#112 膝蓋大腿疼痛症候群、関節水腫に対する【膝関節】整形外科的テストのまとめ
今まで、膝関節の靭帯そして半月板の損傷に対しての整形外科的テストに関して紹介してきましたが、今回は、膝蓋大腿疼痛症候群の有無、関節水腫の有無について紹介していきます。
膝蓋大腿疼痛症候群、関節水腫についてはわりとスポーツ現場で働いていても経験する症例でもあるので、この症状に対する膝の整形外科的テストはとても重要になります。
膝関節の靭帯損傷と半月板損傷のための整形外科的テストについて
靭帯損傷に対する【膝関節】整形外科的テスト
オランダでスポーツ現場で働き始めてから、フィジオセラピストとして監督や選手から現場で求められることというのがいくつかあります。その内の一つとして、選手が怪我をした時の状態の把握するための整形外科的テストの知識や技術があります…
半月板損傷に対する【膝関節】整形外科的テスト
前回の記事では、膝の靭帯損傷に対する整形外科的テストの紹介をしてきました。 トレーナーとしてスポーツ現場で働いていると、選手が膝を痛めて靭帯を損傷してしまったと経験することは必ずと言っていいほどあると思います。そのため、前回の記事である、膝の靭帯損傷に対する整形外科的テストがとても重要な知識と技術です。
目次
- 膝蓋大腿疼痛症候群(Patellofemoral Syndrome)
– Patellar Apprehension Test
– Moving Patellar Apprehenstion
– TestMcConnell test
– Clarke’s sign - 関節水腫(Hydrops)
– Patellar tap test
– Bulge test - 最後に
膝関節の膝蓋大腿疼痛症候群、関節水腫に対する整形外科的テスト
膝関節の膝蓋大腿疼痛症候群、関節水腫に対する整形外科的テストは、今回紹介する6つのテストです。
膝蓋大腿疼痛症候群に対しては
Moving Patellar
Apprehenstion McConnell test
Clarke’s sign
関節水腫に対しては
Bulge test
になります。
それでは、実際のテスト方法を見ていきましょう!
膝蓋大腿疼痛症候群(Patellofemoral Syndrome)

Patellar Apprehension Test
特異度:88%
テスト方法
患者は仰向けになり、膝は30°屈曲しています。 セラピストは両方の親指を使って膝蓋骨を内側から外側方向に押し、膝蓋骨の横方向への滑りのストレスを与えていきます。
テストの理論
膝蓋大腿関節の不安定性を調べるテストで、膝蓋骨に対する外側方向のストレスによって膝蓋大腿関節の不安定性を調べることができます。
ポジティブテスト(陽性反応)
膝蓋骨を外惻に押された時に、脱臼しそうな怖さがある場合や膝蓋骨が外側にずれないように膝を伸展する動き、手で膝を押さえるような動きが被験者側に見られた場合は、テストはポジティブになります。
Moving Patellar Apprehenstion Test
特異度:88.4%
テスト方法
患者は仰向けになり、ベッド上の場合は膝から下をベッドの外側に出します。 1つ目のテストでは、膝は完全に伸展にし、セラピストは膝蓋骨を内側から外方向に押します。そして、膝蓋骨を外方向に押すストレスを加えたまま、膝を90°まで曲げていきます。 次に2つ目のテストでは、膝蓋骨を外側から内側に押しながら、一つ目のテストと同じように行っていきます。
テストの理論
膝蓋大腿関節の不安定性を調べるテストで、膝蓋骨に対する外側方向のストレスと膝関節の屈曲ストレス の組み合わせによって膝蓋大腿関節の不安定性を調べることができます。
ポジティブテスト(陽性反応)
1つ目のテストでは、被験者がテスト中に不安を感じた場合、または大腿四頭筋を収縮させて屈曲に対して抵抗したり、膝蓋骨の外方向の動きを止めたりした場合にテストはポジティブとなります。2つ目のテストでは、被験者は不安感を感じず、完全な伸展-屈曲-伸展運動が自由にできる場合にテストがポジティブとされます。
1つ目と2つ目のテスト両方がポジティブであるとMoving Patellar Apprehenstion Testはポジティブと判断されます。
McConnell test
特異度:- %
テスト方法
被験者は、足が地面につかないような高さの位置でベッドの上に座ります。 そしてセラピストが抵抗を足に加え、膝関節、屈曲120°、90°、60°、30°、0°で等尺性収縮を行い、各収縮を10秒間保持します。 各角度でのテストで1つで痛みが引き起こされれば、セラピストは同じ角度で被験者の膝蓋骨を外側から内側に押し、等尺性収縮を行ってもらいます。
テストの理論
膝蓋骨が膝関節伸展時に関節面での不安定性があれば、外側方向に引っ張られます。
ポジティブテスト(陽性反応)
痛みが出る角度で、膝蓋骨を外側から内側に押し、等尺性収縮を行って痛みが軽減した場合は、テストはポジティブになります。
Clarke’s sign
特異度: 67%
テスト方法
被験者は仰向けになります。 セラピストは、親指と人差し指の間の付け根部分を膝蓋骨の近位側に置きます。 そして膝蓋骨に対して下遠位方向の圧力をかけ、その間、被験者に大腿四頭筋を収縮するように促します。
テストの理論
膝蓋骨を下遠位方向に固定し、大腿四頭筋を収縮させることで、膝蓋大腿関節面のストレスが増加します。
ポジティブテスト(陽性反応)
大腿四頭筋が収縮することで膝蓋骨が動いた時に、膝蓋骨付近に痛みを感じたり、大腿四頭筋を完全に収縮できない場合は、テストがポジティブになります。
関節水腫(Hydrops)

Patellar tap test
特異度:49%
テスト方法
被験者は仰向けになります。セラピストは、片方の手で大腿部の真ん中あたりから膝蓋骨にかけて圧力を加えながら手を滑らしていきます。もう片方の手は脛骨側から膝蓋骨がある部分の手前まで同様に手を滑らせていきます。その後、大腿部の方においてての人差し指で、膝蓋骨を上からした方向にタップしていきます。
テストの理論
膝関節に腫脹が見られると膝蓋大腿関節の間に隙間ができ、膝蓋骨が浮いているような状態になります。
ポジティブテスト(陽性反応)
膝蓋骨が浮いていて、沈むような感覚があれば、テストはポジティブになります。
Bulge test
特異度:-%
テスト方法
被験者は仰向けになります。膝関節の内側を下から上に手で2〜3回擦り上げていきます。 その後すぐさま、膝関節の外側を上から下に、手で擦り下げていきます。
テストの理論
手の動きによる圧力で関節内にある水腫が移動することで、膝に水腫があるかどうか確認できます。
ポジティブテスト(陽性反応)
膝関節の外側から圧力を加えた時に、水腫が内側に移動することが見られれば、テストはポジティブになります。
最後に
今回は、膝蓋大腿疼痛症候群と関節水腫に対する整形外科的テストの方法を紹介してきました。
膝蓋大腿疼痛症候群や関節水腫に関して、現場でもわりとよくみられることでもあるので、選手の膝の状態がどのようになっているのかを把握する上で、是非、これらのテストを実践できるようにしてみてください。
サッカー現場においては特に足関節や膝関節の怪我が多かったりします。そして、靭帯の損傷となれば、トレーナーとしての応急処置や復帰に向けてのリハビリが必要です。特に前十字靭帯損傷など選手生命に関わるような怪我は現場で、慎重に判断しなくてはなりません。https://t.co/14SvigqFKv
— 桑原秀和(Hide. Kuwabara)🇳🇱🇧🇪 (@HiddeKuwabara) June 17, 2021
半月板損傷という怪我があり症状によっては手術が必要なこともあるため、この半月板の損傷の有無を判断する整形外科的テストも靭帯損傷と同様にとても重要になります
今回は靭帯損傷と合併症でも起こり得る半月板損傷の有無を調べるための整形外科的テストの方法を紹介しますhttps://t.co/v9qYMdzyVB
— 桑原秀和(Hide. Kuwabara)🇳🇱🇧🇪 (@HiddeKuwabara) June 18, 2021
参考文献
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