#164 食物繊維を食べることの4つのメリット

ALL CONDITIONING DIET/ NUTRITION

食物繊維と聞くと健康に良いというイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。実際に、食物繊維がいいと言われている一番の理由として、食物繊維の摂取が消化をスムーズにするかもしれないことが挙げられます。この消化に影響を与えることについては、腸内細菌と密接に関係していると言われています。

そして、さらに言えば、食物繊維にはある2種類の食物繊維に分類ができ、それぞれ違う役割を果たしています。

本記事では、食物繊維のエビデンスに基づく健康上のメリットについて説明します。

目次

  • 食物繊維とは
  • 食物繊維を食べることの4つのメリット
    1.腸内細菌の改善
    2.減量を助ける
    3.高炭水化物の食後の血糖値の急上昇を減らす
    4.便通をよくする
  • まとめ

食物繊維とは

食物繊維とは食品に含まれる非消化性の炭水化物のことを指します。そのため実は、体にいいといっても食物繊維自体が消化・吸収されるわけではないのです。

食物繊維は水溶性不溶性の2つの種類に分類されます。

水溶性食物繊維:水に溶けやすく、溶けるとドロドロの形状になり、他の栄養素の吸収速度を遅くします。腸内の腸内細菌の一つである「善玉菌」によって代謝されます。

不溶性食物繊維:水に溶けず、水分をたくさん吸収して便の体積を増やします。便の体積が増えることで大腸を刺激して、排便が促進されたり、腸内の毒素と結びついてその毒素を排出する働きもあります。

食物繊維は、発酵性食物繊維非発酵性食物繊維にも分類することができます。発酵性食物繊維は、腸内細菌のエサとなって発酵(分解)されることで、腸内環境を整える酪酸などの短鎖脂肪酸を生じさせます。

食物繊維にはさまざまな種類があり、健康上のメリットを持つものからほとんど持たないものまであるとされています。

水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の間にはその分類の境目を見つけることができないこともあり、一部の不溶性食物繊維の中にも腸内の善玉菌によって消化される可能性があるものもあります。そして、ほとんどの食品には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方が含まれています。

一般的には、男性と女性がそれぞれ1日あたり38グラムと25グラムの食物繊維を食べることが推奨されています。

食物繊維を食べることの4つのメリット

食物繊維を食べることの4つのメリット

1.腸内細菌の改善

人体に生息する細菌の数は、体の全細胞数の10倍以上とされています。それらの細菌は皮膚、口、鼻に生息しますが、大部分は腸、主に大腸に生息します。

腸内には約500種類の細菌が生息しており、合計で約500兆個の細胞が存在します。これらの腸内細菌は腸内細菌叢としても知られています。細菌の種類によって、体重・血糖コントロール、免疫機能、さらには脳機能など、健康のさまざまな働きをするとされています。

このような働きを活性化するためには、腸内細菌自体が健康でなければなりません。そして、健康になるためには腸内細菌は人間と同じようにしっかりとエネルギーを得るために何かを食べる必要があります。しかし、多くの栄養素は大腸に到着する前に血流に吸収され、腸内細菌のエサにはなりません。その中で、食物繊維は人間の消化酵素では消化できず大腸まで消化されずに到着します。食物繊維が大腸に入ると、腸内細菌の中の善玉菌のエサとなり、善玉菌の増殖が促進されます。腸内細菌の増加は、短鎖脂肪酸を含む体の栄養素を生成し、結腸の細胞に栄養を与えます。これにより、腸の炎症を軽減し、過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎などの消化器疾患を改善します。

腸内細菌が食物繊維を発酵させるときには、ガスを発生させます。これが、高食物繊維食が一部の人に鼓腸や胃の不快感を引き起こす可能性がある理由でもあります。しかし、体が食物繊維食に慣れてくるとこのような症状が出にくくなると言われています。

2.減量を助ける

ある特定の種類の食物繊維は、満腹感を増やすことで体重を減らすのに役立ちます。そして、腸内の水分を吸収し、栄養素の吸収を遅らせ、満腹感を高めます。実際、いくつかの研究では、食物繊維を増やすと、カロリー摂取量が自動的に減少することで体重が減少する可能性があることが示されています。

ただし、これは食物繊維の種類によって異なり、このような効果がないものもありまうが、特定の水溶性食物繊維は体重減少のために大きな影響を与える可能性があります。

3.高炭水化物の食後の血糖値の急上昇を減らす

高食物繊維食品は、ほとんどの食物繊維が取り除かれている精製​​炭水化物よりも食後血糖値の上昇を示し指数であるグリセミック指数(GI値)が低い傾向があります。高粘度の水溶性食物繊維だけがこの特性を持っているとされています。そして、炭水化物を含む食事にこの粘性のある水溶性食物繊維を含めると、血糖値の上昇が小さくなる可能性があります。

これは、特に精製​​炭水化物を食べる時や炭水化物を多く食べるときに血糖値を急激に上昇させないために重要になります。

もし血糖値に問題がある場合は、炭水化物の摂取量自体を減らすことを検討する必要があります。特に、白い小麦粉や砂糖を加えたような精製された炭水化物を減らすことが必要が必要です。

4.便通をよくする

食物繊維多く食べることの1つメリットは、便通をよくすることです。食物繊維は、水分を吸収し、便の量を増やし、腸を通る便の動きを改善するのに役立つと言われています。

しかし、いくつかの研究は、食物繊維を増やすと便秘の症状を改善できることを示していますが、他の研究は、食物繊維を取り除くと便秘を改善することを示しています。この2つの結果から分かる通り、矛盾した結果が出ていますが、食物繊維の種類によって異なる可能性があります。

慢性便秘の63人を対象としたある研究では、食物繊維の少ない食事をとることで便秘が改善されました。逆に食物繊維の多い食事を続けた人は改善が見られませんでした。この研究結果の考察として、便の水分量を増やす繊維は下剤効果がありますが、水分量を増やすことなく便の乾燥質量を増やす繊維は便秘効果がある場合があることが考えられています。

まとめ

  • 人が消化ができない炭水化物のことを食物繊維として呼んでいます。食物繊維はほとんどの場合、水溶性または不溶性に分類されます。
  • 腸内の腸内細菌を活性化するためには、適切な量の水溶性の発酵性食物繊維を摂取することが重要になります。
  • 食物繊維の種類によっては、満腹感を増して体重を減らし、カロリー摂取量を減らすことができます。
  • 食物繊維を含む食品は、食物繊維が少ない食品よりもグリセミック指数が低く、血糖値の急上昇が小さくなります。
  • 食物繊維の種類によっては、便秘を減らすものもあれば、便秘を増やすものもあります。

以上のように、食物繊維にはさまざまな健康上のメリットがあります。

健康的なライフスタイルを目指すのであれば、果物、野菜、穀物全体からさまざまな繊維を摂取するように心がけることが大切になります。

参考文献

1)Howarth NC, Saltzman E, Roberts SB. Dietary fiber and weight regulation. Nutr Rev. 2001 May;59(5):129-39. doi: 10.1111/j.1753-4887.2001.tb07001.x. PMID: 11396693.

2)Ho KS, Tan CY, Mohd Daud MA, Seow-Choen F. Stopping or reducing dietary fiber intake reduces constipation and its associated symptoms. World J Gastroenterol. 2012;18(33):4593-4596. doi:10.3748/wjg.v18.i33.4593