#132 ケーブルマシンを使ったファンクショナルトレーニングの効果

ALL EVIDENCE BASE TRAINING

近年では、ケーブルマシンを使用できるジムがほとんどあり、よりファンクショナルにトレーニングを行えるようになってきています。

しかし、実際にケーブルトレーニングが従来のウエイトマシンやフリーウェイと比較してどのようなトレーニング効果の違いがあるのかを理解して行っている人は、多くはないと思います。

このようなことを踏まえて、ケーブルマシンのトレーニング効果を検証した2つの研究を参考にケーブルトレーニングを使ったファンクショナルトレーニングの効果を紹介していきたいと思います。

目次

  • 高齢者を対象にしたケーブルマシンとウエイトマシンの比較
  • ケーブルマシンとベンチプレスの比較
  • ケーブルマシンを使ったファンクショナルトレーニングの効果
  • まとめ

高齢者を対象にしたケーブルマシンとウエイトマシンの比較

ケーブルマシンの多くは、ケーブルの高さをを調整できるため様々な角度から筋肉を鍛えることができ、抵抗運動のなかでおそらく最もファンクショナルにトレーニングできるマシンの一つです。ですが、実際にこのファンクショナルなトレーニングが従来のウエイトマシンと比較した場合にどのようなトレーニング効果の違いがあるのかを知ることが大切になります。

65歳以上の高齢者を対象にしたケーブルマシンとウエイトマシンの比較をした研究では、週2回のトレーニング頻度で、12週間のトレーニング効果の比較を行いました。ケーブルマシンの使用は立位の姿勢で行い、ウエイトマシンの使用は座位でより安定した姿勢で行われ、トレーニング内容は動きが類似したものを選択していました。評価法としては、上下肢の筋力や筋パワーの測定やフィジカルパフォーマンスバッテリーなどのいくつかの評価法を使いトレーニング効果の違いを測定しました。

研究の結果、ファンクショナルトレーニングが行えるケーブルトレーニングの方がトレーニング効果が良くなると予想されましたが、両方のトレーニングでほぼ同等のトレーニング効果があったことがわかりました。つまり、ケーブルマシンを使用が従来のウエイトマシンの使用よりも優れたトレーニング効果が生み出せなかったことを確認できました。

この研究では、12週間と短い期間でのトレーニング効果の検証であったため、ファンクショナルトレーニングで改善される可能性のあるコーディネーション能力の改善までできなかった可能性もこの研究では考慮しています。また、日常生活で改善したい動きと類似した動作のトレーニングをケーブルマシンで行うことで、より効果的にトレーニングを行える可能性があることも示唆されています。

ケーブルマシンとベンチプレスの比較

もう一つのケーブルマシンの研究では、ケーブルマシンとベンチプレスのトレーニング効果の違いを比較しました。ケーブルマシンでは、ベンチプレスと類似した動きを作るために肩関節の水平内転の動きを片方ずつ行いました。この研究の対象者は、普段から運動をしている大学生を14名サンプルとして行われました。

この研究の結果、この2つのトレーニング間で明確な違いを示すことができました。立位で行われたケーブルトレーニングでは、内腹斜筋と広背筋が大胸筋と三角筋前部繊維と同じくらいの筋活動レベルを示しました。一方、ベンチプレスによるトレーニングでは胴体の筋活動よりも大胸筋と三角筋前部繊維の筋活動がより多くみられました。この結果からわかることは、立位でのケーブルトレーニングがよりバランスを必要とし、胴体部の筋肉にも同時に刺激を入れることができたということです。

ケーブルマシンを使ったファンクショナルトレーニングの効果

以上の2つの研究では、研究対象年齢が違うため同様の結論を生むことは難しいと考えられます。

1つ目の研究からわかることは、65歳以上の高齢者はもともと活動が少なく基礎となる筋力もないため、バランス能力が若者よりも衰えていることが考えられます。そして、どのようなトレーニングを行っても基礎の筋力や体力が向上しやすく、12週間という短い期間ではケーブルマシンとウエイトマシンとの間でトレーニング効果の違いが見られなかった可能性があることが考えられます。

このことは2つ目の研究から明らかになった胴体部の筋活動レベルがケーブルトレーニングの方が高いことを考えると、半年などの長期間のトレーニングであれば、高齢者を対象にしたトレーニング比較でも違いを生み出せる可能性があったのではないかと予想することもできます。しかし、このことを明確にするためには実際に更なる研究が必要であることは間違い無いことです。

2つ目の研究では明らかな研究結果の違いが出ています。部分的に大胸筋と三角筋全部繊維を鍛えたい場合はベンチプレスのようなより体幹が安定された姿勢でのトレーニングを行い、胴体部を連動させて大胸筋と三角筋全部繊維を鍛えたい場合には、より不安定なケーブルマシンを使用することがいいことは一目瞭然です。

部分的に大胸筋と三角筋全部繊維を鍛えられるウエイトマシンでは、筋力の増加によりスポーツパフォーマンスを改善することができることが考えられます。一方、ケーブルトレーニングのように胴体部により刺激を入れることのできるトレーニングでは、実際のスポーツパフォーマンス向上のための動きの質の改善につなげることができることが考えられます。

まとめ

本記事では、ケーブルトレーニングのトレーニング効果について、2つの研究結果を参考にして、お伝えしてきました。

高齢者を対象にした従来のウエイトマシンとの比較研究では、トレーニング効果の違いを確認することはできませんでしたが、運動経験のある若者を対象にしたベンチプレスと比較した研究では、ケーブルマシンを使用したトレーニングの方が、より胴体部の筋活動を高めながら大胸筋と三角筋全部繊維を鍛えることができることが明らかになりました。

以上の研究結果を参考に今後のトレーニングに活かしてみてください。

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参考文献

1)Balachandran, A., Martins, M.M., De Faveri, F.G., Alan, 0., Cetinkaya, F. and signorile, 3.F. (2016). Functional strength training: Seated machine vs standing cable training to improve physical function in elderly. Exp Gerontol. Sep; 82, 131—138.

2)Santana, 3.C., Vera-Garcia, F.3. and McGill, S.M. (2007). A kinetic and electromyographic comparison of the standing cable press and bench press. J Strength Cond Res. Nov; 2J(4), 1271-1277.