#12 ”股関節の捉え”と”ヒップヒンジ”の違いを解説します
本記事では、股関節の捉えとヒップヒンジの違いについて、そして股関節の捉えとはどのようなものなのかということを書かせていただきます。
”股関節の捉え”というのは、【胴体力】の著者で有名な伊藤昇氏がお話をされていることから使われるようになりました。しかし、この股関節の捉えの感覚というのは実際にできている人でないとわからない感覚でもあるので、習得するまで股関節の捉えとはなんなのかという疑問を持ちながら練習に励むことになります。
この言葉に近いものとしてはヒップヒンジと言われる言葉です。鼠蹊部の付け根から折りたたむように上半身を曲げていき大臀筋などのお尻の筋肉をしっかりと使った動きの時に用いられることが多いです。具体的な動きとしてはスクワットやデッドリフトなどですが、ヒップヒンジができていないと腿に前に位置する大腿四頭筋などを使って行なってしまうことになります。このような方法でのトレーニングは膝や腰の怪我につながる可能性ため、ヒップヒンジを意識して行えるように十分に気をつけなければいけないことは多くの臨床現場で言われています。
この股関節の捉えとヒップヒンジという言葉は分けて使わなければならない(意図することが近くても実は全く違う)というのが個人的な意見ですが、その前に股関節の捉えという言葉自体を聞いたことがない人も多いのが現状だと思います。
目次
- 股関節の捉えとヒップヒンジの違い
- 股関節を捉えるとは
・正しく立つ
・体をリラックスさせる
・体の奥にある筋肉
・正しく正座をする
・股関節を捉えることでの体幹への影響 - まとめ
1 股関節の捉えとヒップヒンジの違い
先日このようなツイートをしました。
⭕️股関節の捉えとヒップヒンジの違い
サイドスクワットによるトレーニング
奥の二人はわりと股関節の捉えができてるけど、手前の人は股関節の捉えが外れてしまっている。
股関節の捉えは、ただヒップヒンジができてればいいわけではなく、上半身の連動も必要になります。https://t.co/zVqDlsruy4 pic.twitter.com/frMBuDYnq8
— 桑原秀和(Hide. Kuwabara)🇳🇱🇧🇪 (@HiddeKuwabara) December 29, 2020
股関節の捉えとは、ただヒップヒンジをするだけでなく上半身の連動が必要になるということなのです。なぜかというと股関節の捉えが感じられるためには、股関節の中心部に上半身の重みがしっかりと乗った状態をいうからです。つまり、ヒップヒンジした際に上半身が前方に移動させるのではなく、上半身を同じ位置にキープしたままヒップヒンジをする感覚になります。
上記のツイッターの動画を見てもらうとわかりますが、股関節の捉えができている女性は頭の位置が変わっていませんが、股関節の捉えがなくヒップヒンジしている女性が頭の位置が前後しています。これが股関節の捉えとヒップヒンジの違いになるわけです。
この股関節の捉えについて、スポーツ選手のための体づくりメディアのアスリートコレクションさんの方でも書かせていたので、そちらも載せておきます。
» 股関節をうまく使った動きづくり【股関節の捉え】
またこの股関節の捉えは、以下のツイートのように体幹機能を高めるために必要な1つの要素でもあるのでこの感覚を掴むことはスポーツパフォーマンスにも影響してきます。
体幹の機能を高める体づくりに必要な6つの要素
✔︎肩の操作
✔︎骨盤の操作
✔︎股関節の使い方
✔︎胸の意識
✔︎仙骨の意識
✔︎内転筋の意識自分の体のスキルを知るためのチェックリスト。
仕事のスキルと一緒で、どの要素も65歳前後までは高めることができます。今からやるのも遅くない。
— 桑原秀和(Hide. Kuwabara)🇳🇱🇧🇪 (@HiddeKuwabara) May 18, 2020
胸の意識についても他の記事で紹介しているので読んでみてください。
胸骨の意識が姿勢を変える【体幹を強くしたい人へ】
本記事では胸骨の意識どうパフォーマンスに関係しているのか、そしてキレイな姿勢に体を変えたい方、さらに体幹を強くしたりスムーズに体を動かせるようになりたい方向けに書かせていただきます。
続いて、股関節を捉えることついてより深く別の視点も交えて解説していきます。
2 股関節を捉えるとは

正しく立つ
現代の多くの人は長時間立ち続けると、腰を痛めたり腿が疲れたりします。西洋人と日本人を比較した場合、一見、日本人は背中が丸くて姿勢が悪いので、背筋が伸びて綺麗に見える西洋人の人たちの方が立ち方がいいのではないかと思う人もいるかもしれません。しかし、実際には西洋人の中でも腰痛などの問題を抱えている人は少なくありません。
股関節を捉えられるということは、正しく立つことができるということにもなります。そのため、正しく立てる人は、長時間立ったとしても何一つ体を痛めることはないのです。
股関節をしっかりと捉えられていると立った状態から動き出すときに無駄な力を入れずに歩き出すことができます。また、座った状態から立ち上がる時もどっこいしょとなる人は股関節が捉えられず余計な力を使って立っています。つまり、静止した状態では筋肉が力まずに動き出すときにその力のロスがないため、スムーズに動き出すことができます。
胴体力で有名な伊藤昇先生の著者の中に、立ち姿に隙がないと紹介されている力士がいます。その力士とは、双葉山という伝説的な力士でここに動画を上げているので是非みてみてください。股関節を捉えるというのはこういうことかと少しわかると思います。
体をリラックスさせる
股関節を捉えるために大事なのは、立ったときに体がリラックスできているかどうかです。ポイントとしては、足の真上に膝、骨盤、肩、耳がしっかりと位置していることです。そして、膝を少し曲げ力を抜き、体を前後左右に動かして、体の力みが抜けるところを探していきます。
実際に立って確かめるとわかりやすいのですが、立ったときにどこに筋肉の緊張があるのかを確認します。もし、どこにも緊張が感じられず足の裏に体重が乗っかっている感覚があれば、股関節で捉えられていることになります。僕もまだこの感覚が掴みきれていないので、日々意識して練習しています。
身体の奥にある筋肉
体をリラックスし股関節を捉えることができれば、腸腰筋という体の深部にある筋肉がより働くことになります(上の図)。この筋肉は背骨から股関節まで付いていて、上肢や下肢、体幹を動かすのに非常に重要な役割を果たします。しかし股関節を捉えることができなければこの筋肉は使われずに衰えていき、他の体の外側にある筋肉で代償します。
スポーツ選手であれば、この筋肉がどれだけ使えるかが良いパフォーマンスの鍵になってきますのでこの腸腰筋を使えるための体づくり、つまり股関節を捉えることが非常に大事です。よくスポーツ選手間でみられるのがトレーニング後に腿の前や股関節の外側が張ってきたりします。これらは先ほど言った体の外側の筋肉での代償によって引き起こされることなので、体の能力を高めるためには改善する余地があります。
正しく正座する
股関節を捉えていることができているかを知るためには、正座をすればわかります。できている人であれば、長時間の正座でも苦痛なく座り続けられるそうです。(僕の場合はまだまだで20分も経てば足が痛くなってしまいます。)
この正座を長くできない理由として、骨盤の細分化ができておらず、体幹の柔軟性が低いことが考えられます。また、上記でお話しした腸腰筋がうまく使えていないことにもなります。骨盤の細分化ができていないということは、正座したときに骨盤を体がリラックスできる位置に置くことができていません。
そして、体幹の柔軟性が低いことで胸郭や頭の位置が骨盤の上にしっかりとのらずにいることで、体に余計な緊張をうませてしまっています。そのため、この骨盤の細分化と体幹の柔軟性を向上させるトレーニングも股関節を捉えるためにはとても大切になります。
股関節を捉えることでの体幹への影響
前述で股関節の捉え方について話してきました。そして、股関節を捉えられることで、結果的に腸腰筋が使えるようになることもお伝えしました。この腸腰筋が使えるということは体幹にとって安定性かつ強靭な力を作り出してくれます。体の中心部にある筋肉でもあるので、力の原動力です。
体幹を強くする上では、腸腰筋が使えているのか使えていないのでは雲泥の差が生まれます。それだけ体幹にとって重要な筋肉であるので股関節を捉えることも体幹にとっては同様のことが言えます。
3 まとめ

- 股関節の捉えとヒップヒンジの違いは上半身の連動があるかどうかである。
- 正しく立つということは股関節を捉えるということで、長時間立ち続けてもどこも体を痛めることがない。
- 股関節を捉えるには、体をリラックスさせて緊張がどこにもない状態をつくる。
- 股関節を捉えることができていれば腸腰筋優位の体の使い方ができ、体を楽に動かせる。
- 苦痛なく長時間の正座ができるのであれば、股関節は捉えられている。
- 股関節を捉えられることは、体幹を強くするために必要不可欠である。
股関節を捉えるというのは非常に難しいことで、長期にわたって自分の体と向き合いながら少しずつ理解を深めていく必要があると思います。
以上で、股関節の捉え方についての説明を終わりにします。