#150 トレーニングにおけるピリオダイゼーションについて

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1年を通して、トレーニングを見た場合にアスリートのトレーニング量と強度は時期ごとに変化していきます。ほとんどの高レベルのアスリートは、体が安全にコンディショニングに適応できるようにするために、ピリオダイゼーションとして知られるトレーニング原理を使用しています。

本記事では、このピリオダイゼーションについて、基礎となる部分を紹介していきます。

目次

  • ピリオダイゼーションとは
  • 3つのフェーズ
  • 3つのモデル
  • メリット・デメリット
  • 一般的な適応方法
  • まとめ

ピリオダイゼーションとは

ピリオダイゼーションのトレーニング計画は、トレーニングの全体の期間から特定の期間に分けてそれぞれの目的に沿うようにトレーニング変数を変化させ、オーバートレーニングを防ぎ、パフォーマンスを向上させることを目的としています。

これらの目的を達成するために、期間、負荷、またはボリュームの調整が特定の期間にわたって計画されます。

アスリートの目標は、1年のさまざまな時期にトレーニングの強度または量を組み合わせて、アスリートが特定の試合などの時期にパフォーマンスがピークに達するようにすることです。

ピリオダイゼーションは、パワーリフティングやオリンピックの重量挙げなどのうウェイト競技やランニングやサイクリングなどの持久力に関連する競技に適用されています。最近では、サッカーや柔道などの競技にも取り入れられています。

ピリオダイゼーションの3つのフェーズ

ピリオダイゼーションのサイクルでは、通常、長期(マクロサイクル)、中期(メゾサイクル)、短期(ミクロサイクル)の3つのフェーズが使用されます。

長期(マクロサイクル)
マクロサイクルは通常であれば、1年単位の期間で計画を立てるサイクルのなります。オリンピックに出場するようなアスリートの場合は、4年などのより長い期間で計画を立てる場合もあります。

中期(メゾサイクル)
メソサイクルは、中期的な計画で約4〜6週間の周期で計画を立てる傾向にあります。通常、3週間の負荷をかけた強度の高いトレーニングと1週間の回復を含めた低強度トレーニングを組み合わせて計画されることがあります。

短期(ミクロサイクル)
ミクロサイクルは短期的な計画で、1週間単位で計画を立てられる傾向にあります。そしてトレーニングの強度は曜日ごとに異なるように設定されている場合があります。

一般的な3つのピリオダイゼーションモデル

ピリオダイゼーションの一般的なモデルには、主に3つのタイプがあります。

線形ピリオダイゼーション
通常は1〜4か月ごとにわたって負荷とボリュームを変更されます。各中間サイクルには、強度が徐々に増加するいくつかの週があり、その後、軽い負荷と強度での回復のための週があります。

非線形ピリオダイゼーション
負荷とボリュームは、毎日または毎週ごとでより頻繁に変更されます。通常、負荷は増加しますが、ボリュームは減少します。このタイプのピリオダイゼーションは、トライアスロンなど競技中に複数のタイプの運動が行われるスポーツに適しているとされています。

逆周ピリオダイゼーション
これは非線形ピリオダイゼーションと同じの形式ですが、ボリュームが増加する一方で負荷が減少する点が異なります。このタイプのピリオダイゼーションら長距離ランナーなどの持久力のスポーツに適切であると考えられています。

複数の研究で、線形ピリオダイゼーションと非線形ピリオダイゼーション間のトレーニング効果のの有意差は見られず、両方で同様の強度の向上がみられたことが報告されています。

ピリオダイゼーションの歴史

ピリオダイゼーションは、ハンス・セリエ博士によって開発されたストレス理論の中心をなす概念である全身適応症候群から発展してものです。ストレスに対する生物の反応は、警告反応期、抵抗期、疲憊期という予測可能な3つの反応を辿ると述べられています。

このピリオダイゼーションのコンセプトは後に、パフォーマンスを最適化し、ストレスと疲労を管理し、怪我やオーバートレーニングのリスクを減らして最適なパフォーマンスを実現するために、適していることが言われています。

メリット・デメリット

メリット

トレーニングにおいて、目標に向かって取り組むとき、ほとんどの人は中程度の強度でのみ運動することになり、高い強度に適応することも、低い強度で回復することもあまり計画として立てないことがあります。その結果、プラトーのようなパフォーマンスの向上しない状態が生じます。

一般的なフィットネスやプロではないスポーツ選手にとって、ピリオダイゼーションによるトレーニング計画は、トレーニングの負荷量を変化させ、怪我のリスクを減らしながら、パフォーマンスの向上が停滞するのを防ぐ優れた方法です。

アスリートにとってのもう1つの利点、特に線形ピリオダイゼーションは、メゾサイクルの終わりに負荷を減らすということです。これにより、トレーニング期間中の怪我のリスクを減らすことができます。

デメリット

ピリオダイゼーションの難しさとして、オーバートレーニングを回避するための強度と期間の計画があります。さらに、トレーニングシーズン中に毎試合ごとにパフォーマンスをピークに持っていくこと自体が困難なことでもあります(1TrustedSource)。

ピリオダイゼーションは、過度の過負荷を回避するためのトレーニングの物理的なストレスを調節できます。ただし、競技のトレーニングで発生する可能性のある心理的ストレスは考慮されていません。

高い感情的ストレスは、アスリートの怪我のリスクの増加と相関するとされています。

一般的な適応方法

筋力トレーニング

3週間の間、週ごとに重りを持ち上げる回数を減らし、持ち上げる負荷を徐々に増やしていくことを3週間、そして、軽い負荷のボリュームが少ないトレーニングで回復を図る1週間を合わせた合計4週間のプログラム(メゾサイクル)を実行できます。

たとえば、最初の週に3セットで8〜10回の繰り返しで100kgのスクワットをします。次に、2週目に3〜4セットで4〜6回の繰り返しで120kgで行います。最後に、3週目には、3〜6セットの2〜4回の繰り返しで135kgで行います。4週目の最終週は、負荷低下させるため、3セットの1回の繰り返しで135kgで行うようにします。

この例では、トレーニングのボリュームは変更されていますが、負荷は週ごとに増加しています。

一般的な適応

特定の目標をまず定めてから、その目標から逆算してピリオダイゼーションの計画を立てていきます。

次に、全体の時間を均等に分割し(メゾサイクル)、体力や持久力などの特定の身体的属性のためのトレーニング計画を分割した期間ごとに立てていきます。理想的には、メゾサイクルごとにトレーニングの目標を明確にしていくことです。

重要な部分は、より低い強度またはボリュームで行う回復を目的とした週をプログラムに組み込むことです。

ピリオダイゼーションは、より良いアスリートになりたい、またはフィットネスを向上させたい多くの人々にとって有効なトレーニング計画です。ただし、シーズン中に頻繁に試合があるようなアスリートにとっては、通常のピリオダイゼーションではなくそのスポーツに特化したピリオダイゼーションが必要になることがあります。

まとめ

  • ピリオダイゼーションは、一般的な全身適応症候群と呼ばれる概念から発展しました。アスリートが競技のパフォーマンスを最大化するために考案されましたが、一般的なコンディショニングにも適用できます。
  • ピリオダイゼーションは、ウェイトリフティング、サイクリング、ランニングなど、さまざまな競技に役立ちます。
  • ピリオダイゼーションは、オーバートレーニングや怪我のリスクを減らし、筋力、スピード、持久力を最大化します。また、燃え尽き症候群の予防にもつながります。
  • ピリオダイゼーションでは、オーバートレーニングを完璧に回避することは難しいとされています。また、怪我のリスクを高める心理的ストレスを考慮できていないことが示唆されています。
  • 通常のピリオダイゼーションは、シーズン中に頻繁に試合があるようなスポーツには、役に立たない場合があります。そのため、そのスポーツに特有のピリオダイゼーションを学ぶ必要があります。
  • ピリオダイゼーションの計画の立て方として、特定の目標を設定し、そこから逆算して、メゾサイクルに分割し、サイクルごとに目標に焦点を当てていきます。

以上のように、ピリオダイゼーションの計画は、アスリートが最高のパフォーマンスを得るためや怪我のリスクを減らし、トレーニング効果が少なくなることを防ぐことを目的に立てられます。

スポーツごとにピリオダイゼーションの計画の立て方は、変わるので自分の行っているスポーツに適したピリオダイゼーションにそってトレーニングを行うことが大切です。

参考文献

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