#73 呼吸を意識的にすることで得られる効果

ALL PRACTICAL TRAINING

今回は、呼吸を意識的に行うことでどのような健康的な効果があるのかを説明していきます。
また、正しい呼吸の時にどの筋肉が使われるのかという解剖学的な見方や東洋学的視点、実際の呼吸トレーニング法についてもお伝えしていきます。

目次

  • 呼吸がもたらす効果
  • 解剖学的に呼吸を解説
  • 東洋学的視点
  • 呼吸トレーニング法
  • まとめ

呼吸がもたらす効果

呼吸がもたらす効果
呼吸の目的として、一般的には酸素を取り入れ二酸化炭素を出す事だと言われています。これは体の細胞が酸素を必要としていて、酸素を食べた後のカスとして二酸化炭素を排出しているからです。

呼吸のもう一つの目的として体のPHバランスを調整する事と言われています。体が運動などをして酸性に傾いたら呼吸を多くして酸性を中和していきます。過呼吸などの症状が現れた時はアルカリ性に傾くので、ビニール袋を口にあてて二酸化炭素を少しでも体の中に取り入れようとしてアルカリに傾いた体を中和していきます。

この2つの目的だけでも呼吸はとても重要だと感じて頂けたとは思います。

さらに呼吸にはさまざまな働きがあります。その働きは、自律神経の調節、体温の調節、血行の調節、内臓の調節などがあげられます。呼吸は自律神経が支配している生命活動の中で唯一自分でコントロールができる所です。そのため、自律神経、体温、血行、内臓を呼吸によって意識的に改善する事が場合によっては可能だと言われています。それだけ呼吸というのは健康にとても重要な要素となります。

自律神経の調節

 あなたがもしなにかに怒ったときに興奮し息も早くなってくることを経験した事はあるはずです。呼吸は意識的にコントロールできるので、このときに深く長い呼吸を行う事で落ち着きを取り戻したりする事ができます。

体温の調節

 よく犬が散歩に出たときに舌を出してハーハーするとこを良く見かけると思います。犬の場合は人間と違い汗が出る場所の汗腺が肉球にしかないので、口を開けて舌を出す事で唾液を蒸発させて、熱を外に逃がしていると言われています。また体の中に溜まった熱を水蒸気として呼吸で外に出す事もされています。人間の場合、体温調節する方法は汗をかいたりする事でできるのですが、呼吸でも行われています。

血行の調節

 これは自律神経と密接に関わっているのですが、呼吸が深くできている状態はリラックスしている状態であり、筋肉もリラックスで来ている状態です。筋肉がリラックスできている状態というのは血管が広がった状態ですので、血流があがります。そのため深呼吸をすることで体の血流をあげ、血行を良くする事ができます。

内臓の調節

 これはあまりイメージがつきにくいかもしれませんが、内臓も自律神経支配であるため副交感神経が有利なときに働きます。そのため深呼吸をすることで内臓の働きを高める事でできるのです。また、呼吸をする際には横隔膜が収縮、弛緩するのですが、このときに収縮と弛緩の幅が大きいと横隔膜が内臓を下の方に押し出します。これは内臓に対してマッサージを行っているようなものであり、緊張した内臓や疲れた内臓などをリラックスさせる効果があります。

解剖学的に呼吸を解説

それではここで正しい呼吸方法とはどういうものなのか説明していきます。
一般的にすでに良く知られている事ではありますが、まずは一つ目として腹式呼吸を行う事です。そして腹式呼吸の状態でなるべく深くゆっくりと長く行う事が重要になってきます。この腹式呼吸には、横隔膜やお腹の深部にある腹横筋、背中にある下後鋸筋を使う必要があります。

ここで、それぞれについて簡単に説明します。

横隔膜は肺の下に、肝臓・胃の上に位置しています。息を吸い込んだときには横隔膜は収縮して下に下がっていき、息を吐き出したときには弛緩して、上に上がっていきます。先ほど言ったようにこの上で運動が内臓に体するマッサージとしてとても重要な働きをします。近年では姿勢の崩れや胸式呼吸、浅い呼吸の影響で横隔膜が固くなっている人が多くいます。あなたもその一人かもしれないので気をつけてみてください。

腹横筋とはお腹の深部にある筋肉なのですが、胸腰筋膜という分厚い筋膜を介して、背骨の方まで繋がっています。解剖学の教科書ではコルセット筋とも呼ばれる筋です。実はこの筋は上部・中部・下部の3層に分かれていて、呼吸するときには上部は弛緩している状態、下部は緊張している状態が好ましいとされています。これは意識的に呼吸しないとできない人が多く、ただ腹式呼吸をしていても習得できない事もあります。上部の筋はカチコチに固まっていることがよく見られ、マッサージなどで緊張をほぐしていくことも可能です。下部の筋は凹ましたときに使われる筋です。しかし腸などの働きが悪い人や便秘気味の人などにはうまく収縮ができないことが多くみられます。

下後鋸筋とは背中の背骨から肋骨にかけて付着する筋になります。この筋は下部胸郭を息を吸ったときに横方向に広げる働きがあります。この働きにより、横隔膜に対しても収縮しやすい環境を与えることにもなるためとても重要な筋になります。この筋の機能を習得するのに特別なエクササイズが必要になります。

この3つのポイントをうまく意識して深呼吸できるようになると、より深く呼吸ができるようになり酸素を多く取り組み事が可能になります。呼吸器疾患をもっているかたなどにもとても役に立ち、呼吸が楽になることが期待で来ます。また呼吸をする際には姿勢もとても重要になり、座り方から立ち方、歩き方まで正しく行う必要があります。

以上の事から、呼吸はとても重要な要素になります。現代ではパソコンを使ってイスに座っての作業が多くなり、姿勢が崩れ深く呼吸ができなくなってしまっています。また、食の質の変化により内臓の働きが悪くなり、呼吸にも影響していると私は考えています。呼吸を改善していくためには、呼吸法の練習だけでなく、姿勢の改善・食の改善・人間関係の改善などまでも考慮していくとより効果的に改善することができると考えられます。

東洋学的視点

東洋学的視点
体のある部分に意識を向ける事を、気功の言葉で『意守』あるいは『凝神』などと言います。意守をするときに意識を向ける場所というのは一般的に『ツボ』と言われる場所であり、胃を強くしたい場合は『足三里』、頭痛があるときや頭痛持ちは『大敦』、不眠のときは『湧泉』もしくは『失眠』を意識しながら長い呼吸をします。

呼吸トレーニング法

呼吸トレーニング法
実際にどうしたら呼吸をトレーニングできるのかというのを伝えていきます。呼吸法に関してはさまざまなものがありますが、今回は本当に基礎となる呼吸法について紹介していきます。

腹式呼吸を意識する

トレーニングをする前にまずおさえておきたいのは、腹式呼吸です。これは鼻から吸って口から吐くのですが、吸うときにはお腹を膨らませて、吐くときにお腹を凹ませていきます。この時、お腹を力みすぎずに膨らませていき、吐くときには丹田(臍の下辺り)を意識して行うとなお良いです。また、全身はリラックスした状態で横になり、枕など頭の下に置くものも使わない方がいいでしょう。

呼吸トレーニングの目的・準備

トレーニングをするときに用意するのがストップウォッチです。これは一回の呼吸の時間をはかるために必要になります。この呼吸のトレーニング法の目的は一回の呼吸をできるだけ長くする事が目的でもあります。このことにより深くて、長い呼吸を手にする事ができるのです。また呼吸に使う筋肉や横隔膜なども鍛える事ができ、楽に呼吸ができるようになるでしょう。

実際のトレーニング方法

自分の一回の呼吸時間を知る

まずはしっかりと息を吐ききってもらいます。吐ききったところから、ストップウォッチを押して、息をできるだけゆっくり吸っていきます。この時正しい腹式呼吸の方法をしっかりと行ってください。息がこれ以上吸いきれないというところまでいったら、今度はできるだけゆっくりと息を吐いていきます。口から吐くときに口をすぼめて吐くとゆっくりはきやすいです。

吐ききってストップウォッチをストップさせます。はじめは20秒であったり30秒であったりするでしょう。このタイムを意識して、できるだけ長く一回の呼吸ができるように練習していきます。

毎朝10回の呼吸

朝起きてから水を飲み、その後にこのトレーニングをやってみてください。10回、ゆっくりと一回の呼吸をできるだけ長く続けて、行っていきます。
最終目標は一回の呼吸に1分かけるくらい行えるようになるとあなたも呼吸の達人になれます。

また、この呼吸のトレーニングをすることで、集中力が高まり、ストレス軽減、内臓の機能の改善にも効果がありえます。

以上で呼吸を意識的にすることで得られる効果について終わりにしたいと思います。

肋骨の動きは呼吸とも関連があります。以前書いた肋骨の動きと筋機能について興味があれば読んでみてください。