#17 腸腰筋ってどこでどんな作用?【特別な促通法も解説】
腸腰筋はスポーツに携わるトレーナーやスポーツ選手であれば一度は聞いたことのある筋肉名の一つではないかと思います。
体の中心部にあり、一番と言っていいほど大事な筋肉とも言えますが、実際に筋肉がどこにあるのか明確にわかっていないのが事実ではないでしょうか。
また、実際のスポーツでは腸腰筋がパフォーマンスにおいて非常に大切な筋肉になります。
今までのツイートでも以下のように腸腰筋に関して話しています。
腸腰筋使った動きがすごい。
— 桑原秀和(Hide. Kuwabara)🇳🇱🇧🇪 (@HiddeKuwabara) November 12, 2020
このロナウジーニョの動きも胴体が非常に柔らかく腸腰筋を主に使った体の使い方をしている一流のアスリートの一人です。
また、腸腰筋がなんらかの原因でうまく使えなくなってしまうと怪我のリスクが増えてしまうことも考えられます。
年齢を重ねるごとに胸郭が硬くなって、腸腰筋を使う割合が減ってくるという仮説はありうると思う。
もちろん、日本だとヨーロッパよりも移動時間が長くなるのでその影響も考えざる終えない。
もともと怪我が少ない選手ではないのだけれども… https://t.co/xSMfMRp5k1— 桑原秀和(Hide. Kuwabara)🇳🇱🇧🇪 (@HiddeKuwabara) December 16, 2020
もちろん怪我は様々な要因が重なって起こることがほとんどです。そのためその要因の一つとして腸腰筋の機能不全も怪我のリスクに与える影響はでかいと考えています。
また、胴体力・重心力トレーニングで指導をされている本のセンセと重心力(胴体力)さんは以下のように腸腰筋に関しても述べていて、重要な筋肉であることがわかります。
けーすけ氏→胴体力は筋力ではなく重力だから。腸腰筋が大事なのはそれが大きい筋肉だからではなくて、骨盤と股関節、大腿骨を動かすことによって、身体を支持する脚足の形が変わって、身体に与えられている位置エネルギーを手先などに伝達するんです。
— 本のセンセと重心力(胴体力) 正しい立ち方は北京原人姿勢から (@honnosense) December 12, 2020
このようなことを踏まえても、腸腰筋は個人的に非常に興味深く色々な可能性を秘めている筋肉の一つであると考えています。
本記事では基本的な解剖学だけではなく、どのようにしたら腸腰筋をうまく使えるようになるのかということもお話しできればと思います。
トレーナーであればある程度の解剖学の知識もありますし、どこにあるかわかるよって思うかもしれません。しかし、そのような方でも基礎から見直して新たに気付くこともあるかもしれませんのでぜひ読んでみてください。
目次
- 腸腰筋ってどこにある?(解剖学)
- 腸腰筋はどんな作用?
- 学術的に言われていない腸腰筋の促通法とは
- まとめ
腸腰筋ってどこにある?(解剖学)
腸腰筋は、小腰筋、大腰筋、腸骨筋の3つの筋肉から構成されています。そのためこの3つの筋肉の総称として腸腰筋と言われているのです。
腸腰筋のこの3つの筋肉がどこにあるのかを写真を用いてみていきましょう。
小腰筋
腸腰筋の中でも一番手前に位置する細長い筋肉で、欠如する人もいます。
起始・停止/ 神経支配
T12-L01の椎間板と椎体外側から始まり、腸骨筋膜と腸恥隆起に付着する。 L01の腰神経叢が小腰筋を支配している。
大腰筋
大腰筋はこの3つの中でも一番大きな筋肉でとても大事な役割を果します。
起始・停止/ 神経支配
L1-L5の腰椎の横突起と椎体、そしてT12-L5の椎間繊維軟骨から始まり、大腿骨の小転子に付着する。腰神経叢の筋枝(L1-L4)が大腰筋を支配している。
腸骨筋
骨盤の安定性にも関与しているとても大事な筋肉です。
起始・停止/ 神経支配
腸骨の内面である腸骨窩の上2/3から始まり、大腰筋と一緒になり筋裂孔を通って、大腿骨の小転子に付着する。大腿神経(L2-L3)が腸骨筋を支配している。
腸腰筋はどんな作用?
腸腰筋の基本的な作用は股関節屈曲です。
そして足が地面についた状態であれば大腰筋は腰椎の前弯、腸骨筋は骨盤の前傾に作用します。
これらは教科書に載っている作用です。
しかし、スポーツ動作などの臨床においては体軸の形成にとても関係していると言われています。
体軸の形成をするためには、主に股関節の捉えと胸郭の柔軟性が必要になります。これを解剖学的に考えるとしっくりくると思います。
腸腰筋が収縮することで上記で説明した起始部である腰椎・腸骨と停止部である大腿骨の小転子が安定します。この安定性が確保できることにより、胸郭が自由に大きく動くことができるようになります(胸郭の柔軟性)。そして胸郭の重心が股関節の中心部にしっかりと乗ること(股関節の捉え)で体軸が形成されます。
この体軸が形成されることで、腸腰筋のようなより深部に近い筋肉が働くことになり、体の軸がブレにくい動作が可能になります。
他にも足や腕の連動の要素も体軸には関係しますが、ここでは詳しくは述べません。今後別の記事で書いていきたいとは思っています。
学術的に言われていない腸腰筋の促通法
一般的に言われていない腸腰筋の促通法を紹介します。
教科書的には、股関節の屈曲の動きを使って腸腰筋を鍛える方法を述べられることが多いです。しかし、体軸の形成の話をした通り、腸腰筋が股関節の屈曲作用だけではありません。
再度、言いますが腸腰筋は体軸を形成するために必要な筋肉で、体軸を形成するためには股関節の捉えと胸郭の柔軟性が大切です。そして、腸腰筋を促通するためにはこの股関節の捉えと胸郭の柔軟性の2つの要素の精度を高める必要があります。つまり、しっかりと股関節を捉えられているかという感覚を繰り返し練習すること、そしていろんな方向への胸郭の柔軟性を向上させることで腸腰筋を促通することができます。
初めのうちは腸腰筋を意識することは無理ですが、続けていくうちにお腹の深部が引っ張られるような感じがしたり、収縮しているのがわかってきます。これが感じられるようになってくれば、腸腰筋がうまく促通できているので、逆を言えば、股関節の捉えと胸郭の柔軟性が向上したとも言えます。
人によっては、腸腰筋の収縮を感じることはできないというアスリートの方もいますが、それは単にその人が腸腰筋をうまく使いこなせてないだけであって、本来であれば鳩尾から足を上げた時などに腸腰筋の収縮を感じられるものです。
ここの領域まで達するのには本当に自分の体に意識を向けて、日々鍛錬する必要がありますが、一度感覚を掴んでしまえば体を非常に楽に動かすことが可能になります。また、アスリートにおいても身体の使い方として一流になるためには必要な能力になります。
腸腰筋のまとめ
今回は、腸腰筋の解剖の話と腸腰筋の作用、そして促通法を話してきました。
腸腰筋は、主に小腰筋、大腰筋、腸骨筋の3つの筋肉から構成され、一般的な作用としては股関節の屈曲です。
しかし、一番大事な作用としては体軸の形成になります。そして体軸の形成を促すには、股関節の捉えと胸郭の柔軟性の要素が必要不可欠です。
このようなことはなかなか教科書などで述べられることがないので、本記事で簡単に説明させていただきました。
パフォーマンスの向上や治療のためにもぜひ参考にしてみてください。
胸郭の柔軟性と股関節の捉えの参考記事としてこちらも載せておきます。
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