#113 膝関節の基本的な知識と評価法

ALL REHABILITATION THERAPIST

膝関節は、スポーツ動作で痛めやすい関節の一つです。これは股関節がしっかりと使えていないことで、代償的に膝関節を使いすきてしまうことで起こることがほとんどではあります。そのため、膝関節を使いすぎないようにするための体の使い方として、股関節の捉えの精度を高める必要があります。
このことについて、以前の記事で紹介しているので、詳しくはそちらをご覧ください。

本記事では、膝を痛めた場合にどのように検査をしていくのか、その怪我の予後因子はどのようなものがあるのかなどを論文のデータからも用いて、紹介していきます。

目次

  • 膝関節の解剖学
  • 一般的な怪我・予後因子について
  • 膝関節のレッドフラッグ
  • 膝関節の基礎評価
  • まとめ

膝関節の解剖学

まず、簡単に膝関節の解剖学についてお伝えしていきます。

膝関節は、大腿骨と脛骨で構成される脛骨大腿関節のことを正確には指します。この膝関節は蝶番関節と呼ばれる片方が凸曲面(大腿骨)で、もう片方の凹曲面(脛骨)に適合する関節面を持っています。また、膝関節には他にも膝蓋大腿関節を構成する膝蓋骨と近位の脛腓関節を構成する腓骨という骨があります。
以下の図を見てみてください。
膝関節の解剖

膝関節は先ほど言った通り蝶番関節と呼ばれる関節面を持っており、矢状面で屈曲と伸展の2つの動きをします。また、スクリューホームムーブメントと呼ばれる伸展の最終可動域に外旋が起こる生理学的な運動もあります。そのため、膝関節では屈曲と伸展の2つの動きだけでなく、多少の回旋運動も起こります。

一般的な怪我・予後因子について

一般的な怪我

膝の怪我は、一般診療で見られる肩、腰、首の痛みに次ぐ最も一般的な怪我の1つです1)。この膝関節の怪我は、主に外傷性および非外傷性の損傷の2つのグループに分けることができます。

外傷性損傷は通常、スポーツ中などの特定の一過性のストレスによって生じます。一方、非外傷性損傷は、時間の経過とともにストレスが徐々に蓄積したことによる損傷であり、慢性的な痛みを訴えます。
オランダの報告によるとプライマリケアでは、報告された外傷性損傷の発生率は3.85%であり、膝の非外傷性損傷の有病率は年間1.9%です。

一般的な外傷性損傷と非外傷性損傷の分類は以下の通りです。

外傷性:
●内・外側副靭帯損傷
●半月板損傷
●前・後十字靭帯損傷
非外傷性:
●膝の変形性関節症
●膝蓋大腿痛症候群(PFPS)
●腸脛靭帯症候群(ITBS)

膝の損傷の経過に関してはあまり良好でないというデータがあります。
非外傷性膝痛の患者の33%と外傷性膝痛の患者の25%が完全に回復したと報告しています2)。

予後因子

非外傷性膝損傷の場合、以下の予後因子が1年後の膝の慢性的な症状と関連していたと報告されています 3)。

●年齢> 60歳
●教育レベルが低い
●運動時の痛みの恐怖
●骨格系の合併症

また以下の要因は、膝の痛みの経過に関連がある可能性があるものとされています 4)。

●広範囲にわたる疼痛
●高機能障害
●身体表現性障害
●激しい疼痛
●膝の怪我の既往

膝関節のレッドフラッグ

レッドフラッグとは、主に診断するときに使われる用語で、重症な状態で緊急に治療が必要な場合のことを言います。そのため、レッドフラッグの兆候がある場合はドクターにすぐさま受診し画像診断や必要に応じては手術などの処置を必要とします。

膝関節の危険信号として数えられるいくつかの特定の病状があります。
膝関節のレッドフラッグの対象となるのは以下の通りです。

●骨折
●心的外傷後の神経血管損傷
●伸筋群の完全な断裂
●単関節炎
●自発性関節内出血
●骨または軟部組織の腫瘍

上記のような症状がある場合は、すぐさまドクターに受診する必要があります。ドクターによって適切な処置を受け、その後に適切なリハビリが行われます。

膝関節の基礎評価

膝関節の基礎評価として関節の可動域を測定することはとても大切になります。関節の可動域制限と制限に対するエンドフィールは、構造的評価の指針となり、関節可動域制限を起こしている組織が何かということの参考になります。(例:骨による制限=変形​​性関節症)

関節可動域テストを行う場合は、アクティブROMから始め、パッシブROMで行うとより安全に行うことができます。

膝関節の可動域は以下の通りです。

方向 可動域
屈曲 0°-135°
伸展 0°-15°

ROMの評価では、正常な関節可動域の範囲だけでなく、左右で可動域いの違いを比べること必要になります。トレーナーとして、選手の膝の状態をみる場合は、触診による情報が重要で腫れ、血腫、熱感、痛みまたは圧痛などによって状態を把握します。また、膝関節の整形外科的テストによる検査も必要になります。

まとめ

  • 膝関節は、大腿骨と脛骨で構成される脛骨大腿関節のことです。
  • 膝関節は蝶番関節と呼ばれる片方が凸曲面(大腿骨)で、もう片方の凹曲面(脛骨)に適合する関節面を持っています。
  • スクリューホームムーブメントと呼ばれる外旋運動もあり、屈曲と伸展の2つの動きだけでなく、多少の回旋運動も起こります。
  • オランダの報告によるとプライマリケアでは、報告された外傷性損傷の発生率は3.85%であり、膝の非外傷性損傷の有病率は年間1.9%です
  • 非外傷性膝痛の患者の33%と外傷性膝痛の患者の25%が完全に回復したと報告があります。
  • 非外傷性膝損傷の予後因子は、年齢(> 60歳)、教育レベルが低い、運動時の痛みの恐怖、骨格系の合併症が関連しています。
  • レッドフラッグの対象となる病態に関しては、すぐさまドクターに受診する必要があります。
  • 膝関節の可動域は屈曲 0°-135° で、伸展 0°-15° です。

以上のように膝関節の基本的な解剖や病態、評価法について紹介してきました。サッカーなどのスポーツにおいてもチームに一人は必ず膝の痛みを抱えている選手がいる可能性が高いため、しっかりと病態を把握して、評価できるようにしてみてください。

参考文献

1)Picavet HS, Schouten JS. Musculoskeletal pain in the Netherlands: prevalences, consequences and risk groups, the DMC(3)-study. Pain. 2003 Mar;102(1-2):167-78. doi: 10.1016/s0304-3959(02)00372-x. PMID: 12620608.

2)Wagemakers HP, Luijsterburg PA, Heintjes EM, Berger MY, Verhaar J, Koes BW, Bierma-Zeinstra SM. Outcome of knee injuries in general practice: 1-year follow-up. Br J Gen Pract. 2010 Feb;60(571):56-63. doi: 10.3399/bjgp10X483157. PMID: 20132694; PMCID: PMC2814290.

3)Belo JN, Berger MY, Koes BW, Bierma-Zeinstra SM. Prognostic factors in adults with knee pain in general practice. Arthritis Rheum. 2009 Feb 15;61(2):143-51. doi: 10.1002/art.24419. PMID: 19177535.

4)Artus M, Campbell P, Mallen CD, Dunn KM, van der Windt DA. Generic prognostic factors for musculoskeletal pain in primary care: a systematic review. BMJ Open. 2017 Jan 17;7(1):e012901. doi: 10.1136/bmjopen-2016-012901. PMID: 28096253; PMCID: PMC5253570.