PMID: 31386582; PMCID: PMC6761911.

8)Sprague AL, Smith AH, Knox P, Pohlig RT, Grävare Silbernagel K. Modifiable risk factors for patellar tendinopathy in athletes: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2018 Dec;52(24):1575-1585. doi: 10.1136/bjsports-2017-099000. Epub 2018 Jul 27. PMID: 30054341; PMCID: PMC6269217.

9)Hägglund M, Waldén M, Ekstrand J. Injuries among male and female elite football players. Scand J Med Sci Sports. 2009 Dec;19(6):819-27. doi: 10.1111/j.1600-0838.2008.00861.x. Epub 2009 Oct 13. PMID: 18980604.

10)Kozlovskaia M, Vlahovich N, Ashton KJ, Hughes DC. Biomedical Risk Factors of Achilles Tendinopathy in Physically Active People: a Systematic Review. Sports Med Open. 2017 Dec;3(1):20. doi: 10.1186/s40798-017-0087-y. Epub 2017 May 18. PMID: 28523640; PMCID: PMC5436990.

11)Maffulli N, Wong J, Almekinders LC. Types and epidemiology of tendinopathy. Clin Sports Med. 2003 Oct;22(4):675-92. doi: 10.1016/s0278-5919(03)00004-8. PMID: 14560540.

12)Rodas G, Osaba L, Arteta D, Pruna R, Fernández D, Lucia A. Genomic Prediction of Tendinopathy Risk in Elite Team Sports. Int J Sports Physiol Perform. 2019 Oct 14:1-7. doi: 10.1123/ijspp.2019-0431. Epub ahead of print. PMID: 31615970.

13)Fredberg U, Bolvig L. Significance of ultrasonographically detected asymptomatic tendinosis in the patellar and achilles tendons of elite soccer players: a longitudinal study. Am J Sports Med. 2002 Jul-Aug;30(4):488-91. doi: 10.1177/03635465020300040701. PMID: 12130402.

14)Hess GW. Achilles tendon rupture: a review of etiology, population, anatomy, risk factors, and injury prevention. Foot Ankle Spec. 2010 Feb;3(1):29-32. doi: 10.1177/1938640009355191. Epub 2009 Dec 15. PMID: 20400437.

15)Rosso F, Bonasia DE, Cottino U, Dettoni F, Bruzzone M, Rossi R. Patellar tendon: From tendinopathy to rupture. Asia Pac J Sports Med Arthrosc Rehabil Technol. 2015 Aug 7;2(4):99-107. doi: 10.1016/j.asmart.2015.07.001. PMID: 29264248; PMCID: PMC5730651.

16)Waldén M, Hägglund M, Orchard J, Kristenson K, Ekstrand J. Regional differences in injury incidence in European professional football. Scand J Med Sci Sports. 2013 Aug;23(4):424-30. doi: 10.1111/j.1600-0838.2011.01409.x. Epub 2011 Nov 3. PMID: 22092416.

17)Kristenson K, Bjørneboe J, Waldén M, Andersen TE, Ekstrand J, Hägglund M. The Nordic Football Injury Audit: higher injury rates for professional football clubs with third-generation artificial turf at their home venue. Br J Sports Med. 2013 Aug;47(12):775-81. doi: 10.1136/bjsports-2013-092266. Epub 2013 Jun 12. PMID: 23760552.

18)Alves C, Mendes D, Marques FB. Fluoroquinolones and the risk of tendon injury: a systematic review and meta-analysis. Eur J Clin Pharmacol. 2019 Oct;75(10):1431-1443. doi: 10.1007/s00228-019-02713-1. Epub 2019 Jul 4. PMID: 31270563.