#104 腸腰筋が原因で起こる痛みの部位・症状とは
腰が痛かったり、股関節の付け根が痛く、いくらその部位をマッサージしても痛みが良くなったりしないことを経験したことがある人はいるのではないでしょうか。
もしかしたら、その痛みの原因は、腰や股関節周りの筋肉にあるのではなく、腸腰筋という筋肉にあると知ったら、それがなぜ起こるのかということを知りたくないですか。
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腸腰筋とはどこにあるのか、そして作用はなんなのかと実際によくわからない人のために本記事では腸腰筋について書いています。すでに腸腰筋について知っているよって人でも、教科書に載っていない情報も書かせてもらいましたのでぜひ読んでみてください。
本記事では、この腸腰筋が原因で起こる痛みの部位・症状についてお伝えしていきます。
目次
- 腸腰筋が原因で起こる痛みの部位・症状とは
- 腸腰筋に硬結ができる原因について
- 腸腰筋の硬結の取り方
- まとめ
腸腰筋が原因で起こる痛みの部位・症状とは
腸腰筋が原因で出る痛みの症状というものがあります。これはトリーガーポイントという理論から来ているもので、腸腰筋に硬結(コリのような物)ができることで痛みが誘発されるとされています。また、痛みの部位はその硬結とは違うある特定の部位に出ることがよく観察されています。
腸腰筋の硬結による痛みの部位
腸腰筋の硬結による痛みの部位は一般的には以下の写真の場所になります。

痛みが出る場所は主に2箇所で、赤い印がある腰の部分と股関節の付け根の部分になります。そのため、腰痛や股関節前部、鼠径部、大腿部前部に痛みを感じる場合は腸腰筋の硬結が原因で起こっている痛みかもしれないと考えることもできます。
しかしこのような痛みの部位が腸腰筋の硬結が原因でない場合もあります。そういった場合には、腰椎椎間板病理学、血腫、滑液包炎、大腿骨頭蓋インピンジメント、骨盤痛、悪性腫瘍、膿瘍、スポーツヘルニア、神経閉塞などさまざまな原因によって同様の痛みを起こす場合もあるので、初めはドクターなどの専門家によって診断していただくことをお勧めはします。
腸腰筋の硬結による痛みの症状
片方の腸腰筋だけに硬結ができた場合の腰痛は、痛みの部位を教えてもらう時に腰部の縦方向に痛みがあることを示すことが多くあります。また、両方の腸腰筋に硬結がある場合は、片方に硬結ができた時とは違く、腰部の横方向に痛みを訴えることが多くあります。腸腰筋の硬結が原因の腰痛の多くは、立っている時に特に痛いですが、横になっていてもしつこく背中の痛みとして現れることがあります。
腰痛以外にも頻繁に起こる痛みが太ももの前面の痛みです。この痛みの場合、重力に反した股関節の屈曲の動きをすることで、太ももの前面の痛みと腰痛を引き起こしますが、重力がかかりにくい横になった姿勢や膝と股関節を90度曲げて台に置いた姿勢などをすると痛みがなく快適な姿勢になることがあります。また、深い椅子から立ち上がるのが難しい可能性が高く、腹筋運動をすることで痛みが誘発されることもあります。
便秘がある人では、硬い糞便の塊が硬結を圧迫することによって引き起こされる痛みを経験することがあります。硬結によって肥大した腸腰筋は、隣接する大腸を圧迫する可能性があり、大腸の関連痛が起こることもあります。
腸腰筋に硬結ができる原因について
腸腰筋に限らず硬結ができる原因については大きく分けて2つあると考えています。
1つ目は筋肉を使いすぎてしまうことで、筋肉自体が短縮してしまい硬結ができてしまいます。このような場合は筋肉の起止と停止同士がお互いに近づくような動きでたくさんの負荷がかかった場合に起こると考えています。一般的にこの短縮位によって起こる硬結の場合は、指圧や鍼灸師の針でのアプローチなどによってその硬結が取れて筋肉も正常な長さに戻り、痛みが簡単に消失することが多いです。
2つ目はこれも筋肉の使いすぎによって起こる硬結ですが1つ目と違うところは筋肉が伸ばされることでできる硬結の種類になります。これはどういうことかと言うと筋肉が伸ばされながら使われている状態で起こることを言います。例えば少しお辞儀を前にしたときに背中が伸ばされながら筋肉を使っている状態になります。この姿勢を長時間続けることで筋肉に対して伸長ストレスがかかり、長時間のストレスによりその部位に硬結ができてくると考えられます。この場合は姿勢の崩れなどによって起こることが多くそのストレス自体をとってあげないといくらそこをほぐしても治ることができません。そのため指圧や針のアプローチでは一時的に良くなることがあってもまた症状として戻ってしまう可能性があります。
腸腰筋の硬結の取り方
腸腰筋にできた硬結の取り方については先ほどお伝えした短縮ストレスによって起こる硬結と伸長ストレスによって起こる硬結とでは取り方が違います。
短縮ストレスによって起こる硬結では腸腰筋に対して直接指圧の手技を行います。またはストレッチなどによってその短縮された筋肉をしっかりと伸ばしていくようにしていきます。もしくはそこがなぜ短縮しているのかを考える必要があります。一つの考えとして、その腸腰筋の作用とは反対の作用を持っている筋肉に対して筋の機能が低下しないかどうかをチェックしてその原因を突き詰めていきく方法もあります。例えば腸腰筋の拮抗筋としてはハムストリングスがありますが、このハムストリングスがしっかりと機能しているかを確かめていきます。また場合によっては大臀筋の機能低下が起きている場合もありますし、硬結ができている腸腰筋の反対側の広背筋の機能低下が起きている場合も考えられます。このように腸腰筋の周りの筋肉がどのような状態になっているかをチェックする必要があります。
伸長ストレスによってできた腸腰筋の硬結に対してのアプローチ方法としては、今度は逆に腸腰筋の拮抗筋である筋肉がどこか短縮していないかを確認していきます。また腸腰筋自体の筋収縮の機能が低下している場合があるためそれがなぜ起きているのかをしっかりとチェックしていきます。腸腰筋の筋機能の低下の原因としては筋肉自体の問題とだけがある場合ではないため包括的に内臓の状態やストレスの状態、姿勢の崩れなどもチェックしていく必要があります。またこの腸腰筋に対して伸長ストレスを取り除いてあげるために起止、停止を近づけた短縮になるような姿勢をとってあげることでその筋肉が緩んで硬結も取れていく場合もあります。
以上のようにその硬結部位の筋肉の状態によってアプローチの方法が変わってくるため人それぞれどのような状態になっているかをしっかり確認する必要があります。
まとめ
- 腸腰筋の硬結が原因で出る痛みの部位は腰部、股関節前部、鼠径部、大腿部前部である。
- 腰椎椎間板病理学、血腫、滑液包炎、大腿骨頭蓋インピンジメント、骨盤痛、悪性腫瘍、膿瘍、スポーツヘルニア、神経閉塞など硬結との鑑別が必要である。
- 筋肉自体に短縮ストレスがかかりすぎてしまい硬結ができる場合と、伸長ストレスがかかりすぎてしまい硬結できる場合とがある。
- 短縮ストレスによって起こる硬結には、直接的に指圧、針、ストレッチなどでその筋肉自体を緩めると良くなる。
- 伸長ストレスによってできた腸腰筋の硬結は筋機能を改善することやその筋肉自体を短縮位に持っていく姿勢をすることで良くなることがある。
- 硬結ができたからといって筋肉の状態によって原因が違うため、筋肉の状態をチェックするのが大切である。
以上のように腸腰筋によって起こる痛みについて解説していきました。また、その痛みが起きた場合に実際にどのような視点でその痛みの原因となる硬結をとっていくのかについてもお伝えしていきました。
今回は少し専門的な話になってしまいましたが、アスリートや一般の方でも理解して実践してもらえたら幸いです。
腸腰筋に対してのトレーニング方法はこちら!
アスリートがするべき腸腰筋のためのトレーニング法
腸腰筋を鍛えたいと思ったとしてもただ単に股関節の屈曲をトレーニングすれば良いわけではありません。アスリートがするべき腸腰筋のトレーニング法として、どのようにしてトレーニングをするべきかということを本記事では詳しく解説しています。
参考文献
Travell, Simons Simons’ Myofascial Pain and Dysfunction: The Trigger Point Manual Janet G. Travell, David Simons