#141 ランニング中に肺活量を上げる身体の使い方

ALL PRACTICAL TRAINING

肺活量とは人間が空気を思いっきり吸って思いっきり吐くことのできる量のことを言います。この肺活量が多いとその分取り込める酸素の量も多くなり体を動かすための筋肉に栄養をより多く送ることが出来るようになります。

つまり、この肺活量が多ければ多いほどランニング中の運動パフォーマンスが良くなります。

一般的に肺活量は男性4000〜4500、女性3000〜4000ml で、安静時の呼吸では一回500mlの量の空気を呼吸していると言われています。しかし実際には150mlの空気は肺まで届かず、150mlを引いた350mlの空気が肺に入り
酸素が体の中に吸収されてると言われています。

ランニング中の呼吸量を多くして酸素を多く取り入れるためには、主に横隔膜と肋骨の動きが関係してきます。そのため、呼吸筋である肋骨周りの筋肉が発達していることや腹式呼吸で横隔膜がよくつかわれることが呼吸量に影響を与えると一般的には言われています。 

本記事では、このランニング中に横隔膜と肋骨の動きを最大限大きくして呼吸量を増やす体の使い方を解説していきたいと思います。そして、腹圧と横隔膜の関係について、またランニング中に横腹が痛くなる理由についてもお伝えしていければと思います。

目次

  • ランニングで肺活量を上げる身体の使い方
  • 腹圧と横隔膜の動きの関係
  • 横腹が痛くなる理由
  • まとめ

ランニングで肺活量を上げるための身体の使い方

ランニングで肺活量を上げるための身体の使い方
ランニングで肺活量を上げるための身体の使い方を知るためにはまず、ランニング中の呼吸法を知る必要があります。

ランニング中の呼吸法

ランニング中に呼吸量を多くして酸素を多く取り合えるための呼吸法は、基本的に2歩2呼気、2歩2吸気です。つまり、ランニング中に足を前に出して右足が地面に着く瞬間に1呼気、そして左足が地面につくときに1呼気、次に右足1吸気、左足1吸気と呼吸をしていきます。

これはベーシックの呼吸法になるので、人によっては3歩3呼気、2歩2吸気や3歩3呼気、3歩3吸気がよりやりやすい人もいるので、自分に合った呼吸法を探す必要があります。

ランニング中にやってはいけない呼吸法は、1歩1呼気、1歩1吸気です。これは、1回の呼吸で吸える空気の量が少なくなり、酸素をとりこめなくなってしまうからです。冒頭でお伝えしましたが、150mlの空気は肺まで届かないため、吸気時の空気の取り込む量から150mlを引いた量の酸素しか体に取り込むことができません。つまり、1回の吸う空気が少なければ少ないほど、肺に届く酸素の量が少なくなってしまいます。そのため、1歩1呼気、1歩1吸気の呼吸法は酸素を取り込むのにとても効率の悪い方法になってしまいます。

ランニング中の呼吸法を実践できるようになったら、次にこの呼吸法に合わせて体の使い方を覚えていく必要があります。

肋骨を縮めて呼吸量を増やす

ランニング中に肺活量を上げるためには、通常の呼吸に使う呼吸筋以外にも他の筋肉を使う必要があります。その筋肉とは主に2つあり、肋骨の横に付いている前鋸筋と胸の上に付いている小胸筋です。この2つの筋肉は呼吸と関係あることがあまり知られていないのですが、肋骨の動きを大きくする働きがあり、呼吸と関連してきます。

前鋸筋は肩甲骨の内側から肋骨までついています。そして小胸筋は、肩甲骨の烏口突起から肋骨の前面についています。この前鋸筋と小胸筋は肩甲骨を下げる作用があります。肩甲骨が下がると、肩が下がり同時に肋骨が縮むような動きを作ります。

この筋肉がランニング中にどのように呼吸に影響するかと言うと、2歩2呼気時のタイミングと同時左右の前鋸筋が片方ずつ使われることで、肋骨を縮める動きをすることができ、呼吸量を増加させる働きがある可能性があります。地面に右足が着く瞬間に右側の前鋸筋が働き、右肩が下がって、右側の肋骨を圧縮し、呼気を補助してくれるということです。イメージ的にいうと、肋骨を外側から手で一瞬押したタイミングで呼気をしている状態なので、通常の呼気よりも呼気量が多くなります。呼気量が多くなるということは、その後の吸気量にも影響が出て、全体的な呼吸量が多くなっていきます。

» 参考:なで肩を治すより、なで肩になった方がパフォーマンスが上がる理由

腹圧と横隔膜の動きの関係

ランニング中に腹圧が高まることで、横隔膜を上方向に押し上げる力が生まれます。この力により呼気量がより増加すると考えられます。

ランニング中に腹圧を高めるためには、先ほど挙げた前鋸筋ともう一つ広背筋が1歩1呼気時の足を地面につけた瞬間にしっかり収縮し、肋骨が縮まることが大切になります。そしてもう一つ大事な事は、足が地面についた瞬間にしっかりと股関節まわりの筋肉が使われていることです。これは股関節の捉えができてると言う表現もできます。足が地面についた瞬間に股関節の捉えができていると上半身の重さの衝撃を足首や膝ではなく股関節で受け止めることができます。そして、前鋸筋と広背筋が収縮し、下方向に肋骨の圧縮の力が加わったときに、その力も股関節で受け止めることができるようになります。つまり、上半身の重さと前鋸筋と広背筋が収縮による下方向の肋骨の圧縮力を股関節でしっかりと受け止めることで、腹部内が上下から圧力を受ける状態になり、結果として腹圧が高まり、横隔膜に影響を与えます。そして、このことにより横隔膜が上方に上がりやすくなり、呼気量を増加させることができます。

横腹が痛くなる理由

ランニングをしてて横腹が痛くなる人がたまにいると思いますが、これにはしっかりと理由があります。横腹が痛くなる理由としては、ランニング途中に内臓が硬くなってきてしまうことが原因の1つです。ではなぜ内臓が硬くなってしまうかと言うと、それには主に2つの理由があります。1つ目はその内臓を支配する神経の通りが悪くなることです。内臓の神経はおおよそ肋骨の間を通って内臓から背骨まで通っていきます。つまり肋骨の動きが悪くなると肋骨の間にある筋肉が固まってしまい神経を圧迫してしまいます。そのことで内臓に行く神経の働きが悪くなり最終的に内臓が硬くなってきて横腹が痛くなると言うことが起きます。

2つ目の横腹が痛くなる理由として、特に胃や肝臓に当てはまることなのですが、肩にある僧帽筋と胸にある大胸筋の緊張と関係しています。ランニング中に肩が上がり、肩の緊張が高くなってしまうと僧帽筋や大胸筋の緊張も高くなってしまいます。そして、この2つの筋とは胃と肝臓に関連があるとされているため、最終的に胃と肝臓を硬くして横腹の痛みを発生させる可能性があります。

以上の2つの理由から、横腹が痛くなる原因となりえるのですが、これを改善していくためには、上記でお伝えした呼吸法と呼気量を増やす方法を実践していくことが大切になります。

まとめ

呼吸法まとめ
以上のようにランニング中に呼吸量を多くするためには、正しい呼吸法とその呼吸のタイミングに合った体の使い方がとても重要になってきます。呼吸の良くないパターンは犬がゼーゼー息をしているような呼吸の仕方であり、そのような呼吸法ではすぐに疲れてしまいます。そのため、しっかりと呼吸を確保するためには、2歩2呼気、2歩2吸気ができることが理想になります。さらにできる人は3歩3呼気、3歩3吸気ができるとさらに呼吸量が大きくなります。

地面に足が着く瞬間に呼気、そして肋骨が圧縮されることも呼気量を多くするためにとても大切になります。この体の使い方ができることで、横腹が痛くなることもなくなり、ランニング中の運動パフォーマンスの向上に貢献してくれると考えられます。

» 参考:アームカールで体の連動を作る方法