#173【正しく体を使う】体幹の深部の筋肉を使えるようにする方法
前回の記事では、【正しく体を使う】股関節の深部の筋肉を使えるようにする方法について書かせていただきました。
#172【正しく体を使う】股関節の深部の筋肉を使えるようにする方法
スポーツ選手のトレーニングにおいて、従来のウエイトトレーニングだけではなく最近では、”体軸”や”骨で立つ”、”脱力をする”などの言葉が使われるようになり、正しく体を使っていくことの重要性が言われ始めてきています。これらの考え方はどちらかというと古武術であったり、ダンスのような体の内観が必要な身体操作を得意とする人たちから良く発信されてきたと思われます。
股関節の深部の筋肉は、内転筋群という腿の内側にある筋肉がしっかりと機能していることが、効率の良い動きを作るためには必要になってきます。また、股関節の深部の筋肉だけでなく体幹の深部の筋肉も同時に働くことができれば、さらに効率の良い動きができるようになります。
そこで本記事では、股関節の深部の筋肉と同様にとても重要な体幹の深部の筋肉を使えるようにする方法について紹介させていただきます。
目次
- 体幹部の深部の筋肉を使えるようにする
・体幹部の深部の筋肉とは
・体幹の回旋で深部の筋肉を刺激する
・体幹の回旋に側屈と伸展を組み合わせる - 体幹の深部の筋肉が使えないデメリット
・腹圧が上がらない
・上肢と体幹が連動しない
・下肢と体幹が連動しない - まとめ
1.体幹部の深部の筋肉を使えるようにする
体幹部の深部の筋肉を使えるようにするには、骨盤が安定して、胸郭が柔軟に動くことが必要になります。そして股関節の使い方が正しく使われることが骨盤の安定と胸郭の柔軟性に関わってくることでもあるので、前回の記事『【正しく体を使う】股関節の深部の筋肉を使えるようにする方法』も読んでみてください。
体幹部の深部の筋肉とは
体幹の深部の筋肉とは、ここでは主に腸骨筋、大腰筋のことを指し、二つの筋肉は合わせて腸腰筋と呼ばれています。腸腰筋は、仙骨や仙腸関節、腰部の安定性に関わっています。また、股関節の最大の屈曲筋でもあることから骨盤の前傾作用ももっていて、腰部の生理的な彎曲を作ります。
腸腰筋によって腰部が引っ張られて反り腰で腰痛になるということが言われることがありますが、これは間違いで、腸腰筋が反り腰に関わる程度はほんのわずかであり、主に脊柱起立筋という腰部の筋肉の過緊張によって引き起こされます。そして、脊柱起立筋のか緊張は腰部のインナーマッスルが働いてないことが大きな原因であることから、腸腰筋がしっかりと機能することは、脊柱起立筋の緊張を低下させて、反り腰による腰痛を予防する効果もあります。
腸腰筋について↓↓↓
#17 腸腰筋ってどこでどんな作用?【特別な促通法も解説】
腸腰筋はスポーツに携わるトレーナーやスポーツ選手であれば一度は聞いたことのある筋肉名の一つではないかと思います。体の中心部にあり、一番と言っていいほど大事な筋肉とも言えますが、実際に筋肉がどこにあるのか明確にわかっていないのが事実ではないでしょうか。
これから紹介する深部の筋肉を使えるようにする全ての方法に関して共通する部分なのですが、股関節がしっかりと使えていることが重要になります。理由としては、腸腰筋は骨盤と胸郭が分離して動くときに活性化されたり、機能し始めたりするからです。股関節がしっかりと使えているイコール骨盤が安定するということでもあるので、胸郭を動かしたときに股関節がストッパーとなって骨盤を胸郭から分離してくれる働きをしてくれます。
それでは実際に体幹部の深部の筋肉である腸腰筋を使えるようにするための方法について書いていきます。
体幹の回旋で深部の筋肉を刺激する
まずは、ランジ姿勢で、前に出している足の方の股関節に反対側の骨盤が回旋して近づくようにします。そうすると股関節と骨盤がロックされた状態になり、それ以上回旋しない位置までもっていきます。そこから今度は上半身を骨盤と同じ方向に回旋させていきます。骨盤は股関節によって制限されているため動かず、胸郭は骨盤より広範囲で回旋の動きができます。そして、このねじりの動きを繰り返し行っていきます。
この胸郭の回旋を繰り返すことで胸郭の回旋の柔軟性を上げていきます。そして、胸郭の柔軟性が上がれば上がるほど骨盤と胸郭の分離が促されることになり、体幹の深部の筋肉である腸腰筋が機能してきます。
補足ですが、回旋するときに数キロの重りを持って振り子のように上半身を回すと骨盤が安定していれば、胸郭の柔軟性をより効果的に上げることが可能になります。
体幹の回旋に側屈と伸展を組み合わせる
体幹の回旋で深部の筋肉を刺激する方法でさらに効果的に骨盤と胸郭の分離を促したい人は、回旋の動きだけでなく体幹部の側屈と伸展を同時に組み合わせていきます。例えば、上半身を左に回旋させた場合に、右肩が下がり左肩が上がるような側屈と胸を上げるように伸展をしていくと、さらに胸郭が動いて骨盤との分離が促されます。この方法を取る場合には、ランジ姿勢でもできますし、座位の姿勢でもできます。
座位の場合は、まず重心を上半身を回旋する方向の坐骨に置きます。そして骨盤をしっかりと立ててもらってランジ姿勢の時と同様に上半身を回旋したときに重心側の股関節で骨盤をロックします。この股関節でのロックができたら、あとは上半身をできる限り回旋させて、側屈と伸展を組み合わせます。柔軟性を上げるためには、その姿勢から回旋と側屈の姿勢を変えずに体幹の伸展と屈曲を繰り返していきます。そうすることで胸郭の動きが改善されて、柔軟性が上がり、骨盤と胸郭の分離が促されます。
2.体幹の深部の筋肉が使えないデメリット
腸腰筋がうまく使えない人は様々なデメリットが考えられます。
腹圧が上がらない
腸腰筋の機能低下は、筋膜のつながりがある横隔膜や腹横筋、多裂筋などの腹圧に関係している筋肉の機能低下に影響を及ぼします。そのため、腸腰筋が使えないと腹圧が上がらず、仙骨や腰椎などの背骨の安定性を低下させてしまいます。腰痛持ちの人や腰関係で問題が起きやすい人は、この腸腰筋の機能低下を疑った方がいいかもしれません。
脚全体の機能低下を起こす
腸腰筋は、股関節屈筋作用の最大の筋肉であり、足を持ち上げる動作にとってとても大切な筋肉になります。それだけでなく、腸腰筋の中を貫通する神経があり、この神経は脚を支配している神経であるので腸腰筋が機能せず固まってしまうと、この神経を圧迫してしまい脚に流れる神経の流れを悪くしてしまいます。神経の流れが悪くなれば、筋肉の収縮がうまくいかず足の疲れの原因であったり、血流の流れの低下にもつながっていきます。
腕の機能低下を起こす
腸腰筋の機能低下は、足の機能低下を起こすだけでなく、腕の機能低下も起こす可能性があります。その理由として、腸腰筋が硬くなるとお腹も硬くなり、その影響で胸郭や腕の動きも鈍くなってしまうからです。胸郭と腕の動きが悪くなると首などに位置する筋肉も硬くなり最終的に腕にいく神経の流れも悪くさせることがあります。
自分が施術をしていて、腕や首の症状を持った人の腸腰筋を弛めたり機能を高めるようなエクササイズをすると症状がなくなるケースをたくさん経験しています。
以上の3つのことが腸腰筋の機能低下により起こり得ることです。つまり、体幹の深部の筋肉である腸腰筋がうまく使えないことは、全身の機能低下につながる可能性があるということです。そのため、どのような人にとってもこの腸腰筋の機能を高めることは、大切なことになります。
3.まとめ
今回は、体幹の深部の筋肉を使えるようにする方法と使えないデメリットについて紹介させていただきました。
体幹の深部の筋肉、つまり腸腰筋は、骨盤と胸郭の分離を促すことによって機能を向上させることができます。その分離を促す方法として、骨盤を安定させた状態で、上半身の回旋・側屈・伸展の運動を行うことをします。
腸腰筋がうまく機能しない場合は、腹圧や腕、脚の筋肉の機能低下を引き起こす可能性もあり、全身に影響を及ぼします。つまり、腸腰筋の機能を向上させることは全ての人にとってメリットがあることになります。
体幹深部の筋肉のあるため、意識的に感じにくい筋肉でもあるので認識が難しいです。しかし、トレーニングを積んでいくうちに腸腰筋を使う感覚というのがわかってきますので、是非チャレンジしてみてください。