#110 靭帯損傷に対する【膝関節】整形外科的テストのまとめ

ALL ORTHOPEDIC TEST THERAPIST

スポーツ現場で必ずと言っていいほど必要になってくる知識や技術が整形外科的テストによる急性期の診断です。

ツイートでも以下のように述べています。

ドクターがいないスポーツ現場では、トレーナーが選手の怪我の状態を判断して、プレーが続行できるかどうかを判断しなくてはなりません。その判断材料として整形外科的テストが必要になってきます。

サッカー現場においては特に足関節や膝関節の怪我が多かったりします。そして、靭帯の損傷となれば、トレーナーとしての応急処置や復帰に向けてのリハビリ、そして必要に応じてはドクターによる手術が必要になります。特に前十字靭帯損傷など選手生命に関わるような怪我は現場で、慎重に判断しなくてはなりません。

本記事では、そのサッカー現場でよく必要となる、そしてオランダの理学療法士がよく使う膝関節の整形外科的テストについて紹介していきます。

足関節の整形外科的テストについては下の記事をみてください。

 

目次

  • 膝関節の靭帯損傷に対する整形外科的テスト
    – Valgus Stress Test
    – Varus Stress Test
    – Anterior Drawer Test
    – Lachman Test
    – Godfrey’s Test
    – Posterior Sag Sign
  • まとめ

膝関節の靭帯損傷に対する整形外科的テスト

膝関節の靭帯損傷に対する整形外科的テスト
膝関節の靭帯損傷に対する整形外科的テストは、今回紹介する6つのテストです。

内側側副靭帯をテストする場合は、Valgus Stress Test (外反ストレステスト)
外側側副靭帯をテストする場合は、Varus Stress Test (内反ストレステスト)
前十字靭帯をテストする場合は、Anterior Drawer Test(前方引き出しテスト)Lachman Test(ラックマンテスト)
後十字靭帯をテストする場合は、Godfrey’s Test(ゴッドフレイズテスト)Posterior Sag Sign(サグ・サイン)

になります。

それでは、実際のテスト方法を見ていきましょう!

Valgus Stress Test (外反ストレステスト)

感度: 80-96%
特異度:報告なし

テスト方法

背臥位(仰向け)で横になってもらい、セラピストはテストする側の膝の横に立ちます。膝を30°に固定し、片手を膝の外側、反対の手を足首の内側から把持ます。そして、膝の内側がストレッチされるように外反方向に両手で軽く押していきます。これを膝の完全伸展位でも行います。

テストの理論

膝関節屈曲30°:内側側副靭帯、関節包
膝関節屈曲0°:内側側副靭帯、関節包、(前十字靭帯、後十字靭帯)

ポジティブテスト(陽性反応)

健側と比べ、膝関節の外反の動きが大きくみられた場合はこのテストではポジティブになります。

Varus Stress Test (内反ストレステスト)

感度: 25-67%
特異度:100%

テスト方法

背臥位(仰向け)で横になってもらい、セラピストはテストする側の膝の横に立ちます。膝を30°に固定し、片手を膝の内側、反対の手を足首の外側から把持ます。そして、膝の外側がストレッチされるように内反方向に両手で軽く押していきます。

テストの理論

Varus Stress Testでは、大腿骨に対して下腿が内側に動くかどうかを確認し、外惻側副靭帯の損傷の有無を調べます。外惻側副靭帯が正常の場合は、下腿が内側に動くことはほとんど見られず、外惻側副靭帯が最大伸長された時点で動きが止まります。

ポジティブテスト(陽性反応)

膝関節を内反方向のストレスをかけた時にエンドフィール(最終域の感覚)で、正常な外惻側副靭帯の “硬い感覚” とは違く、”軟らかい感覚” がした場合はポジティブになります。

Anterior Drawer Test(前方引き出しテスト)

感度:22-91%
特異度:57-100%

テスト方法

背臥位(仰向け)で横になってもらい、検査側の脚の股関節を45°、膝関節を90°にします。両手で脛骨を包むように持ち、脛骨プラトー(高原)の前方に両方の親指を置きます。この時に、脛骨が回旋したり、ハムストリングスが緩んでいることを注意しながら、大腿骨に対して脛骨を前方に引いていきます。

テストの理論

Anterior Drawer Testでは、大腿骨に対して下腿が前方にシフトするかを確認し、前十字靭帯の損傷の有無を調べます。前十字靭帯が正常の場合は、下腿が前方にシフトすることはほとんど見られず、前十字靭帯が最大伸長された時点で動きが止まります。

ポジティブテスト(陽性反応)

大腿骨に対して脛骨が前方にシフトした場合にポジティブになります。そして、前十字靭帯の損傷があることを示唆できます。また、健側と比較して関節の前方への緩み具合をチェックします。

Lachman Test(ラックマンテスト)

感度: 78-99%
特異度:79-100%

テスト方法

背臥位(仰向け)で横になってもらい、検査側の脚の膝関節を20°にします。片手で大腿骨を固定し、反対の手で近位の脛骨を包むように持ちます。そして、大腿骨に対して脛骨を前方に引いていきます。

テストの理論

Lachman Testでは Anterior Drawer Test 同様 、大腿骨に対して下腿が前方にシフトするかを確認し、前十字靭帯の損傷の有無を調べます。前十字靭帯が正常の場合は、下腿が前方にシフトすることはほとんど見られず、前十字靭帯が最大伸長された時点で動きが止まります。

ポジティブテスト(陽性反応)

大腿骨に対して脛骨を前方に動かした時にエンドフィールで、正常な前十字靭帯の “硬い感覚” とは違く、”軟らかい感覚” がした場合はポジティブになります。

Godfrey’s Test(ゴッドフレイズテスト)

感度: 報告なし
特異度:報告なし

このテストでは、感度と特異度の研究報告がほとんどないことから、信頼性としては低いものになります。そのため実践で使うというよりも知識として覚えることでいいかもしれません。

テスト方法

背臥位(仰向け)になってもらい、セラピストの両手で両足首を把持し、股関節と膝関節を90°にします。その後、膝を観察していきます。

テストの理論

Godfrey’s Testでは、下腿が下にシフトするかを確認し、後十字靭帯の損傷の有無を調べます。

ポジティブテスト(陽性反応)

側の下腿が下に沈むように動けば、テストはポジティブになります。

Posterior Sag Sign(サグ・サイン)

感度: 79%
特異度:100%

テスト方法

背臥位(仰向け)になってもらい、股関節45°、膝関節を90°にします。その後、膝を観察していきます。

テストの理論

Posterior Sag Signでは 下腿が後方にシフトするかを確認し、後十字靭帯の損傷の有無を調べます。

ポジティブテスト(陽性反応)

患側の下腿が後方に沈めば、テストはポジティブになります。

まとめ

膝関節の靭帯損傷のまとめ
以上が膝関節に対する整形外科的テストになります。
サッカーに限らず、他の競技でもこの膝関節の怪我の状態をトレーナーが把握して、現場での判断を必要とする場面が多くあります。
現場で働きたいトレーナーの方は是非参考にしてみてください。

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