#70 Mテスト(経絡テスト)を学ぶ

ALL CARE CONDITIONING

Mテスト、別名経絡テストは私が6年前くらいに出会った治療法です。現在ではこのMテスト自体を使って治療することはないですが、身体の基本的な考え方を身につける上で役立った治療法です。

治療法だからといって、運動指導するときとは関係ないとは思っていなく、体の仕組みを知ることが治療及び運動指導のために気づくことがたくさんあります。そのため、Mテストは治療を仕事にする方以外でも運動指導する方やスポーツをしていて体のことを知りたい方にもお勧めできる考え方です。

書籍として

M-Test 経絡と動きでつかむ症候へのアプローチ
【著】向野義人、松本美由季、山下なぎさ(医学書院)


と言うのがあります。

また、治療家のためのオススメの書籍の一つとしても紹介しています。

それではM-Testについてこちらのブログで少し触れていきたいと思います。

目次

  • M-testを知ったきっかけ
  • Mテストの可能性
  • 実際のM-Testの考え方
  • まとめ

M-testを知ったきっかけ

冒頭のも書きましたが、Mテストの存在を知ったのは6年前くらいで理学療法士の先生から教えてもらいました。当時は、どのように治療をしたらより結果か出て患者さんやクライアントさんに還元できるのかと言うことを考えていて、自分のベースとなる治療法というのがありませんでした。
ベースがなかった分、効果のある治療法を探して吸収していこうという考えがあり、このMテストもその一つの治療法となりました。

M-test 創設者の開発のきっかけ

Mテストは、医者である向野義人氏が鍼灸をいかに西洋医学的手段のようなスタンダードな方法でできないかということを模索し、研究に研究を重ねて約30年前に生み出したものと言われています。向野氏は体育学部大学院のスポーツ医学部門の責任者として就任したことがきっかけで、多くのスポーツ選手に関わり、当時足の打撲の治療を針でしているときに関係のない肩の痛みが治ったことからヒントをされています。

Mテストの書籍でも

①局所のわずかな異常でもからだの動きの連鎖に影響し、動きに伴う症状の原因になる。②経絡・経穴を応用するとからだの動きに伴う症状を指標とした診断・治療法を開発できる。この仮説に基づいて他の例を観察しているうちに、ある時、”目から鱗が落ちる”ように、経絡と姿勢やからだの動きをリンクすることで、動きに伴う身体症状を指標とした診断および治療ができることがわかった。

と述べています。

”治療法を新しく生み出すことがいかに難しいことか”、治療をされている方ならわかると思いますが、このような考えでMテストを生み出すことができたことは本当に凄いことだと思います。

M-testの可能性

Mテストは、鍼灸の経絡・経穴を利用して生み出された治療法でもあるためある程度の鍼灸の知識は必要ではありますが、理学療法士のような関節可動域を検査として使う人にとってはとても使いやすい治療法になります。
というのは、各関節の関節可動域やその動きの異常を見つけ出して、どの方向に動かしたときに痛みが出るのかということがわかれば、治療のための仮説を立てることができます。
これはどうしてかというと経絡は上肢・下肢共に6本ずつの線、体の真ん中に2本の線があると考えると分かりやすく、これらの線が各関節の動く方向とリンクさせることができるからです。そして、痛みが出る動きがどの経絡の線と一致するのかをリンクさせて、その経絡上の経穴を法則に従って治療するだけなのです。治療は針でなくても、指圧や他の技術を使ってその経穴を治療することで成果を得ることができるため、鍼灸師の方以外でも使える治療法になります。

ストレッチするときに参考にする

後ほど、詳しい治療法の解説をしますが、この治療法を理解することでスポーツ選手などでストレッチをするときにも役に立つ可能性があります。これはさほどお伝えした理由と一緒で、痛みがでる自分の関節の動きで痛みを取るためにどこをストレッチしたらいいのかという予測がつくようになるからです。
これは自分自身の体を知るという意味でもとても重要なことですし、自己管理ができる選手というのは自分の体の使い方をわかっているため、より高いレベルでプレーできる身体を持ち合わせていていることにもつながります。

実際のM-Testの考え方

実際のM-Testの考え方

動きを分析する

Mテストでは、体の動きを屈曲・伸展・内転・外転・内旋・外旋の6つの基本的な動きを基にした30項目の動作を上げています。

体を横からみた面(矢状面)では屈曲(関節が縮まる方に曲がることを意味する)、伸展(伸びる方に曲がることを意味する)の動きを観察できます。

体を前から見た面(前額面)では、体の中心に向かって動く内転と体の外側に向かって動く外転の動きを観察できます。

体を天井から見た面(水平面)では、内側に捻る内旋、外側に捻る外旋の動きが観察できます。

これらの立体の動きを把握して、どの動きで痛みが出るのかを判断していきます。

経穴の使い方

実際の治療やストレッチ、マッサージの際に知っておくべきものが経穴(ツボ)の位置になります。大体の位置だけでも覚えていると役立つことが多いです。

五行穴

五行穴は、12本の各経絡に5つずつ存在します。すべての経穴が四肢の遠位部に位置します。この五行穴の位置、そして中国医学の五行論の考え方を理解していると、痛みが出ている部位とは違う関節や四肢にその症状の問題を見つけやすくなります。

五要穴

五要穴は、原穴、絡穴、郄穴、募穴、兪穴に分類されます。これらの経穴はこの分類ごとにどのような目的で治療するのかが示されています。例えば、募穴は慢性痛の治療時に、兪穴は急性機のけがに効果的であることが言われていています。ここでは詳しくは書いきませんので、興味ある人は自分で調べてみてください。

基本的には五行穴で動きに関連する経穴を針や指圧で刺激を入れます。そしてその後、五要穴を用いてその症状にあった経穴を選択します。

実際の例

実際にハムストリングスを伸ばすと痛みが出る症例を用いて、実際の治療のときに使う経穴の選択方法を紹介します。

よく理学療法士で使われる可動域のテスト法でSLRテストというのがあります。
このテストでハムストリングスに痛みが出た場合には経絡でいうところの膀胱経と腎経を使ってその経絡自体の治療をします。
選択して効果が出るだろうと考えられる経穴は
五行穴では、復溜(KID-7)、陰谷(KID-10)、束骨(BL-65)です。(症状によってはこの経穴の選択方法は変わる場合があります。)
そして、次に肺経で腎経の治療をするのに、尺沢(LU-5)を使います。

さらに、五要穴を用いてその症状に合わせて経穴を選択していきます。

ここでの説明は実際に私がやっていることでもあり、本書のTテストとは若干違うので、Mテストを学びたい人は書籍でしっかりと学んでみてください。

ハムストリングスの痛みを腕から取る

先ほど述べたように、ハムストリングスの治療で尺沢(LU-5)を使うことがあります。これは腕の親指側に位置し肘の近くにある肺経の経血で、五行論で水の特性になります。そのため理論上はここの経穴(肘の表あたり)を治療することで、ハムストリングスの痛みを軽減させる効果があるということです。

スポーツ選手などの場合でセルフケアをしたい場合は、ヨガのウサギのポーズ(シャシャンカーサナ)で腕の前面をストレッチするようなことをするとハムストリングスの痛みや張りが軽減することもあります。このように痛みや張りとは一見関係ないと思われるところでも効果がせることもあります。これは経絡の考え方から見ると当然のことでもあるとも言えるのです。

まとめ

  • Mテストは学んでおいて損のない治療の考え方
  • 身体の動きから原因を探す方法でもある
  • 経穴を用いて、患部を触らずに治療することができる
  • ハムストリングス痛みや張りを腕のストレッチで改善することができる

Mテストは主に鍼灸師の方が使う治療法の一つではありますが、他の治療家やスポーツ選手などにも役立つことのできる知識であることをお伝えしました。
経絡の考え方は、とっつきにくく分かりにくいですが深く勉強していけば行くほど理解が深まり様々なことに応用が聞くのでお勧めです。