#156【骨盤を立てる】とはどういう意味か
トップアスリートの選手を見ているとほとんどの場合、骨盤がしっかりと立っていてお尻がプリっとしている姿勢をしています。この姿勢は特に黒人選手に多く見られる姿勢ではありますが、競技レベルが上がるにつれてどの人種の人にとっても見られる姿勢になります。
しかし、実際にこのような姿勢をできるようになる事についてはあまり一般的には語られる事はありません。そのため、今回はトップアスリートが自然とできている姿勢の1つのポイントである骨盤を立てると言う事について解説していきたいと思います。
目次
- 骨盤を立てる
•構造
•動き
•なぜ立てるといいのか - 骨盤の解剖
- 骨盤を立てる意識をする時の注意点
- まとめ
1.骨盤を立てる

構造
トレーニングをするときに【骨盤を立てる】という表現をすることがあります。もし、聞いたことがない人はどういうことなのかとチンプンカンプンになってしまうとは思います。この【骨盤を立てる】ことは、運動の効率やスポーツパフォーマンスを考えた場合にとても重要になってくることなので、今回は【骨盤を立てる】とはどういうことなのかについて以下、解説していきます。
まずは、【骨盤を立てる】について構造的な話です。後ほど、詳しく骨盤の解剖のことは触れていきます。骨盤は、左右の腸骨と仙骨からなる骨になります。骨盤の体全体との位置関係から考えるとわかりますが、骨盤は上半身と下半身を繋ぐとても大切な部位になります。そのため、上と下のつなぎ目でもある骨盤は、構造上、安定することがとても大切になります。そして、骨盤を安定させるために【骨盤を立てる】というのがキーポイントになってくるのです。
動き
具体的に、【骨盤を立てる】とはどういう動きなのでしょうか。“立てる”という言葉は、横になっている物体があるから、使われる言葉でもあります。例えば、本が机の上に置かれている場合は、本が横になっている状態のことですが、その本を本棚に入れるときは本を立てるという状態にさせます。
骨盤も本と一緒で、人の体を横にしている状態の時の骨盤の位置が横になっている状態を表します。骨盤に対してはこの状態を【骨盤が寝る】と表現することもあります。そして、反対に【骨盤が立つ】とは、その横になっている状態から、人がいい姿勢で立位をしているときに【骨盤が立つ】状態であると言えます。これらの説明はどのような骨盤の位置が“立つ”と“寝る”を表現するのかわかりやすくするためです。しかし、厳密には、骨盤は人が横になってる時でも立てることができるし、立位の時でも寝ることができます。
これはどういうことかというと、以下の写真のような座位姿勢で考えてもらうとわかりやすくなります。座位姿勢で、骨盤を立てるとは、骨盤が前傾(前に倒れる)することで、骨盤が寝るとは、骨盤が後傾(後ろに倒れる)ことを言います。つまり、座位姿勢では骨盤を立たせると良い姿勢になり、骨盤を寝かせると猫背姿勢になります。この違いが骨盤を立てると寝るの違いになりますが、実は立位姿勢や横になった姿勢でも骨盤を前、後傾させることで、骨盤を立てたり、寝たりさせることができます。
なぜ骨盤を立つといいのか
骨盤を立つと言い理由として、骨盤まわりの筋肉全体がしっかりと働くようになるからです。特に姿勢が崩れるときに使われにくくなる大腰筋、腸骨筋、多裂筋、内転筋群、臀筋群が骨盤が立つとしっかりと機能するようになります。運動効率やスポーツパフォーマンスにおいても股関節をしっかりと使えるようになる事はとても重要になります。多くのトップアスリートは骨盤がしっかり立っており、股関節を中心に下肢を使って体の動きを作っています。
反対に骨盤が寝ると太ももの前や外側の筋肉を中心に使うような動きをしてしまいます。この太ももの前や外側の筋肉は主に2関節筋と呼ばれる筋肉でもあります。これらの筋肉がよく使われるようになってしまうと体は偏った動きをしてしまい膝に負担がかかったり股関節でも鼠蹊部に痛みを抱えてしまったりする場合があります。よく怪我をするような選手は、ほとんどの場合骨盤がしっかりと立っておらず、寝てしまっているため体の負担を増やしてしまっています。
以上の2つから、骨盤が立つことが大切な理由になります。
» 参考:腸腰筋ってどこでどんな作用?【特別な促通法も解説】
骨盤の解剖
骨盤を左右の寛骨とその間の仙骨から構成されており、上は腰椎、下は股関節と関節で連結されています。骨盤は器上の形をしており骨盤内に直腸、子宮、膀胱、前立腺などの重要な臓器が収納されています。骨盤が後傾し、上のほうの寛骨が外側に開いてしまうと骨盤は安定性を失い、内臓が下のほうに下がり、骨盤まわりの筋肉は緊張を高めてしまいます。そのため、骨盤がしっかりと立つことで内臓の機能や骨盤周りの安定性に良い影響を与えることになります。
骨盤の安定化に重要な筋肉を以下に紹介します。
腸骨筋
多裂筋
内転筋群
臀筋群
外旋六筋
骨盤を立てる意識をする時の注意点
見よう見まねで骨盤を立てるようにしてしまうと、多くの場合間違ったやり方で腰や股関節を痛めてしまうことがあります。骨盤を立てる意識をするときの注意点として大切な3つのポイントを以下に紹介してきます。
腰を反らない
骨盤を立てようとすると、骨盤の柔軟性がない人は腰をするような動きをして骨盤を立ててしまいます。ここはとても難しい点なのですが骨盤を前傾させようとするとうまくできない人はどうしても腰の筋肉に力が入ってしまいます。この場合は、腰の筋肉である脊柱起立筋が収縮し緊張を高めた状態で骨盤の前傾をキープすることになります。この姿勢で長くいると、腰痛になったり股関節の可動域が少なくなっていき様々な体の箇所に問題を抱えることになってしまいます。そのため骨盤を立てるときには、腰の筋肉は緊張せずリラックスした状態であることがとても大切になります。
仙骨に意識を向ける
骨盤を前傾させるときに腰の筋肉である脊柱起立筋をリラックスさせるためにはこの仙骨への意識がとても大切になります。仙骨とは腰の下の位置にあり、腰をそらすときの筋肉より下で、骨盤に近い所です。この仙骨の意識とは仙骨の近くに位置する多裂筋と言う筋肉をしっかりと働かせることにもつながります。仙骨の意識を持つためには、股関節をしっかり使えていることが大切であるため、股関節の捉えやヒップヒンジなどの練習が必要になります。そして股関節がしっかり使えるようになってから、胸郭の伸展方向の柔軟性や肩を下げるための前鋸筋や広背筋をしっかりと使えるようになってくると仙骨に対して意識が高まってきます。
» 参考:【仙骨とはどこ? 仙骨の意識が高まることでの体幹への影響】を解説します
» 参考:”股関節の捉え”と”ヒップヒンジ”の違いを解説します
胸骨を持ち上げる
頬骨を持ち上げることとしては、先ほども述べたように胸郭の伸展方向の柔軟性と肩を下げるための前挙筋や広背筋をしっかりと機能させることがとても重要になります。これらのことが出来るようになることで胸骨を自由自在に意識的に動かすことができ、自然と胸骨を持ち上げられるようになります。胸骨をしっかりと持ち上げられるようになると胸を反った時に腰が反らなくなり、冒頭で述べたような腰の負担も減ってくることにつながります。
まとめ
骨盤を立てることとは、トップアスリートの間では普通にできていることです。反対に言えば骨盤を立てることができないと、そのような高いレベルでの競技参加をしても体がついてこない可能性が出てきてしまいます。
この骨盤を立てると言う事は、腰を反るいうこととは違い、仙骨に意識を向けて胸骨を持ち上げることでできるようになります。これができるようになるためには、股関節の捉えの精度を高め、胸郭の柔軟性を向上させ、肩を下げるための筋肉である広背筋などをしっかりと機能させられるようにすることが大切になります。
しっかりとした良い姿勢で質の高いトレーニングを行える事がパフォーマンス向上をさせる最も重要なことでもあります。トレーニングが無駄にならないように取り組めるように今回の記事を参考していただけたら幸いです。
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