#21 アスリートがするべき腸腰筋のためのトレーニング法

ALL PRACTICAL TRAINING

アスリート

『腸腰筋が大事なのはわかっているけど、どのようにトレーニングすれば良いの?』、『腸腰筋の作用は股関節屈曲だから股関節の屈曲運動のトレーニングをすれば鍛えられるんでしょ?』、『股関節の屈曲のトレーニングした後は腿の外側がよく疲れるんだけど、これで腸腰筋鍛えられてる?』

こういった疑問はアスリートの中でもよく聞かれることです。

正直に答えると、股関節の屈曲運動をしただけでは腸腰筋は鍛えられるどころか、代償的に大腿直筋や大腿筋膜張筋だけが主に鍛えられているケースが多く存在します。そして、腸腰筋はお腹の深部にある筋肉なので収縮が感じづらく、上記のような代償を起こしてしまいガチです。

さらにアスリートにとって腸腰筋が使えているかで良いパフォーマンスができるかどうかを左右する一つの要因になりえます。また、腸腰筋が使えていないことで代償的に上記の筋肉や他のアウター筋を使ってしまい怪我につながることもスポーツをしている人の間ではよく起こることです。

このような代償を起こさず腸腰筋を確実に使ってトレーニングできるようにするためには、腸腰筋を使いやすい身体を手に入れる必要があります。この身体を手に入れることができれば、股関節の屈曲をしたときにしっかりと腸腰筋の収縮を感じることができ、他のアウター筋で代償することはなくなります。

このような疑問を解決するために、本記事では腸腰筋を使いやすい身体を手に入れる方法として、アスリートがするべき腸腰筋のためのトレーニング法を解説していきます。

目次

  1. アスリートがするべき腸腰筋のためのトレーニング法
    ・胸郭の柔軟性の向上のためのトレーニング
    ・股関節の捉えの向上のためのトレーニング
  2. 足上げをして腸腰筋が使えているかをチェックする
  3. まとめ

1.アスリートがするべき腸腰筋のためのトレーニング法

アスリートがするべき腸腰筋のためのトレーニング法と聞いて腸腰筋を鍛えるトレーニング法を期待している人もいるかもしれません。しかし、腸腰筋は腸腰筋だけを狙って鍛えることよりも、どんな動きでも腸腰筋を主動にして働かせる身体を手に入れたほうが、結果的に腸腰筋が発達しやすくなります。

これは、僕自身が自分の体で体現していることでもあり、スポーツトレーナーとしてアスリートを指導していく中でも確信していることです。そのため、どんな動きでも腸腰筋を主動にして働かせる身体を手に入れることがとても重要であって、そのためのトレーニングをパフォーマンスアップや怪我のリスクを下げたいアスリートはする必要があります。

では、具体的にどのようなトレーニングが必要なのかというと、たくさんの要素がありますが、特に大事なものとして【胸郭の柔軟性】と【股関節の捉え】のトレーニングが挙げられます。

捕捉:腸腰筋の解剖や作用について詳しく知りたい人、またはなぜ腸腰筋を促通するために胸郭の柔軟性と股関節の捉えが重要なのかについて知りたい人は、こちらをお読みください。

それでは胸郭の柔軟性と股関節の捉えのトレーニングをするときの意識するポイントと様々な動画を用いてトレーニングの方法を紹介していきます。

・胸郭の柔軟性の向上のためのトレーニング

意識するポイント

胸郭の柔軟性を向上させるためのトレーニングは、胸郭の動きの基本である『反る・曲げる、縮める・伸ばす、捻る』の動きを含めた柔軟体操であったり、ヨガのエクササイズなどありますが、意識するポイントを持ててないとただ単に四肢の筋肉をストレッチされただけとか、胸郭を少し動かせただけで胸郭自体の柔軟性が向上することはできません。

よく有りがちなのは、胸郭を動かしているつもりでも腰を中心で動かしてしまっていたりすることです。他にも胸郭を中心に動かせていても胸郭の周りの筋肉を使って動かし、腹部と胸郭の深部が全く動いていない状態もよく見かけます。

このようなこと起きないための意識するポイントとして大事なのは、胸骨(胸の真ん中)に意識を持ち、腹部と胸郭の深部が引っ張られるような感覚で、胸郭周りの筋肉に力を入れずに胸郭を『反る・曲げる、縮める・伸ばす、捻る』の方向に動かすことです。

しかし、この感覚は胸郭の柔軟性がある程度ないと掴めないものでもあるので、わからないうちは試行錯誤しながら胸郭の柔軟性を上げるトレーニングをする必要があります。

参考として胸郭の動きに関して書いた記事もこちらに載せておきます。

実際のトレーニング

実際の胸郭の柔軟性の向上に有効なトレーニングをいくつか紹介していきます。

胸郭の捻れの可動域を向上させるトレーニングです。初心者の人にはとっつきやすく効果を感じられやすいのでお勧めです。捻る時に胸をしっかりと反る意識を持ってやることや置いている手の位置を変えてみてください。

ヨガのエクササイズでもあるキャットアンドカウです。この動画のキャットアンドカウは胸郭がしっかり深部から動いていないので、実は悪い例になります。胸郭の深部から動くようにやってみてください。

こちらは芋虫のように丸める反る動きと手の動きを連動させて肩甲骨の動きも良くするエクササイズになります。重心力のトレーニングから参考にさせてもらったエクササイズになります。

重心力のトレーニングで、丸める・反る、伸ばす・縮める、捻るを複合させたトレーニングになります。トレーニングの中でも一番キツく効果が高いです。行った後は深部から活性化された感覚を持つことができます。

ここからは難易度が高いハンドスタンドのトレーニングになります。
腕から体幹までのつながりをしっかりと持つことで、胸郭の柔軟性の向上効果も出てきます。つながりがないと身体を逆に固めてしまう恐れもあるので慎重にやる必要があります。

こちらはクロウのポーズと言って、肘に膝をのせて腕で支えるヨガのポーズです。

肘をお腹に当てたプランシェである程度の胸郭の柔軟性と腕から体幹へのつながりがないとできないポーズになります。クロウのポーズよりも難易度が上がります。

以上が胸郭の柔軟性の向上のためのトレーニングですが、他にもたくさんのトレーニングがありますので自分でいろいろ試しながら様々なトレーニングをやってみてください。

・股関節の捉えの向上のためのトレーニング

意識するポイント

股関節の捉えのトレーニングをする上で意識するポイントは、骨盤をやや前傾させてお尻の筋肉である大臀筋や中臀筋、そして内腿の内転筋群がよく使われるポジションを取ることがとても大切です。また、股関節に上半身を乗せるイメージで胸郭を操作することも重要です。

この股関節の捉えの感覚は、胸郭や股関節の柔軟性がなさすぎると感じられないので、難しい人は上記の胸郭の柔軟性のトレーニングや股関節自体の柔軟性のトレーニングを先にすると良いかもしれません。

こちらに参考として股関節の捉えに関して書いた記事を載せておきます。

実際のトレーニング

それでは実際に股関節の捉えのトレーニング法を紹介していきます。

このようにランジ姿勢で前足の方向に身体を捻じていくと、上半身が前足の方の股関節に乗る感覚を養うことができます。

また、このように上半身を捻った状態で片足スクワットでも上半身が股関節に乗る感覚がわかりやすいかもしれません。

こちらは重心力トレーニングからで、バランスボードを乗ってのトレーニングになります。しっかりと股関節に重心が乗った姿勢をとりバランスボードに乗ってバランスを取ることで股関節深部の筋肉が活性化されてきます。

ここからは股関節の柔軟性が低い人のためのトレーニングです。

お尻の筋肉大臀筋に力が入りづらい人は腿の前の大腿四頭筋が凝り固まっていて結果として大臀筋が収縮しづらい状態になっている可能性があります。その時にこのようなストレッチをします。

また、股関節の細かな筋肉が使われていないことで股関節の可動域が低下している可能性もあるので、下の動画のように足をできるだけ大きく何度も回していくと股関節周りの小さい筋肉が活性化して可動域広がっていきます。

最後にスクワットよりも少しワイドに足幅を取ってもらい、できるだけ深くしゃがんでいくトレーニングです。ヨガのポーズの一つでもあります。

2.足上げをして腸腰筋が使えているかをチェックする

足上げをして腸腰筋が使えているかをチェックする
腸腰筋がちゃんと使えているかというチェック法として簡単にできるのが、片足上げをして腸腰筋が使えているかをチェックする方法です。

今まで紹介した胸郭の柔軟性と股関節の捉えの2つのトレーニングを続けていくとお腹の深部が引っ張られるような感覚がトレーニングの動きの中で生まれてきます。このお腹の深部の感覚がある同じ部位で足を上げられるかということをチェックします。これは寝ている姿勢でも立っている姿勢でも両方意識してできるようになるとなお良いです。

よく有りがちな間違いとしては、腿の外側(大腿直筋や大腿筋膜張筋)を使って足を持ち上げてしまうことです。

この足上げで腸腰筋がしっかり使えるようになると歩いたり、走ったりする時でも腸腰筋優位で歩くことが可能になります。

以前ツイートで


このようなことも書きましたが、まさに腸腰筋歩行ができるようになります。

3.まとめ

アスリートがするべき腸腰筋のためのトレーニング法として、胸郭の柔軟性の向上と股関節の捉えの向上のトレーニング法、そして意識するポイントを書かせていただきました。

このようなトレーニングで腸腰筋の感覚を手に入れることはウェイトトレーニングなどの収縮が感じやすい筋肉を鍛える訳ではないので難しいトレーニングではあるかと思います。また、わからなくて断念する人も中にはいるとは思いますが、自分の体と見つめ合って自分の体を知ることは身体を自分の思い通りに操作するためには必要なことでもあります。継続して行っていけば、絶対にわかる感覚でもあるので、諦めずにチャレンジしてみてください。

自分はこのお腹の深部の感覚はこのようなトレーニングを始めて1.2ヶ月で掴むことができましたし、約一年たった今でも新たな気づきがあります。この自分の体の気づきを楽しみながら日々行なってみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。