#162 食事中に飲み物を飲むことは良いのか、悪いのか?

ALL CONDITIONING DIET/ NUTRITION

食事と一緒に飲み物を飲むことは胃酸を薄めてしまい消化にとって良くないと言われることがあります。しかし、この事について実際のどうなのかについて疑問に思うかもしれません。

本記事は、食事中に飲み物を飲むことで消化と体の健康にどのように影響するかについて研究レビューを元に紹介していきたいと思います。

» 参考:消化・吸収に食べ合わせが大事な理由

目次

  • 健康的な消化とは
  • 食事中に飲み物を飲むことが消化器系に悪影響を及ぼすのか
  • 食事中に飲み物を飲むことは消化を改善する可能性がある
  • 水を飲むことで食欲とカロリー摂取量を減らす可能性がある
  • リスクのある疾患
  • まとめ

健康的な消化とは

水が消化を妨げると考えられている理由を理解するには、はじめに通常の消化プロセスを理解することが大切になります

食べ物を噛み始めるとすぐに、口の中で食べ物と唾液が混ざり合って消化が始まります。咀嚼は唾液腺に信号を送り、口の中に唾液が出てくることを助けます。唾液には、食物を分解するのに役立つ酵素が含まれています。

その後、食べ物が胃に入ると酸性の胃液と混ざり、胃液が食べ物を分解して、粥状液と呼ばれる濃い液体に分解します。

そして、小腸では、粥状液が膵臓の消化酵素や肝臓の胆汁酸と混合され、さらに粥状液を分解し、血流に吸収されるように各栄養素まで分けられます。粥状液が小腸を通過するときに、ほとんどの栄養素が吸収されます。その後、結腸に到達すると、そこで栄養素が吸収されるのはごく一部になります。

食べ物から分解された栄養素は、血流に入ると体のさまざまな部位にまで届けられ栄養補給が行われます。小腸などで吸収されなかった残り物は便として排泄され、消化のプロセスがそこで終わります。

何を食べるかにもよりますが、この消化プロセスは全体で24時間から72時間かかることがあると言われています。

食事中に飲み物を飲むことが消化器系に悪影響を及ぼすのか

毎日十分な水分を飲むことには健康を考えた場合にとても重要なことになります。しかし、食事と一緒に飲み物を飲むのは良くないと考える人がいます。

これから紹介する3つのことは、食事と一緒に飲み物を飲むと消化に悪影響を及ぼす可能性があること示し、議論されることでもあります。

1.アルコール飲料は唾液に悪影響を及ぼす

アルコール飲料を食事と一緒に飲むと唾液が乾き、体が食べ物を消化しにくくなると言われています。

アルコール飲料を飲むことで、約10〜15%の唾液の分泌を減少させます。しかし、これは主にアルコール度数が高いお酒でのことを指し、ビールやワインのアルコール濃度が低いお酒に関して当てはまらないとされています。

以上のことは言われていますが、アルコール飲料を適度に摂取した場合は、栄養素の消化または吸収に悪影響を与えるという科学的根拠はないとされています。

2.水、胃酸、消化酵素の関係性

食事と一緒に水を飲むと胃酸と消化酵素が希釈され、体が食物を消化するのが難しくなると言われています。

しかし、液体だけの食事と個体の食事では、胃、膵臓、胆嚢の消化に対する生理的反応が違うため、実際に食事と一緒に水を飲むと胃酸と消化酵素が希釈されることは明確に示されていません。

3.液体と固形食品の消化速度の違い

液体を消化する速度は、固形食品を消化する速度よりも速いため、液体と固形食品を同時にとると、固形食品の消化スピードまで液体の消化スピードと同様になってしまうことが考えられています。このことで、固形の食事に対する胃酸と消化酵素との接触時間が短縮され、消化が悪くなると考えられています。

しかし、実際には、液体の消化プロセスが固形食品の消化時間に影響しないことが知られており、このことについて科学的な根拠はありません。

食事中に飲み物を飲むことは消化を改善する可能性がある

液体は食べ物の大きな塊を分解するのに役立ち、食道から胃に入るのを容易にする可能性があります。また、膨満感を味わえたり、便秘を防げる可能性があります。

そして、実際に酵素の適切な機能を促進するために胃は消化中に胃酸や消化酵素とともに水分を分泌することが言われています。そのため、水分は胃の中での消化に必要不可欠な物であるということが考えられます。

ですが、これが適度ではなく大量の水分を飲んで、胃の中に食べ物と混合させた場合には消化にどのような影響が起きるのかは示されていません。そのため、大量に水分を飲んだ場合の実際の影響については、わかっていない状態であります。

水を飲むことで食欲とカロリー摂取量を減らす可能性がある

食事中に水を飲むことで、食事時間が長くなることが考えられ、食事を食べてから脳が満腹と感じるまでの時間に余裕を与えます。これは食べ過ぎを防ぐことができ、体重を減らすのに役立つ可能性があります。

ある12週間の研究では、毎食前に500 ml の水を飲んだ参加者は、飲まなかった参加者よりも2 kg体重が減ったことを示しました。

他の研究では、飲料水飲むことで500 ml ごとに約24カロリーの代謝を促進する可能性があると報告しています。

興味深いことに、水が体温まで温められると、燃焼カロリー数が減少することが見られています。これは、体がより多くのエネルギーを使用して冷水を体温まで温めるという働きによって起こるある可能性があります。

この水を飲むことでの代謝が向上する影響は考えられますが、この影響はわずかなものであり、すべての人に当てはまるわけではないとされています。

そして、このことは主に水に適用され、カロリーのある飲み物には適用されないことにも注意が必要です。というのもあるレビューでは、甘い飲み物、ミルク、またはジュースを食事と一緒に飲んだ場合、総カロリー摂取量は8〜15%高かったという報告があるからです。

リスクのある疾患

今まで説明したことから考えられることは、ほとんどの人にとって、食事と一緒に水分を飲むことは消化に悪影響を与える可能性は低いということです。

ですが、胃食道逆流症がある場合は、食事と一緒に水分を補給すると悪影響が出る可能性があらと言われています。

これは、水分が胃の中に入る物質の内容量を増加させ、胃の中の圧力を上昇させる可能性があるためです。胃の中の圧力が増加する事により、胃食道逆流症を持つ人の胃酸の逆流につながる可能性があります。

まとめ

食事中に水を飲む
  • 消化中、食物は体内で分解され、その栄養素が血中に吸収されます。
  • 水、アルコールなどの水分を食事と一緒に適度に飲むことは、消化に害を及ぼす可能性はほとんどありません。
  • 消化プロセスにおいて適度な水は消化を助ける場合があります。
  • 食事と一緒に水を飲むと、食欲を調整し、食べ過ぎを防ぎ、体重減少を促進する可能性があります。しかし、水以外の甘い飲料や牛乳などの場合は逆効果です。
  • 胃食道逆流症を持っている場合は、食事中に水分摂取を制限するで、症状を減らせる可能性があります。

以上のようなことが研究レビューからは、食事と水分摂取に関して述べられています。

これには個人差があることでもあり、水分を的量飲むことで、消化を促進してくれる場合もあれば、水分を飲み過ぎることで消化を損なってしまう場合もあります。

個人的に考えることは、食事の内容によっても水分が含まれる量が少ない食べ物の食事であれば、水分をより多く取るべきであり、水分が多く含まれている食べ物であれば、そこまで水分を飲まなくてもいいということです。

» 参考:食べ物をよく噛むことでのメリット

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