#90 筋出力を促通する10つの方法【スポーツトレーナー必見】
ウエイトトレーニングをしてパフォーマンスが下がる理由として、筋力が上がっても複合運動での筋出力が上がっていないからです。
スポーツ動作の改善をするためには、複合運動で螺旋的・対角線的なパターンの動きの質の向上をすることが効果的です。https://t.co/4kgY7F0tJx
— 桑原秀和(Hide. Kuwabara)🇳🇱🇧🇪 (@HiddeKuwabara) May 26, 2021
このツイートのように、スポーツ動作の改善やパフォーマンス向上のためには複合運動での筋出力の増加がとても大切になります。
また、怪我やパフォーマンスがなかなか上がらずプレーのキレがでない理由としてもこの筋の出力が低下していることが考えられます。
筋の出力の低下の原因としては様々な要素が考えられ、主に使いすぎによる疲労の蓄積、不適切なフォーム、他の患部をかばっての動作、外傷、内臓の状態、ストレス、フィールドなどの環境の問題などが影響していきます。
一度、筋出力が低下してしまうとなかなかその筋出力を戻すことが難しい場合もあり、知らず知らずとパフォーマンスが落ちてしまったり、怪我をしてしまったりすることがよくあります。
筋肉系の怪我の多くは、前後左右、内外の筋バランスが崩れたことで起こりえる。
例えば、大腿四頭筋と大臀筋、ハムストリングの筋バランス。そして腹直筋と内・外腹斜筋、腹横筋の筋バランスなど。
つまり怪我のリスクを下げるためには、どこかの筋のバランスが崩れていることを認知し原因を探ります。— 桑原秀和(Hide. Kuwabara)🇳🇱🇧🇪 (@HiddeKuwabara) April 14, 2020
このツイートでも言及していますが、筋バランスの崩れが怪我の原因になったりもします。この筋バランスの崩れは先ほどお伝えした筋出力の低下から起こるとされているため、選手や選手をサポートしているトレーナーとしてはこの筋出力の低下を見つけ、筋出力がしっかり出るように促通していくことがとても大切になります。
筋バランスの崩れが怪我につながる理由について、詳しく書いたブログ記事もあります。
筋バランスが崩れると怪我につながる理由
本記事ではその自爆系の怪我の一つの原因として考えられる”筋バランスの崩れ”について解説していきます。筋バランスが崩れることで、体の一箇所に負担がかかり痛みを発生させたり、筋組織を壊してしまうことがあります。このことを理解してより質の高い怪我の予防法を身につけてみてください。
以上のことを踏まえて、本記事では選手の筋出力の低下が生じた場合にスポーツトレーナーとしてどのようにして筋出力を促通していくかを10通りの方法から紹介していきます。
目次
- 筋出力を促通する10つの方法
1.筋の伸長
2.関節の牽引
3.関節の圧縮
4.抵抗
5.発散と強化
6.正常のタイミング
7.自動他動抵抗運動
8.皮膚刺激
9.口頭指示
10.視覚刺激 - 筋出力低下を発見するためには
- まとめ
筋出力を促通する10つの方法

1.筋の伸長
筋を他動的に伸長することで筋紡錘が刺激されて筋収縮が容易にできるようになります。ウォーミングアップに行うダイナミックストレッチもこの筋の身長を利用して、筋収縮の最大化と可動域の改善を図る目的で行われています。
ある特定の筋伸長の刺激はその筋の周りの筋にも促通されることがわかっています。例えば、前傾骨筋と股関節屈筋群を同時に伸長することで、体幹の屈筋群にまで刺激が発散されることが言われています。
2.関節の牽引
関節を牽引することで関節内の固有受容器を刺激し、筋収縮を増大させる働きがあります。牽引は主に運動を促通する時に使われ、主に上肢の運動で取り入れると効果的です。また他にも股関節の屈曲時にも牽引しながら運動を行うことで筋収縮が増大することが期待されます。
3.関節の圧縮
関節を圧縮することでも関節内の固有受容器を刺激します。これは関節の牽引と同様に筋収縮を増大させ、さらに関節の安定性の増大を期待できます。関節の圧縮は主に下肢に圧迫を加えて姿勢の安定と保持の増大を図ることが多く、特に股関節の伸展の時に使われると効果的であるとされています。
4.抵抗
筋出力を促通させるためには、『活動に参加する運動単位の数』と『発射頻度』を高める必要があります。適切な抵抗運動を行うことで前角細胞の興奮を引き起こし、筋収縮能力の促通、運動コントロールの向上、運動認識の促進、筋力強化を促すことができます。
適切な抵抗の加え方としては、一般的に関節トルクを考慮すると中間域で最大に抵抗できる位置になるため、その範囲で抵抗を加えると筋に対する運動単位の数が増えやすくなります。
また、等尺性収縮での抵抗の掛け方として、徐々に抵抗を強くして、そして徐々に弱くします。この抵抗の掛け方によって運動単位の動員により筋の収縮が促進されやすくなります。関節の運動を妨げない求心性収縮での抵抗運動では、運動コントロールの向上の運動学習の効果にもつながります。この等尺性収縮と求心性収縮の二つの適切な抵抗の掛け方によって次に紹介するあふれだし現象を引き起こしその運動に対する筋力、耐久力も向上します。
5.あふれだし現象
筋肉に対して適切な抵抗を加えることで、主動筋である大きな筋肉から共同筋である小さな筋肉にまで筋活動の増強を促すことができます。弱化した筋をより強力に収縮させるためには、等尺性収縮での抵抗を加えることで弱化した筋肉のインパルスの発散により筋収縮を強化できます。
実際の筋収縮を効果的に増大させる例
●一側肢に抵抗→対側の筋収縮が促通
●股関節の屈曲に抵抗→体幹屈曲の収縮が促通
●前腕の回外に抵抗→肩関節の外旋運動が促通
6.運動方向
特別なテクニックを除いて、基本的には遠位から近位にかけての運動を行うことで、より効率的に筋収縮の促通を行うことができます。また、あふれだし現象が起こるようにその運動を促していくことも大切です。
7.他動運動・自動抵抗運動
動きを学習する順序として
の順番で行うと筋の収縮を促通しやすくなります。
8.皮膚刺激
トレーナーやセラピスト側が把持方法で、皮膚・筋・腱・関節内の受容器を効率的に刺激する方法をとっていきます。例えば、抵抗や牽引、圧縮などもこの皮膚刺激の一部です。また、筋腹上に手を置くことで筋収縮を促通することもできます。また、反対に筋緊張が高い筋肉の拮抗筋の上に手を置くことで相反抑制を利用してその筋緊張を落とすこともできます。腱に対する圧迫は、筋の圧迫とは逆にその筋に対して抑制に働きます。このように感覚受容器によって体の反応が違ってくるため、目的によってどこに触れるのかがとても重要になります。
9.口頭指示
どのように筋収縮を促したいかのよって、抑揚を考慮した口頭指示を行なっていきます。例えば、鋭く強い声は運動をさらに高めたい時、優しい声は不安や痛みがある時、リラックスさせたい時など状況によって変えていきます。また、『押して』や『引っ張って』は求心性収縮、そのまま止めては、等尺性収縮、『リラックスして』は弛緩を意味します。
声を発するのは被術者も必要に応じて行なっても効果的です。
10.視覚刺激
視覚情報によって、運動のフィードバックも効果的に利用します。運動する時には必ず運動方向に目を向けて視覚からのフィードバックにより運動を制御したり修正したりできます。また、運動を目で追うことは頚部の動きも誘発するため、上位中枢からの影響も受けてより大きな反応も期待できます。
筋出力低下を発見するためには
筋出力の低下を知るために一番簡単な方法として、トレーナーによる徒手抵抗での筋力テストです。各筋肉ごとに徒手による筋力テストを行い、左右差を比べたり、選手の感覚として筋肉が収縮しづらい感覚を教えてもらいます。
また、身体のどこかに痛みがある場合にも必ずといって良いほど、筋出力の低下が起きている筋肉があります。それを痛みが出る動作などを参考にしてどの筋肉の筋出力が低下しているのかを診ていきます。
選手自身の感覚としても、いつもより足や腕が重いことや身体のキレが鈍いなどこのような自覚症状からも筋出力の低下を予測できるため、選手との密接なコミュニケーションも必要になります。
まとめ
本記事では、筋出力を促通する10つの方法として以下を紹介してきました。
2.関節の牽引
3.関節の圧縮
4.抵抗
5.発散と強化
6.正常のタイミング
7.自動他動抵抗運動
8.皮膚刺激
9.口頭指示
10.視覚刺激
基本的に全ての促通法は脊髄の前角細胞の興奮を高めるために行い、運動単位の動員の数を増加させるのが目的になっています。そのために、人間本来持っている感覚受容器の特性を活かして様々な刺激を入れて筋の促通をしていきます。
筋出力の低下は、主に以下の原因が考えられます。
- 使いすぎによる疲労の蓄積
- 不適切なフォーム
- 他の患部をかばっての動作
- 外傷
- 内臓の状態
- ストレス過多
- フィールドなどの環境の問題
このような要因が筋出力の低下を招くため、トレーナーやセラピストとしては選手の状態をしっかりと把握する必要があります。
僕を含めた筋出力に着目して選手の体を管理しているトレーナーやセラピストはさらにその質を高め、選手たちがより高いパフォーマンスを発揮できるように頑張っていきましょう!