#143 空腹時の有酸素運動のメリットとリスクについて

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朝起きてから空腹の状態で運動をすることで、代謝が上がり脂肪燃焼が促進する可能性があることを言われることがあります。しかし、この空腹時の運動による脂肪燃焼効果に関して、実際には研究によってしっかりと実証された事実ではなく、未だ議論されていることでもあります。

個人的には、食べた後運動するよりも食べる前に運動した方が体にとって重くなく、楽に動ける感じます。しかし、食べないと動けないと感じている人の方が大多数を占めているとは思います。このように、空腹時に運動した方がいいのかというのも個人間によって異なることでもあります。

本記事では、このようなことを踏まえて、空腹時の有酸素運動のメリットとリスクについて紹介したいと思います。

目次

  • 空腹時の有酸素運動について
  • 空腹時の有酸素運動は安全か?
  • 空腹時の有酸素運動のメリット
  • 減量への影響
  • リスクと禁忌
  • まとめ

空腹時の有酸素運動について

空腹時の有酸素運動とは、文字通り、空腹で、胃のなかに何も入っていない状態の時に有酸素運動を行うことを言います。

通常であれば、寝てから朝起きた朝一番の状態で運動することで起こりますが、ファスティングをしている場合は、朝一番でなくても空腹状態が続いているためどの時間でも起こりえます。

空腹時の有酸素運動は、空腹時でない有酸素運動と比較して、脂肪の燃焼を増加させるクオカがあるとして一般的には言われています。しかし、実際にこの脂肪燃焼効果は、証明されているわけではなく可能性のレベルの話になります。

空腹時の有酸素運動は安全か?

病気がなく健康な身体である場合は、空腹時の有酸素運動をおこなっても問題ないとされています。ただし、いつも以上に長時間運動したり、高強度のトレーニングを行ったりする場合は、立ちくらみ、めまい、震え、さらには失神など、低血糖や脱水症の症状が起こる可能性があります。このような場合は、空腹時の有酸素運動が危険となることもあります。

特に、普段から糖質を多くとっている人にとっては、主なエネルギー源がブドウ糖のためブドウ糖不足で、上記のような症状が起きやすいと予測されます。逆にケトジェニックダイエットのような食生活の場合は、空腹時の苦痛が少なく、空腹時に運動しても上記のような症状が起きにくい可能性があります。

空腹時の有酸素運動のメリット

空腹時の有酸素運動の生体反応の考え方としては、空腹になることで体の主なエネルギー源であるブドウ糖が枯渇し、代わりに体内に貯蔵されている脂肪をエネルギーとして使用するというものです。

あるレビューでは、いくつかの研究で、運動の終了後、空腹時で行った運動の方がより高い代謝パフォーマンスにつながることと報告しています。ただし、同じレビューで、有酸素運動が長時間になればなるほど、トレーニング前に食事をする人の方がパフォーマンスが向上することが示されています。

根拠をもとに、より具体的な考察をするためには、今後多くの研究が必要でになりますが、空腹時の有酸素運動には他にも以下のメリットがあるとされています。

時間を短縮できる:空腹で運動を行うことで、運動前の食事の準備や消化する時間を考慮する必要がなくなります。
インターミッテントファスティングと組み合わせられる:インターミッテントファスティングを行なっている場合、その日の食事の前に運動することができます。
胃が重たい中運動しなくて済む:空腹時により運動をしやすいと思う人や胃が敏感な人は、空腹での運動が効果的な選択肢となる可能性があります。

減量への影響

減量を成功させるために最も重要なことは、よりも多くのカロリーを燃焼することです。空腹時での有酸素運動が実際に脂肪の減少を促進するかどうかについて以下に紹介する研究を見ていきましょう。

空腹時の運動と食事をした後の運動による脂肪量と体重の変化を比較した研究では、20人の若い女性を2つのグループに分け実験をしました。この研究のプログラムとして両方のグループは、週に3日4週間運動し、低カロリーの食事療法を採用しました。この研究の結果は、両グループで脂肪量と体重の減少を見られましたが、グループ間での差がなかったことを示しています。

しかし、他の研究では、空腹時の有酸素運動による脂肪燃焼効果の増加をサポートしているものもあります。

2016年にイギリスのジャーナルに発表された27の研究のレビューは、「空腹状態で行われる有酸素運動は、摂食状態で行われる運動よりも高い脂肪酸化を誘発する」と結論付けています。

この研究は、空腹時の有酸素運動が運動の間によりも多くの脂肪燃焼そしてカロリーを消費する可能性があるとされる一方で、24時間のスパンで考えた場合、1日の総カロリー消費量の違いはそこまで影響しないとも言われています。

というのも運動、食事、睡眠以外のすべての日常活動に費やされるエネルギーのことを言う非運動活動の熱発生(NEAT)は、人の活動レベルにもよりますが、1日に消費されるカロリーの約15%を占めることが示されています。そしてこのNEATが減量するための重要な比重を占めていると言われています。

そのため一般的に、体重を減らしたい場合は、断食しているかどうかに関係なく、毎日の動きを増やすことがとても大切です。毎日より多く歩いたり、階段を上る、子供と遊ぶなどのアクティビティが、よりも減量に大きな影響を与える可能性があります。

リスクと禁忌

空腹時の有酸素運動を行う時に気をつけるべきリスクと禁忌があります。

2つのリスク

先ほど述べたように、空腹時の有酸素運動にはいくつかのメリットがある可能性がありますが、同時にリスクも認識することが重要です。

リスク1:筋肉の構築を妨げる可能性がある

体内にエネルギーのための十分な炭水化物がない場合、体は糖新生と呼ばれるタンパク質をエネルギー源にするプロセスを行います。このことにより、筋肉を再構築するために必要とされるタンパク質が少ないことになり筋肉を構築することが難しいと考えられます。

このことを踏まえると、空腹時の運動として、高強度の運動よりも低強度の有酸素運動を行うことで、炭水化物を燃焼するのではなく、エネルギーとして遊離脂肪酸を使用させる方がいいことが考えられます。

リスク2:パフォーマンスを低下させる可能性がある

特に、HIIT、ブートキャンプ、ウェイトトレーニングなど、中程度または高強度のトレーニングを空腹時に追い込む場合は、エネルギー不足になる可能性があります。また、低血糖と脱水症状が出る可能性もありに注意が必要です。

禁忌

低血糖や血圧の影響を受ける病状がある場合、または妊娠している場合は、空腹時の有酸素運動を避ける必要があります。また、空腹で運動をすることに慣れていない人は、いきなりしない方が健全です。自分の体をよく理解し、徐々に空腹でも運動できるように体を慣らしていく必要があります。

まとめ

空腹時の運動
減量するためには何を食べるのかを考えるのが一番いい方法ですが、有酸素運動も減量の目標達成に役立ちます。

空腹での運動は、科学的根拠として信頼できるレベルではないですが、個人のライフスタイルによっては適している可能性があるため、運動前は食べなければいけないという常識に囚われずに試す価値があることではあります。慣れないうちは、立ちくらみ、めまい、震え、さらには失神など、低血糖や脱水症の症状のような症状が出る可能性はありますが、体は順応するため段階を踏んで行うことも大切です。運動にはウォーキング、ランニング、サイクリング、水泳などがありますが、運動時間を例えば10からスタートして徐々に長くしてみるといいかもしれません。また、空腹時に心拍数が高い激しい運動をする場合は、1時間以上は行わない方が安全です。

忘れてはいけないことは、運動前後にしっかりと水分補給はすることです。普通の水だけではなく、ミネラルやビタミンを補うためにも水に天日塩を入れたり、レモンを入れたりと工夫もできると思います。

運動後はしっかりと栄養補給するために、タンパク質、脂質、タンパク質のバランスがしっかりと取れた食事をすることも大切です。

参考文献

1)Schoenfeld BJ, Aragon AA, Wilborn CD, Krieger JW, Sonmez GT. Body composition changes associated with fasted versus non-fasted aerobic exercise. J Int Soc Sports Nutr. 2014;11(1):54. Published 2014 Nov 18. doi:10.1186/s12970-014-0054-7

2)Villablanca PA, Alegria JR, Mookadam F, Holmes DR Jr, Wright RS, Levine JA. Nonexercise activity thermogenesis in obesity management. Mayo Clin Proc. 2015 Apr;90(4):509-19. doi: 10.1016/j.mayocp.2015.02.001. PMID: 25841254.