#67 肋骨と筋機能の関係性を解説します

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今回は肋骨の自由度と筋機能が密接に関係していることが臨床上みられることが多いので、そのことについて書いていきます。

内容に関しては、基本的にはトレーナー向けの記事になりますが、アスリートの方も興味があれば読んでみて下さい。

肋骨の柔軟性はなで肩の姿勢とも関係があります。こちらの記事も読んでみてください。

目次

  • 肋骨と筋肉の関係図
  • 筋機能が低下する理由
  • 実際の経験から言えること
  • まとめ

肋骨と筋肉の関係図

肋骨と筋肉の関係図
肋骨と筋肉と言われてもほとんどの人がピンとこないと思います。

肋骨は全てで12本あり、大きく分けて第1〜7肋骨までを真肋、第8〜12肋骨までを仮肋と呼ばれています。

真肋は肋軟骨を介して胸骨に結合していて、胸郭を支えて胸郭に柔軟性を与えています。

仮肋の中でも第8〜10肋骨は、間接的に肋軟骨を介して胸骨に結合していて、第11・12肋骨に関しては浮肋と呼ばれ、胸椎にのみ連結しています。

これらの肋骨の柔軟性は上半身の動きを高めるだけでなく、重心移動をスムーズに行うためにもとても重要になります。

実はそれだけではなく、各肋骨は、筋肉と密接に関係しているとも言われています。

今回は、第1〜12肋骨と筋肉の関係性について表にまとめましたので、ご覧ください。

筋肉
鎖骨 脊柱起立筋、鎖骨下筋
第1肋骨 肩甲挙筋、胸鎖乳突筋、頭板状筋、頸板状筋
第2肋骨 肩甲下筋、棘上筋、小円筋、大円筋
第3肋骨 三角筋
第4肋骨 烏口腕筋、前鋸筋、内転筋、回内筋、長母指屈筋、上腕二頭筋
第5肋骨 棘下筋
第6肋骨 大胸筋、膝窩筋、小・大菱形筋
第7肋骨 広背筋、上腕三頭筋、僧帽筋中部・下部、横隔膜
第8・9・10肋骨 大腿四頭筋
第11肋骨 縫工筋、薄筋、下腿三頭筋、後傾骨筋
第12肋骨 腰方形筋

以上のように、各肋骨が筋肉と連結していて、肋骨の動きが悪くなると筋肉の機能低下が起こるとも言われています。

この筋の機能低下について少し詳しく話していきます。

筋機能が低下する理由

体を動かしていく中で、筋力が少なくて大きな重りを持ち上げられないというだけではなく、なぜか力が入らないということを経験したことがある人がいると思います。

例えば、左手であれば力を入れやすいのに右手だとなぜかうまく力を入れられないとうことや怪我をした後になぜか右足のつま先だけ力を入れづらいということが起こります。

このようなことは体としっかりと向き合っている選手や徒手筋力テストを実施しているトレーナーでは経験することがよくあります。

よく勘違いすることは、筋力が右よりも左のほうが低いからと思いことや、自分は右利きだから左は力が入りづらいと思うことです。

しかし多くの場合、筋力低下が問題なのではなく、筋機能の低下が起きていることが問題になります。

筋機能の低下とは、体の何らかのバランスの崩れにより、本来ある筋力が100%だしきれていないことを言います。

つまり、この原因を取り除いてあげるとすぐに筋力は正常に戻り、左右さなく力を出せるようになります。

この筋機能の低下が起こる原因を探す一つのヒントとして、上記で紹介した肋骨と筋肉の関係性の表がとても役に立ちます。

そして、肋骨の可動性の低下などがこのような筋の機能低下を起こす一つの原因としても考えられます。

実際の経験から言えること

それではここで実際にどのように上記で紹介した肋骨と筋肉の関係性の表を臨床に落とし込んでいくのかを少し解説していきます。

最近経験した右ハムストリングスの張りを抱えている方を見たときのことです。

右のハムストリングスの中でも大腿二頭筋の近位部に張りを訴えていました。そこで胸郭の動きを見てみると第7肋骨の動きもあまりよくなかったのですが、特に第4肋骨の柔軟性が落ちていました。

そして、第4肋骨の柔軟性の低下を改善してあげるとそのハムストリングスの張りがスパッとキレイに抜けました。

このことがなぜ起こるのかということは、上記の表を見てみるとわかります。

第4肋骨の柔軟性の低下は、烏口腕筋、前鋸筋、内転筋、回内筋、長母指屈筋、上腕二頭筋の機能低下を引き起こします。

内転筋は支持脚に安定性を与える働きがあり、足をつく時に大臀筋の収縮を高めてくれます。逆に内転筋を使えない場合は、大腿四頭筋やハムストリングス、そして大腿筋膜張筋である2関節筋を使って足を安定させようとするため膝や腿裏を痛めやすくなります。

前鋸筋、烏口腕筋、円回内筋は、主に肩甲骨や肋骨を縮める働きがあります。これらの筋肉が機能低下を起こすと(ここでは詳しい説明は省略しますが)左右の重心をスムーズに移動させることができなくなります。

この症例では、右の烏口腕筋、前鋸筋、内転筋、回内筋の筋機能が低下し、右側の股関節にしっかりと重心をのせることができない状態でした。そのため、立脚時に内転筋も働きづらく、ハムととリングスを必要以上に使うことで脚の安定性を高めていました。

この結果により、ハムストリングスに張りが生じていました。そして、第4肋骨の柔軟性と改善することで、この張りをとることができました。

ここで説明したことは、ハムストリングスの肉離れを起こした人やハムストリングスの怪我の予防にも関係する知識になります。

まとめ

肋骨との関係性
  • 肋骨と筋肉は密接な関係がある。
  • 左右を比べて片方で力が入らないときは、筋力低下ではなく筋機能低下を疑ったほうがいい。
  • ハムストリングスの怪我は、第4肋骨の柔軟性の低下から起こる可能性もある。

以上のことから、肋骨が筋肉に密接に関係していて、怪我の予防にもとても重要であるがことがわかっていただけたでしょうか。

これらのことはほとんど、教科書などにも書かれていることがないため正直いうとエビデンスベースではないです。

経験則から言えることではありますが、肋骨の柔軟性を上げることでこのような下肢の問題も解決することがよくあります。

なかなかパフォーマンスが上がらない方や怪我をしやすい方なども胸郭の柔軟性に着目して、筋機能の低下を防ぎ身体の改善を試みてください。