#168 体軸の感覚を作るための方法

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体軸とは、とても抽象的な言葉で、実際に体軸とはなんなのかを理解している人は少ないのではないかと思います。

実際に僕もこの体軸を自分の体を持って体感するまでは、『体軸は体の軸であることはわかるけど、体軸ができてるのか、できてないのか正直わからない』というのが本音のところでした。

しかし、今はさまざまな素晴らしいトレーナーの先輩方から色々学び、自分の体を実験台としてトレーニングをしていく中で、体の深部に近い筋肉を使えるようになってくると自分の体の中に軸のあるような感覚が出てきました。

そして、それと同時に体軸トレーニングと言っているトレーナーが、本物なのかそれとも偽物なのかということもその人自身の体やトレーニングを見ていると判断がつくようにもなり、体軸について少しは理解できてきたなと思っています。

本記事では、この抽象的な【体軸】についてどのように、体軸の感覚を作っていけばいいのかについて、書いていきたいと思います。

目次

  • 体軸とは何か
  • 体軸を作るための方法
  • 間違った体軸トレーニング
  • まとめ

体軸とは何か

体軸とは、文字通り体の軸のことを言いますが、とても抽象的な言葉であり、実際に構造的にどのような状態なのかを説明している人は多くいません。しかし体軸について、自分の体で体感でき、解剖学的な知識や運動学的な知識がある人であれば、構造的にも体軸を説明することが可能だと考えています。

僕自身もその1人であると自分自身では考えていますが、もしかしたら間違っているかもしれません。そのためここで書くことについては僕自身の個人的な経験からくる知識であり、多くの素晴らしいトレーナーの先輩方からいただいた知識をもとに書いています。

では実際に体軸とは何かということについて、抽象的な話ではなく、構造的な話で説明していきます。

体軸は、必ず左右の股関節の間に作ることができます。立位姿勢であれば、この股関節の間に体軸の感覚を感じることができます。また、重心を移動させることで、体軸の位置を股関節の間のなかでずらすことができます。(重心位置は、胸骨の中心におきます)

この体軸の感覚とはなんなのかと疑問に思うかもしれませんが、簡単に説明すると“内転筋群と大腰筋”の意識になります。つまり、この二つの筋肉を同時に意識的に軽く収縮できることということになります。力こぶの筋肉である上腕二頭筋を例とすれば、この筋肉を肘が曲がらないくらいの強さで収縮させます。この時に自分の中の意識が上腕二頭筋にいくと思います。この感覚が内転筋群と大腰筋に持たせることができれば、おおよその体軸の感覚を掴めています。

そして、立位であれば、この二つの筋肉を意識できた状態で左股関節に100%重心を乗せれば左に体軸ができ、これが右であれば右に体軸ができます。また、左股関節に75%、右の股関節に25%の体重を乗せれば、ちょうど中心と左股関節の真ん中の地点に体軸を作ることができます。

体軸を構造的に理解するためにより深く知っておくべきこととしては、アナトミートレインで出てくるディープフロントラインと言う筋膜です。ディープフロントラインとは体の中心に一番近い筋肉のつながりを表したものであり、体軸とディープフロントラインの関係性については他の所でも多く語られていることではあります。しかし、実際にこのディープフロントラインを構成する筋肉を意識させる方法については深く語られている事はあまりありません。仮にあったとしても、実際にそれらの筋肉がしっかりと意識されるためのトレーニングない場合が多く存在します。

ディープフロントラインを構成する具体的な筋肉は以下の通りです。

舌骨上筋
舌骨下筋
頭長筋
頸長筋
斜角筋
胸内筋膜 
横隔膜 
大腰筋
小腰筋
腸骨筋
恥骨筋
腰方形筋
大内転筋 
長内転筋
短内転筋
膝窩筋
後脛骨筋 
長趾屈筋

また書籍アナトミートレインで紹介されているディープフロントラインの特徴については以下のことが言われています。

1)すべてのラインの中で高密度な筋膜でType I が多いの筋線維である。
 
2)身体の中心軸を構成するための主要の筋膜である。
 
3)身体内部の固定や姿勢維持が主な役割となる。
 
4)横隔膜ー腰方形筋ー腸腰筋の連動によって呼吸のリズムと動作をつなげる。
 
5)自律神経である交感神経ー副交感神経のバランスとのつながりがある。

体軸を作るための方法

体軸の感覚とはの意識によるものであると伝えましたが、これは基本的な話になります。そのためより深く体軸について感覚を養うためには、他の知識も必要ではありますが、今回のこのブログでは書き切れないためまた別の機会で書かせていただきたいと思います。

そのため、今回の体軸を作るための方法を紹介するにあたって、内転筋群と大腰筋に着目してどのようにこの2つの筋肉を意識できるようになるのかについて紹介していきたいと思います。

体軸の感覚を作るための順序としては、まず内転筋群の意識を高められるようにしていきます。このためには、股関節の使い方を正確に行えるようにする必要があります。

正確な股関節の使い方を習得するためには、スクワットとランジエクササイズを行うことをお勧めしています。この二つのエクササイズの時に、股関節の周りの筋肉をまんべんなく使えることが正確な股関節の使い方になります。

この二つのエクササイズを行っていただくと分かるのですが、多くの人は内転筋の意識を持つことができません。つまり、股関節周りの筋肉をまんべんなく使えていないということになります。

スクワットとランジのエクササイズの時に内転筋もしっかりと使えるようにするためには、【骨盤をしっかりと立てること】【股関節の内旋の意識を持つこと】がとても大切になります。

以前に書いた記事を参考にして行ってみてください。

次に大腰筋の意識を高める方法についてです。大腰筋の意識を高めるためには先程の股関節の正しい使い方をしっかりと習得していることと胸郭の柔軟性があることが重要になります。というのも大腰筋は股関節の付け根から胸椎の1番下と腰椎に付着部を持っているため、股関節と胸郭が大腰筋を意識することに関係しているからです。どの筋肉にも当てはまることですが筋肉には起始と停止があり、筋肉が収縮するためには、この2つ付着部の片方が固定されもう片方が動く必要があります。しかし、どちらの付着部も固定されていない状態であれば筋肉が収縮することが難しくなってしまいます。このことを踏まえると大腰筋を意識できるようになるには骨盤か腰椎•胸椎のどっちかが固定されている必要があります。足を上げるために大腰筋を使いたい場合は胸椎•腰椎を固定して股関節を動かしますが、立位の時に大腰筋を使いたい場合は骨盤を安定させて胸椎•腰椎を動かす必要があります。この立位の場合には胸郭の柔軟性が高いと、胸椎•腰椎の可動域も向上して、大腰筋の起始と停止を近づけやすくなり、より大腰筋の意識を高めることができるようになります。

骨盤が安定するためには先ほどお伝えした股関節の正しい使い方ができていないといけません。この股関節の正しい使い方と言うのは、別の言い方をすると股関節がしっかりとはまったポジションをとっている状態のことを指します。つまり、股関節がしっかりとはまったポジションをとっていることで股関節周りの筋肉が働き、結果として骨盤が安定してくると言うことになります。

間違った体軸トレーニング

間違った体軸トレーニングとして、体幹トレーニングなどが挙げられます。一般的な体幹トレーニングで言われている体軸とは、体の中心を意識してプランクを行ったり腹筋を行ったりすることではないでしょうか。すでに僕が考える体軸のトレーニングについて理解していただければ、一般的に行っている体軸を意識した体幹トレーニングが体軸を作ることのできるトレーニングであるかどうかは一目瞭然だと思います。

まとめ

今回は体軸の感覚を作る方法について解説してきました。体軸は抽象的な感覚ではありますが、しっかりと体軸に必要な筋肉を意識できることで、この体軸の感覚は明確になってきます。この体軸の感覚が分かるまでは、自分が行なっているトレーニングの方法が正しいかわからないので、この体軸の感覚をしっかりと持っているトレーナーなどに指導を受けることがとても大切です。

そもそもですが、体軸の感覚を持てる事は、自分の体を効率的に動かすことにつながり、スポーツをしている場合はパフォーマンスの向上に役立てることができます。

是非が今回の記事を参考にしてより質の良い動きができるようにトレーニングしてみてください。