#105 足関節の基本的な知識と評価法
足関節は身体の土台ともなり、うまく動かないと膝関節、股関節、骨盤、上半身まで悪影響をひき起こしてしまうため、スポーツを行う人にとって非常に重要な関節になります。
本記事では、その足関節の基本的な知識や評価法をお伝えすることで、足関節の正常な動きとはどのようなものなのかということを理解してもらえればと思います。
目次
- 足関節の解剖学と一般的な怪我・予後因子について
- 足関節のレッドフラッグ
- 足関節の基礎評価
- まとめ
足関節の解剖学と一般的な怪我・予後因子について

足関節の解剖学
まず、簡単に足関節の解剖学についてお伝えしていきます。足関節は、距骨関節と距骨下関節の2つの関節で構成されています。
以下の図を見てみてください。
距骨関節は蝶番関節と呼ばれる関節面を持っており、矢状面で底屈と背屈の2つの動きをします。
距骨下関節は楕円関節と呼ばれる関節面を持っており、その回転軸は斜めになっています。この関節で可能な動きは、内返し:内反 (底屈、内転、回外の組み合わせ) と外返し:外反 (背屈、外転、回内の組み合わせ) です。
一般的な足関節の怪我
一般診療で見られる足関節の怪我の 1 年間の有病率は、それぞれ 9.2% と 9.4% くらいだとされています。1)
これらの足関節の怪我は、外傷性と非外傷性の怪我に分類できます。
そしてそれぞれの怪我の種類については以下のとおりです。
外傷性
・足首の骨折
・アキレス腱断裂
非外傷性
・外反母趾/ 拘縮
・足首の変形性関節症
予後因子
これらの足関節の怪我についての治癒過程での経過はそれぞれの状態によって異なってきます。そして予後因子についても特に特定の予後因子というものはありません。しかし、一般的に言われていると予後因子については以下の通りになります。
予後因子 2)
・広範囲の痛み
・高機能障害
・可動域の制限
・既往歴
足関節のレッドフラッグ
レッドフラッグとは、主に診断するときに使われる用語で、重症な状態で緊急に治療が必要な場合のことを言います。そのため、レッドフラッグの兆候がある場合はドクターにすぐさま受診し画像診断や必要に応じては手術などの処置を必要とします。
足関節においては以下の通りの病状がレッドフラッグに分類されます。
・骨軟骨病変、骨棘
・離断性骨軟骨炎
・足根洞症候群
・筋または腱の断裂
以上の病状のようにリハビリだけでは解決できないものがレッドフラッグとされます。主に骨の変形、軟骨炎、筋や腱の断裂のおそれがあった場合は、レッドフラッグと判断し、病院にすぐ診断する必要があります。
足関節の基礎評価
足関節の基礎的な評価法には、自動的に動かしてもらうアクティブROMと他動的に動かすパッシブROMとがあります。(ROMとは Range Of Motion と言って可動域のことを言います。)
これらの2つの評価法により、足関節が正常に動いているかどうかを判断していきます。
正常な可動域は以下の通りになります。3)
動き | 範囲(° ) |
背屈 | 20 |
底屈 | 50 |
内返し | 20 |
外返し | 30 |
内転 | 20 |
外転 | 10 |
可動域の基本的な評価法の手順としては、はじめにアクティブROMを行いその後にパッシブROMを行います。その中で正常な可動域範囲と比べて、制限がある方向を特定していきます。そして、制限がある方向のエンドフィール(可動域制限の最終域での抵抗)によって、骨による制限なのか、痛みによる制限なのかを判断して、どの組織が制限を起こしているのか評価していきます。
ROMの評価では、正常な関節可動域の範囲だけでなく、左右で比べることも大切になります。トレーナーとして、選手の足首の状態をみる場合は、触診による情報が重要で腫れ、血腫、熱感、痛みまたは圧痛などによって状態と把握します。また、整形外科的テストによる検査も必要になってきます。
足関節の整形外科的テスト
【足関節】整形外科的テストのまとめ
今回は、オランダの理学療法士がよく使う足関節の整形外科的テストを紹介していきます。
他にも足関節の怪我で治りにくいシンデスモーシスという怪我もあります。
足首の捻挫の怪我で治りにくいうちの一つであるシンデスモーシス。
損傷のグレードによっての治癒期間やどのようなリハビリが必要であるかを解説しています。
足首の捻挫だと思って甘く見るとなかぬか治りにくいケースがあるのでシンデスモーシスであるか診断が重要です。https://t.co/NcFlLDZW1w— 桑原秀和(Hide. Kuwabara)🇳🇱🇧🇪 (@HiddeKuwabara) March 28, 2021
まとめ
- 足関節は、距骨関節と距骨下関節の2つの関節で構成されている。
- 距骨関節は底屈と背屈の2つの動きをし、距骨下関節は内返しと外返しの動きをします。
- 足関節の怪我は一般的に外傷性の靭帯結合病変を伴うまたは伴わない足首捻挫足首の骨折、アキレス腱断裂と、非外傷性の腱障害/ 足底筋膜炎、外反母趾/ 拘縮、足首の変形性関節症がある。
- 足関節のレッドフラッグに分類されるのは骨折、骨軟骨病変、骨棘、離断性骨軟骨炎、足根洞症候群、筋または腱の断裂などである。
- 足関節の基本的な評価法としてアクティブROMとパッシブROMがあり、正常可動域と左右差をみて評価する。
今回は、基礎的な足関節の評価法を紹介してきました。主にトレーナ向けではありますが、スポーツ選手として自分の状態を把握するための知識として役に立つとは思います。参考にして自分の足関節のケアに役立ててみてください。
参考文献
1)Picavet HS, Schouten JS. Musculoskeletal pain in the Netherlands: prevalences, consequences and risk groups, the DMC(3)-study. Pain. 2003 Mar;102(1-2):167-78. doi: 10.1016/s0304-3959(02)00372-x. PMID: 12620608. 2)Artus M, Campbell P, Mallen CD, Dunn KM, van der Windt DA. Generic prognostic factors for musculoskeletal pain in primary care: a systematic review. BMJ Open. 2017 Jan 17;7(1):e012901. doi: 10.1136/bmjopen-2016-012901. PMID: 28096253; PMCID: PMC5253570. 3)「関節可動域表示ならびに測定法」日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会、日本整形外科学会雑誌69, 240-250, 1995, リハビリテーション医学32, 207ー217, 1995